『はらぺこあおむし』の英語版と日本語版を読み比べたところ…

the-very-hungry-caterpiller
タカコ

こんにちは、アメリカ在住ライターのタカコです。

毎晩1歳2か月の娘を寝かせるときに、できるだけ本を読んであげるようにしています。最近、実家から送ってもらった『はらぺこあおむし』がけっこうお気に入りです。

子どもに自分の知っている絵本の英語版を与えたい

最近、初めて地元(アメリカ)の図書館に行ってみました。

自分の本よりも、まずは娘に読む本を借りることにしました。どんな本を借りようか、わくわくしていたのですが、作者の名前の順に並べられていて、どの本が1歳くらいの子どもでも楽しめる本なのかわかりませんでした。

そこで、自分が持っている本の英語版があれば読んでみたいと思いました。

英語だとどんな言葉で表現されているのか、とても興味がわいてきたのです。真っ先に思いついたのが『はらぺこあおむし』です。

この本はアメリカ人のエリック・カール氏が書いたものなので、英語版がオリジナルで、日本語版が翻訳されたものです。なので、正確には、「日本語だとどんな言葉で表現されるのか」ということになりますね。

エリック・カールって?

作者のエリック・カール氏ですが、日本でも、子ども向けの本をよくご存知の方なら、知らない人はいないと思うくらい有名な人だと思います。

『はらぺこあおむし』のほかにも、何冊も有名な本があります。

今日、図書館に行ったときに、そこで働いている人と少し話をしたところ、「子ども向けの本といえば、アメリカでもエリック・カールか、ドクター・スース(Dr. Suess)か、というくらい人気よ」とのことでした。

言葉が優しい日本語版

『はらぺこあおむし』の原題は、『THE VERY HUNGRY CATERPILLAR』といいます。忠実に訳されていると思いますが、「はらぺこ」という言葉を使うあたりが、なんだかちょっとほっこりします。

「おなかをすかせた」とかじゃないんですね。

生まれたばかりのあおむしが、おなかをすかせて食べ物を探して回り、いろんなものを食べ、最後には、さなぎを経て蝶になるというストーリーです。

カラフルな絵もかわいいし、食べ物をどんどん食べていく様子がおもしろいです。

結論から書いてしまいますが、英語版を読んでみて、「日本語版は、なんと優しい言葉で訳されているんだろう」と思いました。

実は英語版にちょっとがっかりしてしまったのです。逆に言うと、日本語への翻訳がすばらしいということになるのですが。

私の英語の読解力が薄ぺんぺらなのかな? と思ったりしますが、使っている言葉は、日本語版の方が優しく、言葉の表現に幅がある気がするのです。

お月様がしゃべらない!

冒頭からびっくりしました。

(英語版)In the light of the moon a little egg lay on a leaf.

(日本語版)「おや、はっぱの うえに ちっちゃな たまご。」おつきさまが、そらからみて いいました。

どうですか?

実は、私はこの書き出しのお月様の言葉で、この本に引き込まれた気がしていました

英語版をそのまま日本語にすると、「月明かりの中、はっぱに小さなたまごがあります」といった感じでしょうか? 私のようなシロートが、言葉通りに訳すとこういうことになるんですね(笑)。

英語版では、お月様はしゃべりません。絵本のこのページは、葉っぱの上に卵がある様子と、お月様が描かれているのですが、お月様には顔があり、卵を見ているような感じなのです。

それを利用してか、日本語版ではお月様がしゃべります。なんだか、あおむしを見守っているような感じさえしますね。

たくさん使われているやわらかい言葉と表現

月を「おつきさま」、あとから出てくる太陽を「おひさま」。こんな言葉を使うと、ファンタジーのにおいがプンプンします

さらに、ただ「小さな」という言葉ではなく、「ちっちゃな」という言葉を使う小技も効いています。

こういう言葉がこの本ではたくさん使われています。ほかにも、「tiny=とても小さい」を「ちっぽけな」と表現したり、あおむしの食べた物を「○○をひとつ(ふたつ / みっつ)たべました」と表現したり。

「ひとつ(ふたつ / みっつ)」は、1個(2個 / 3個)よりもやわらかい響きです。ちなみに英語版では、「He ate through one (two / three) ○○」

成長して太ったあおむしを「ふとっちょ」と表現しているのも優しい響きです。英語版で「太った」は、人に対して使うことが好まれない「fat」を使っています

「ぺっこぺこ」という表現が好き

その中でも私が特に気に入っているのが「ぺっこぺこ」という言葉です。

中身が詰まっていない時に使う言葉で、おなかがとてもすいている時によく使いますね。「ぺこぺこ」よりも、もっとおなかがすいているような語感です。

子ども向けの本なので、言葉の響きも大事ですね。

あおむしは、生まれてからいろんな物を食べていくのですが、食べても食べてもおなかはいっぱいにならず、「ぺっこぺこ」なのです。

(日本語版)

まだ おなかは ぺっこぺこ

やっぱり おなかは ぺっこぺこ

それでも おなかは ぺっこぺこ

まだまだ おなかは ぺっこぺこ

※それぞれの表現の間に、あおむしはどんどん食べ物を食べていっています(量も増えていきます)

「まだ」とか「やっぱり」とかの言葉の効果も手伝って、どんなに食べてもまだおなかがすいている様子がよくわかります。

これ、英語版だと、「But he is still hungry(でもあおむしはまだお腹が空いています)」の表現を何度も使うだけなのです。

同じ言葉の繰り返しなので、リズムがあっていいですけどね。「でも、まだおなかがすいています」とか「まだおなかがいっぱいになりません」とか? なんだかあっさりしているように聞こえませんか?

アメリカの子どもたちは、この英語版を読んで、あおむしのおなかがどれくらいすいているのか、わくわくしながら想像できるのかな? と思いました。

おなかが痛くなるあおむし。でもやっぱり表現が違う……

とうとう食べすぎて、あおむしはおなかが痛くなります。

(英語版)The night he had a stomachache!

(日本語版)そのばん あおむしは、おなかが いたくて なきました。

う~ん、なんだかやっぱりあっさりしています。

ここまで書いて(やっと)わかったのですが、日本語版の方が、登場人物が人間のように表現されているんですね。

擬人化というんでしょうか、お月様がしゃべったり、あおむしが泣いたり。なので、英語版は、淡々と話が進んでいくように聞こえるんでしょうね。

いかがでしたか? 日本でもとても有名な『はらぺこあおむし』、私の場合は日本語から入って、今回初めて英語版と出合ったのですが、日本語版の方がやっぱり好きです。

翻訳に使われる言葉の違いで、本のイメージがずいぶん変わることもわかりました。

日本語版の『はらぺこあおむし』は、もりひさし氏がされています。日本語版の『はらぺこあおむし』を大好きにさせてくれてありがとうと、お礼が言いたいくらいです。

それにしても、言葉の持つ力ってすごいですね。選ぶ言葉しだいで、作品が何倍も魅力的になります。ちょっとした魔法ですね!!

こちらの絵本だと日本語と英語の両方が書いてあるそうです。ぜひその違いを楽しんでみてください。

the-very-hungry-caterpiller

良かったらシェアでみんなに教えよう!

ABOUTこの記事をかいた人

タカコ

日本語教師養成講座修了。英語が苦手だったにもかかわらず、夫となるアメリカ人との結婚を機に渡米。現在は一児の母として英語に囲まれた環境の中で英語を習得中。日本語教育に携わった経験から言語を深く掘り下げる探究心がすさまじく、身近な英語の知識を初心者にもわかりやすく書くよう心掛けている。