英語の助動詞と聞くと、ややこしいイメージがありますよね。
たとえば、「will」の過去形は「would」で、助動詞が過去形になると確実性が下がるというお話もしました。
その続きとして、今回は助動詞が過去形になると「丁寧な表現になる」ことについて紹介します。
目次
助動詞の現在形と過去形の違い
以前の記事で、助動詞「will / would」「can / could」「may / might」の現在形と過去形の使い分けについて書きました。
過去形が過去の意味を持たず、現在形を使ったときとの違いは、「確実性」か「可能性」かでした。
そのルールに、今回もう1つ付け加えさせてください。
それが、助動詞が過去形になると「丁寧な表現になる」ということです。
助動詞が過去形になると丁寧な表現になる!
こちらの例文をご覧ください。まずは現在形の「can」から。
Can you get me my iPhone ?
(iPhoneを取ってくれる?)
この「can」を過去形の「could」にしてみましょう。
Could you get me my iPhone ?
(iPhoneを取ってくださいますか?)
このように、助動詞を過去形にするだけで丁寧な表現になります!
過去形が「丁寧な表現」になるワケとは?
では、どうして、過去形だと「丁寧な表現」になるのか……という疑問について、元・英会話教師の夫に聞いてみました。
うむむ。なぜ助動詞が過去形になると「丁寧な表現」になるのかがわからない。このままだと寝不足だ!
んー、助動詞の過去形を使った「可能性を示す言い方」は、言っていることの焦点がボケているのがわかる?
え? どういうこと??
「そうなるかもしれない。でも、そうならないかもしれない」といった風に。現在形の「確実にそうなる」というのと違って、「助動詞の過去形」は言い切っていないよね?
助動詞のおさらい
- 助動詞の現在形確実性
【例】He will come.(彼は来る [確実に!]) - 助動詞の過去形可能性
【例】He would come.(彼は来る [……けど来ない可能性もある])
で、内容が確実性を示していれば直接的に聞こえるんだ。でも、可能性を示す内容だと、受け取り方に幅が出て、やわらかな印象になるんだよ。
つまり、言い切ってないから、やわらかに聞こえて「丁寧」になるってこと?
誰だって、直接的にガツンと言われるより、やわらかく言われる方が「丁寧に聞こえる」と思わない?
そりゃ、そうだね! ガツンときつく言われると、嫌な気分になるよ。
これは、夫の話を聞いて「なるほど!!」と腑に落ちました。
つまり、こういうことですね。
- 助動詞の過去形は言い切らない
- ゆえに間接的に聞こえる
- そのためやわらかい(丁寧な)ニュアンスに聞こえる
助動詞の過去形が丁寧に聞こえる理由
これを聞いて、「日本語と同じだ!」と思いました。
たとえば、日本語で「とか」や「など」を使うと、直接的なのが間接的になって、じゃっかん丁寧に聞こえませんか?
日本語も焦点がボケると丁寧
- 手伝ってもらうとかできますか?
- 一緒に食べに行くとかどうですか?
- イタリアンなどはいかがですか?
この場合の「とか」は完全に「焦点」をボカしていますよね?!
直接的に「〜はできますか?」ではなく、「〜とか、できますか?」のように曖昧にボカすことで丁寧さを表現しているんですね!
「相手の選択権」を示すのが「助動詞の過去形を使った依頼」
タカコ、疑問文の「Will (Would) you 〜?」や「Can (Could) you 〜?」、「May I 〜?」は、こんな3つの意味を持つ表現だってことはわかる?
- 依頼
〜してくれませんか? - 可能
〜できますか? - 許可
〜してもいいですか?
※ 助動詞は肯定文(普通の文章)で使うときと違い、疑問文で使うと「お願いをする」という表現になります。
うん、わかる。「(自分はあなたに)〜してほしい」とか「(自分は)〜したい」とか、気持ちがこもっていて、それを相手にお願いしているっていうことだよね。
そう。だから、聞き手にとっては直接的に聞こえ、強めに感じてしまうんだ。
へー、そんな風に考えたことはなかった!! 助動詞の「現在形」でお願いすると「強い表現」に聞こえるんだ?
