助動詞の「過去形」はべつの助動詞? 現在形と過去形を使い分けるカギ

タカコ

執筆者

WEBライター。2013年にアメリカに渡る。現在はアメリカ人の夫と子ども2人でテキサスに在住。

英語にはいくつか助動詞と呼ばれるものがあります。その中でもよく使う助動詞がこちらの3つです。

よく使う助動詞

  • will
  • may
  • can

今回は、これら3つの助動詞の現在形と過去形の違い、そしてニュアンスの違いを紹介します!

助動詞「will」「can」「may」

学校で英語を勉強していくと、ある段階で助動詞を習います。

その中でも、この5つが基本的な助動詞です。

5つの基本助動詞

  • will
  • can
  • may
  • must
  • should

今回は、さらにこの中から「will」「may」「can」を特にピックアップして紹介しますね。

いきなりハードルを上げるようになりますが、これらには現在形と過去形があります。

こんな感じですね。

助動詞・助動詞の過去形
現在形 過去形
will would
can could
may might

助動詞は、いろいろな用法(機能)があるし、それを考えるだけでも混乱するのに、さらに過去形まで……。

タカコ

私も最初は何がなんだかわかりませんでした。

助動詞の過去形=過去の意味を持たない

実は、この3つの助動詞、ネイティブスピーカーは、普段の会話で本当によく使います。

そして、当たり前ですが、現在形と過去形を巧みに使い分けます

よくよく英語に触れてみると、これらの助動詞は「過去形」といっても、大半が
「形ばかりの過去形」で、本当に過去の意味を示す場合はごくわずかということがわかってきました。

ほとんどは、「時制」をそろえるために過去形にするだけで、内容が過去を示すわけではないのです。

タカコ

これは衝撃でした。

ややこしい文章になってすみません。とりあえず、こちらのことを覚えてください。

助動詞の過去形
助動詞の「現在形」とは全く別の助動詞

「would」なら、「willの過去形」というよりは、「全く別の助動詞」と考えてほしいということです!

過去形になると「起こる可能性」が低くなる

過去形になった助動詞は、「形のみで、意味は過去を示すわけではない」ことは前項で書きました。

タカコ

でも、それってどういうこと? というか現在形と過去形ってどう使い分けるの?

……と思われると思います。もう一度今回取り上げる3つの助動詞の現在形と過去形をお見せしますね。

助動詞・助動詞の過去形
現在形 過去形
will would
can could
may might

ということで、この3つの助動詞が過去形になったときの使いどころについて、元英会話教師の夫に聞いてみました。

タカコ

ねえねえ、「would」みたいな助動詞の過去形が、過去の意味を持たないことが多いってほんと? 過去を表さなければ、現在形との違いって何?

うーん、例えば「will」 の過去形は「would」だけど、この2つは、会話の中ではニュアンスが全然違うんだ。現在形だと「certainly(必ず=確実性)」、過去形だと「possibility(可能性)」を表すからだよ。

タカコ

そうなの? ニュアンスが違うって知らなかった……。「certainly」と「possibility」をもう少し詳しく説明してよ。

「certainly」は「will happen」。つまり、「(将来)確実にそうなる」という表現。でも、「possibility」は、「確実ではなく、そうなる可能性がある」という表現。

ということで、まとめて表にするとこういうわけです。

「will」と「would」の違い
will (将来)そうなる
would 確実ではなく、そうなる可能性がある

つまり、「will」が「would」になると「起こる可能性」が低くなるということです。

ポイント

「will」が「would」になると、「起こる可能性」が低くなる

たしかに、「起こる可能性」の観点からだと、この2つは全く違いますね。


助動詞の現在形/過去形のニュアンスの違い

では、助動詞の「現在形」と「過去形」を実際に例文の中で比較してみましょう。

「will」「would」を比較

「will」は、肯定文の中では「意志」や「未来」の意味があります。

「will / would」の例文

  • Our anniversary dinner next Friday will be at a nice restaurant.
  • Our anniversary dinner next Friday would be at a nice restaurant.

上の文章のどちらも「will」と「would」以外は同じ文章で、「来週金曜の私たちの記念日の食事は、いいレストランで行われる」ということについて言及しています。

「will」=「確実にそうなる」

1つ目の文章は、「will」を使っているので「確実にそうなる」という意味になり「いいレストランで食事できる予定(=未来)」という文になっています。

オオカミ

Our anniversary dinner next Friday will be at a nice restaurant.
(来週金曜の記念日の食事は、いいレストランで行われるよ)

タカコ

「will」を使っているということは、もうお目当てのレストランに予約したんだよね?

オオカミ

Of course !
(もちろん!)

