マイナスなイメージはなし!? 英語の「妥協」を意味する「compromise」とは?

タカコ

執筆者

WEBライター。2013年にアメリカに渡る。現在はアメリカ人の夫と子ども2人でテキサスに在住。

みなさんは、「妥協」という言葉にどんなイメージを持っていますか?

プラスのイメージですか? それともマイナスのイメージですか?

今回は、日本語の「妥協」のイメージを、英語で「妥協」を意味する「compromise」の使い方と比べながら、言葉のイメージの違いについて書こうと思います。

そもそも「妥協」ってどんな意味?

私の持つ国語辞典で「妥協」を調べてみると次のとおりです。

「妥協」の意味

  1. (対立する意見や異なる主張を)互いに譲り合ってまとめること
  2. 適当な程度でよしとすること

コミュニケーションをしていくうえでは、なくてはならない「ツール(手段)」と言えるでしょう。

「妥協」という言葉を使われるとどんな気持ちになる?

さて、この「妥協」という言葉ですが、私は少しマイナスなイメージを持っています

前項で書いた国語辞典の解釈は、その通りだと思います。特にマイナスの言葉は使われていません。

でも、どうしても私にはマイナスのイメージがあります。なんだか、「何かを失う」イメージの方が強くありませんか?

結婚指輪を「妥協された」話

冒頭でも書きましたが、英語で「妥協」の意味を持つ言葉は「compromise」といいます。

私が初めて「compromise」という言葉に出合ったのは、夫(アメリカ人)と結婚指輪について話していたときでした。

夫は「材質はゴールドがいい」と言い、私は「色はシルバーがいい」と言いました。

夫は、材質はゴールド、見かけも金色のゴールドをイメージしていました。

私は、高価なのは承知の上で、材質はプラチナがいいなと思っていました。色はシルバーがよかったので。

私は貴金属にほぼ無知なので、シルバーよりも上の銀色の材質といえば、プラチナしか知らなかったのです。

すると、夫が「compromise」という言葉を使って、「じゃあ、妥協して材質はホワイトゴールドにしよう」と言ったのです。

私は、「妥協」という言葉を使われたことに少し悲しくなりました

英語の「compromise」にはマイナスのイメージはない?

ホワイトゴールドが嫌だったわけではありません。ゴールドということで、十分すぎるほどの材質です。

潜在的に、一生に一度の結婚指輪が、プラチナになることを勝手に期待していたのかもしれませんが、どうしても「compromise(妥協)」という言葉に引っかかってしまいました

国語辞典の解釈通り、ホワイトゴールドにすることで「互いに譲り合っている」し、主張が違うときには譲り合わないと、結婚生活は成り立たないのはわかっています。

でも、「妥協」って……(泣)。

沈んでしまった夫に「『compromise』にマイナスのイメージはないんだよ」と言われ、しぶしぶ納得したのです。

でも、義母に「(指輪の希望が違ったから)妥協してホワイトゴールドにしたんだ!!」とうれしそうに話す夫に、違和感を持っていました。

心の中で「うれしそうに『妥協』はないでしょ!!」と思いながら。

それ以来、「compromise」という言葉は、「日本語の『妥協』とはちょっと違う語感だな」と受け止めていました。

二度目の「compromise」との出合い

次に「compromise」に出合ったのは、つい最近でした。

夫の友人が出張で、私たちの住む町から車で10時間くらいのところにやってくるというのです。

「車で10時間」というと、日本では「すごく遠い」と思うかもしれませんが、広いアメリカでは、そう遠くない感覚です。

特に、その友人は現在日本にいて、ここ数年会っていないこともあり、夫とその友人にとっては「近い」ともいえる距離です。

そこで、この週末、ふたりは中間地点くらいの町で会うことになっているのです。

その話を夫が義父にしていたとき、義父が「Oh, you compromised!」と。

それを聞いたときも「ん?」と違和感がありました。「妥協して、中間地点で会うことにしたんだ」と日本語で言いますか?

日本語だと、「妥協して」と言わず、「間を取って」と言ったり、もしくは何も言わず、ただ「中間地点で会うことにしたんだ」と言うような気がします。

もちろん、文の中に「互いに譲り合って」という、「妥協して」の意味合いは含みますが、わざわざ言葉では言わないような気がするのですが……。

「妥協して」という言葉を使うと、マイナスのイメージが発生してしまうからかなと、私は勝手に解釈しています。

そこで、結婚指輪のことも、それが原因で「なんだかなぁ……」と悲しくなってしまったのだと気づきました。

普通に「僕は材質はゴールドにしたいし、、タカコは銀色がいいなら、ホワイトゴールドはどう?」と言ってもらえれば、そんなに違和感を感じなかったのかも、と。

英語の「compromise」ってどんな言葉?