例えば「Will you come to my house?」と「Would you come to my house?」だと「will」の方が「would」よりも気持ちが強くて、「Please come!!(来て!!)」という意味合いが強いんだ。
なるほど!!「当然来てくれるよね?」というニュアンスになるんだね。
もちろん「will」で聞かれても、「yes / no」で答えられるけど「来る? ね、来るよね??」って、話し手の気持ちがぐいぐいくる感じがする言い方なんだ。
「will」で言われると断りづらそう……。じゃあ「would」だと?
過去形の「would」は、「もしよかったら……」と、うかがうような言い方になるんだ。なんというか「あなたには選択権がありますよ」的な感じで、言われた方も断りやすい(笑)。
- Will you come to my house?(うちに来てくれますか?)
「Please come!!(うちに来て!)」という意味合いが強い - Would you come to my house?
「来るかどうか、あなたには選択権がありますよ」的なニュアンス
あ! だから「I would like to 〜(〜したいです)」も、「もしよかったら、(自分は)〜したいんですけど」っていう、丁寧なニュアンスになるんだね。
そうなんだよ。
お願いするときの「can」について
へー。おもしろいね。なんか、ちょっとわかってきた!!
よかった! 今度は助動詞「can」についてだけど「それが能力的にできるかどうか」を聞く方法だよね? たとえばこんな感じで。
Can you eat Natto?
(納豆、食べられる?)
あなたは納豆を食べることは可能ですか?
この返事は「食べられる」か「食べられない」かが焦点になるよね。
うんうん。でも、「can」の過去形「could」もそれは同じじゃないの?
「could」は「それができることは知っているけど、そうするかはあなたには選択権がありますよ」っていう感じなんだ。だから、「would」と同じで断りやすい。
なるほど、だから「丁寧」なんだね。
ここで、夫が家事を例に出してくれました。
私はいつもゴミの日に「ゴミを出してきて」と夫にお願いしていますが、これを「can」と「could」で言ってみます。
2つの「ゴミを出してきて」
- Can you take out the trash?
- Could you take out the trash?
わたしはいつも「Can you 〜 ?」で聞いていますが、「ゴミ出し、してくれる? お願いね!」的な意味合いです。
でももし、「could」で言った場合は、「(相手に)ごみを出せる(=能力がある)」ことはわかっているうえで、「ごみ、出してもらってもいいかな?」と相手に「うかがう」感じになるということです。
「can」を使っても、命令文「Take out the trash !」じゃないからきつい言い方でもないんだけどね。でも「can」の方が「お願い感」が強い。
相手との関係性で「can」を使うか、「could」を使うかを考えないとダメってことだね!
丁寧な依頼表現の最上級は「+ please」
さて、最後に「丁寧な依頼表現」の最上級の形を紹介します。
「Can (Could) you ?」「Will (Would) you ?」の依頼表現は、こんなふうに散々説明してきました。
助動詞の過去形は「丁寧」
- 「will」よりも「would」が丁寧
- 「can」よりも「could」が丁寧
このさらに上をいく表現として、「please」を付ける技があります。
英語では「please」をつけると「丁寧な言い方」になるというのはよく知られていますよね?
Please help me !!
(手伝ってください、お願いします!!)
助動詞を使った依頼表現にも「please」を付けて言うことによって、さらに丁寧な言い方になります。
Could you help me, please ?
(本当に申し訳ございませんが、手伝っていただけますか?)
ちなみに助動詞で依頼するときの「please」の位置ですが、2パターンあります。
「please」の位置
- Could you help me, please ?(文末)
- Would you please help me ?(動詞の前)
上の例のように「please」は、文末か動詞の前に付けます。
まとめ
「助動詞が過去形になると丁寧な表現になる」と言われているのは、「可能性」示す過去形は、言いたいことのの焦点がぼけているからだったんですね。
そのため、現在形よりも表現がやわらかで「丁寧」に聞こえる……ということだったんです。
今まで「Can you〜 ?」を連発していた人も、お店や親しくない人と話すときは「Could you〜 ?」を使ってみてくださいね!
こちらの記事もぜひ!
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