「would」=「確実ではない」

ところが、2つ目の文章では「would」が使われています。この文章をオオカミさんに言ってもらいましょう。

オオカミ

Our anniversary dinner next Friday would be at a nice restaurant.
(来週金曜の記念日の食事は、いいレストランで行われる)

「would」は「確実性」ではなく「可能性」です。

タカコ

「まだそのことが起こる可能性(=いいレストランで食事できる可能性)」もありますが、「そうならない可能性もある」といった感じになります。

そのため、この文章の後に「そのことが起こらない」ことを話すこともできます。

オオカミ

Our anniversary dinner next Friday would be at a nice restaurant.
(来週金曜の記念日の食事は、いいレストランで行わる)
But they are already full.
(……ことになってたんだけど、すでにそのお店は予約がいっぱいだった)

過去形の「would」を考察

さて、「would」を「will」の過去形として直訳してみると、「いいレストランになる予定だった」という意味になります。

「可能性」という言葉を使って訳すと「いいレストランになった可能性がある」といった感じでしょうか。

タカコ

日本語にすると変ですね。日本語訳にとらわれすぎると、頭が混乱します。「過去形」ということは完全に忘れ、「確実ではない」という、英語のニュアンスを理解してください。

ポイントは2つです。

ポイント

  • 過去形の「would」を使ったからといって、文章の内容が「過去」になっているわけではありませんね。記念日の夕食は来週の金曜日ですから、まだこの時点で食事は終わっていません。
  • 「would」の後は「but」で続けなくてもかまいません。「可能性」ですから、言っていることが「確実にそれが起こらない」というニュアンスをくみ取ってください。


「can」「could」を比較

お次は「can」と「could」を比較してみましょう。

「can」は、「可能」の意味があります。

「can / could」の例文

  • We can be anything.
  • We could be anything.

どちらも「私たちは何にでもなれる」と訳せますが、過去形「could」の方が可能性が低くなります

過去形「could」は可能性が低くなる

「can」と「could」の、可能性のニュアンスを吟味して訳すとこんな感じでしょうか?

ウサギ

We can be anything.
(もちろん、私たちは何にでもなれる)

ウサギ

We could be anything.
(私たちは何にでもなれる可能性がある)

これも「could」という過去形を使っていますが、文章の時制は過去ではありません

「確実性」なのか、「可能性」なのかという違いなのです。

「could」には「何にでもなれる / なれない」という両方の可能性があります。ですから、「but」を使って続けると「それが起こらない」ことがわかります。

ウサギ

We could be anything.
(私たちは何にでもなれる可能性がある)
But we don't have the money for that.
(でも、そのためのお金がない)

「お金がなく、行動が制限された」という事情が想像できますね。

過去を表す「could」も

ちなみに、「could」が単純に「can」の過去形として使われることもあります。

ウサギ

I could speak Chinese when I was 5 years old.
(私は5歳のとき、中国語を話せました。)

この文章では、「when(〜のとき)」を使うことにより、時期を限定しています

こうすることで、話の時制が「5歳のとき = 過去の話」となるのです。


「may」「might」を比較

そして最後は「may」と「might」です。この2つは多くの場合、「推量」として使われます。

こちらは、そもそも「~かもしれない」と頭の中で考えることなので、実際「そのことが起こる可能性」は、「will / would」に比べて低い表現です。

こちらの例文を見て下さい。

「may / might」の例文

  • All of them may get out from the cave.
  • All of them might get out from the cave.

どちらも「彼ら全員が洞窟から出てくるだろう」という意味ですね。

過去形「might」は可能性が低くなる

可能性のニュアンスを組み込んで訳してみましょう。

オオカミ

All of them may get out from the cave.
(もちろん、彼ら全員が、洞窟から出てくるだろう)

オオカミ

All of them might get out from the cave.
(彼ら全員が、洞窟から出てくる可能性はあるだろう

「may」は「(もちろん)彼らの全員が、洞窟から出てくるだろう」、「might」は「彼らの全員が、洞窟から出てくる可能性があるだろう」といった感じです。

「may」は自信を持って「そう思う」、「might」は「そんな可能性があるんじゃないかな」と思う、といったニュアンスでしょうか。

これも助動詞「may」の過去形「might」を使っていますが、過去のことを言っているのではありません。

可能性を考えて使い分けよう!

実は、この「might」を使った文は、13人のうち、4人が救出されたときに、夫が私に言った言葉なんです。

All of them might get out from the cave.
(彼ら全員が、洞窟から出てくる可能性はあるだろう

彼らが発見された当時、少年たちの状態や、洞窟内の水の状態、洞窟の地形的条件などから「救出すること自体、難しいかもしれない」と言われていました。

でも最初に4人が救出され、「もしかしたら、ほかの少年たちも無事に救出されるかもしれない」と、希望が出てきました。

でも、まだ「確実に全員が救出されるだろう」と言い切れる状態ではなかったんです。救出には危険が伴っていました。

そこで、「might」を使った言い方になるわけです。

それよりも確率の高い、「確実に救出されそうだ」と自信を持って言えるような状態なら、「may」を使うといいですね。

タカコ

どうでしょう? 「確実性」と「可能性」のニュアンスの違い、なんとなくつかめましたか?

日本語に訳しながら考えていると混乱するので、無理に訳さず、「確実性」なのか「可能性」なのかに注目するのがコツです。



まとめ

会話でよく使う助動詞「can(could)」「will(would)」「may(might)」ですが、使い分けのポイントは、こちらです!

  • 確実性を持つもの現在形
  • 可能性を持つもの過去形

見た目の形(時制)ではなく、「確実性 / 可能性」の違いに焦点を合わせてみてください。

きっと、相手の話の意図がよくわかるようになります。

もしかしたら、「今までたくさん勘違いしていた!」なんてこともあるかもしれません(←私のことです)。

今まで苦手で「なんとなく気分で使い分けていた」という方も、違いがわかると、自分の意図に応じて使い分けることができますね。

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タカコ
アメリカ人の夫との結婚を機に渡米。現在は二児の母として英語に囲まれた環境の中で生活。日本語教育に携わっていたため言語への視点が鋭く、元・英会話教師の夫とのやりとりから生まれる記事が秀逸。
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