OXFORD社の英語学習者向けの英英辞典「wordpower」には、

an agreement that is reached when each person gets part, but not all, of what he/she wanted

と書かれています。

望んだものすべてではないが、お互いがその一部を得る」とも書いています。

夫は、「agreement(合意・賛成)」と「disagreement(意見などが一致しないこと)」の間に「compromise」があると言います。

お互い合意しなければ、話し合って譲り合わないといけないし、それがうまくいかないとお互いの希望は折り合わない。

そうなると、何もしないか、どちらかが嫌(不利)な状況を受け入れる(accept)ことになる、と。

どの言語でも、コミュニケーションにおいて、譲り合うこと(妥協すること)は必要です(たったひとりで生きていくなら、話は別ですが……)。

私は、「妥協」というと……

to lose something(何かを失うこと)

……というイメージを持っていたのですが、夫が持つ「compromise」はまったく逆でした。

to get something(何かを得ること)

……なのだそうです。

両方とも「譲り合って」という行動を経ての結果ですが、完全に真逆ですね。

夫の考え方では、焦点をおいているのは、「得る」ということですね。

両者とも、完全ではなくても何かを得るということで、「win-win(自分も相手も勝つ)」。気持ちは「pretty happy(まあまあいい感じ)」なのだそうですよ。

私は、「お互い譲って、ほしいものの一部しか手に入らない」ということから、「失う」ことに焦点をおいて、「lose-lose」に近いと思っていました。

気持ちは「happy」なはずありませんね。

日本語での「妥協」の使い方

では、日本語では「妥協」という言葉、どうしてマイナスのイメージがあるのか考えてみました。

もう一度、日本語の「妥協」の意味を辞書から持ってきますね。

「妥協」の意味

  1. (対立する意見や異なる主張を)互いに譲り合ってまとめること
  2. 適当な程度でよしとすること

たとえば、こんな事例はどうでしょう?

ある人が1万円で売りたい壺を持っています。ひとりだけ5,000円なら買ってもいいという人がいます。ふたりは話し合って、7,500円で売買することにしました。

お互い希望額ではないものの、「妥協」して、交渉は成立です。これは、「互いに譲り合う」という、前述した国語辞典の解釈の「用法1」にあたります。

夫に聞くと、これは英語だと「compromise」を使って表現できるそうです。

日本語の「妥協」は相手がいなくても使える

次に、これはどうでしょう?

結婚相手の条件に、高学歴、高収入、見た目良し、性格良し、長男以外、ギャンブルをしない……などを挙げる女性がいました。でも、なかなかその条件に合う男性が現れないので、条件の基準を下げました。

これも日本語では「妥協」と言えると思います。

前述した国語辞典の解釈でいうと、「用法2: 適当な程度でよしとすること」という用法にあたります。

そこで気づいたのですが、この場合、自分ひとりでも「妥協できる」ということです。

つまり日本語では、「自分の中で譲ること」を「妥協」というんですね。日本語の「妥協」は相手がいてもいなくても使えます

国語辞典の用法は、先に出ている方が一般的だと思うのですが、「用法2」が「用法1」の根底にあるということです。

「用法1: 互いに譲り合ってまとめること」のように、相手がいれば、「お互いが自分の中で譲る」ことで、「互いに譲り合う」という解釈になるのではないでしょうか?

自分の中で譲ること = 何かをあきらめる

……というイメージですね。

結婚相手の条件を下げる事例をイメージすればわかりやすいと思います。

だからこそ、相手がいる・いないにかかわらず、どうしても「何かを失う」というイメージがついて回るのでしょう。

なので、2人でお互い譲り合って、円満に交渉が成立しても、「妥協」という言葉を使ってしまうと、マイナスに聞こえるんですね。

ちなみに、英語だと、自分の中で条件を下げるような事例は、「give up」などで表現できそうです。

「compromise」は「相手」が必要

一方、英語の「compromise」は、譲り合う「相手」が必要です。

逆に言うと、相手がいないと「compromise」という言葉は使えないんですね。

これは、「compromise」の語源からもわかります。

頭の「com」は、ラテン語の「cum」が語源で、「一緒に」とか「ともに」という意味を含んでいるんです。

ちなみに、「communication(コミュニケーション)」も、同じ語源のラテン語が英語に入ってきた言葉です。

また、「promise」は、「約束」や「決め事」のような意味ですね。

これらのことから、「compromise」は、「相手と一緒に決め事をする」ということで、「お互い譲り合う」という意味になるんです。

2016.11.20追記

英語でも、日本語のように「自分の基準を下げる」という使い方もするようです。

OXFORD社のAdvanced Learner's Dictionaryの動詞での用法「2」に「to do sth that is against your principles or does not reach standards that you have set」とありました。

夫にも聞いたところ、確かにそのように使うそうですが、基準を下げても、「何かは手に入る」ということで、イメージとしてはやはりプラスのようです。

同じように使えても、基準を下げることのマイナスイメージが響く日本語とは、少し語感が違いますね。

まとめ

私のように、「妥協」という言葉にマイナスなイメージを持っていた方も多いのではないでしょうか?

それは、日本語では、相手がいてもいなくても使えるという、用法の違いがあったからだったんですね。

私はわりと結婚が遅かったので、「結婚生活なんて、『妥協』の連続よ~」という声も周りからよく聞いていたし、私自身も確かにそうだと思います。

でも、この「妥協」という言葉も、英語の「compromise」の考え方に変えると、もっとポジティブになれそうです。

お互い譲り合って、お互いハッピー!!

……そうありたいものです(笑)。

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タカコ
アメリカ人の夫との結婚を機に渡米。現在は二児の母として英語に囲まれた環境の中で生活。日本語教育に携わっていたため言語への視点が鋭く、元・英会話教師の夫とのやりとりから生まれる記事が秀逸。
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