わたしの住むインドネシアでは水道水が飲めません。
そのため飲み水はもっぱら、この画像のようなミネラルウォーターに頼っています。
上の画像ですが、左に3本並んでいるボトルは500ミリリットルではありませんよ。
なんと1.5リットル! その右側にあるボトルが迫力満点ですね。こちら、当地での呼び名は「ガロン」です。
でも1ガロン(イギリスだと4.5リットル)という単位では、 左のボトル3本分なのです。
この「ガロン」は明らかに1ガロンではないのに、なぜ「ガロン」という名前なのでしょうか? 今回は、そんな「ガロン」の謎に迫ります。
目次
インドネシアで使われる単位は「リットル」
そもそもの前提ですが、インドネシアでは、「ガロン」という単位は使われていません。
ガソリンも液体せっけんも、日本と同じく「リットル」表示。
実は「ガロン」に記載されているのもリットル表示だったりします(笑)。
こちらを見てください。
ほら、単位としてはリットルを使っていますよね。
19リットルも入っているんですね。重いはずや!
インドネシア語の辞書での「ガロン」の定義
手始めに、インドネシアの教育省のサイトにあるインドネシア語大辞典オンラインで「galon」の定義を確認してみましょう。
すると、こんなふうに書かれていました。
ガロンとは?
アメリカの3.785リットル、またはイギリスの4.546リットルに当たる
この定義を見る限りでは、インドネシア独自の規格は無いようです。
どういうことや……。
普通のインドネシア人の感覚を確認
そこで、わたしが日本語を教えているクラスで授業前に容器を見せて「これ何?」と聞いてみました。
もちろん、みんな口をそろえて「ガロン!」と答えてくれましたが。
「何ガロン?」と聞いたら「1ガロン!」と答えていましたが(笑)。
「ガロン」という言葉自体は浸透しているものの、本来の意味(アメリカの3.785リットル、またはイギリスの4.546リットル)とはズレがあるようです。
かくいうわたしも少し前まで1ガロン=19リットルだと思っていましたが(笑)
こちらが参考になりますよ。
国営通信社のニュースで「galon」発見
もう少し調査を進めると、国営通信社のニュースで、「air galon」という言葉が使われていました。「air」は「水」のことです。
ちなみに、とある州で「air galon」を作っている会社が12社あるが、規格を満たしているのは1社だけだった……という内容でした。
厳密に言うと、この「air galon」が19リットル入りの水を指しているかどうかはわかりません。
しかし、以下の理由からこの「air galon」が19リットル入りのサイズを指していると見て差し支えないでしょう。
- お店で「ガロンください」と尋ねるとどこでも19リットル入りのものが出てくる
- インドネシアでアメリカやイギリスでいう1ガロンのボトルは見たことがない
- 学生に聞いても全員「ガロン=この容器の水」という反応
ちなみに、下述の記事はインドネシア規格を取り仕切っている政府系機関・インドネシア標準化機構のサイトに転載されていたものです。
標準化機構も、「ガロン」=19リットルと認めていると言えます。もしくはそこまで見ていないか(笑)
ミネラルウォーターメーカーの見解
インターネットでの調査に限界を感じたため、ミネラルウォーターのメーカー、大手2社に問い合わせることにしました。
うち1社は、アクアというミネラルウォーターを生産している、業界最大手です(以下、「アクア社」)。
問い合わせ先として適切なのかどうかはわかりませんが、役所に比べれば、きちんと答えてくれそう。
なぜ「ガロン」と呼ばれているのか。問い合わせフォームに送ったところ、翌日、2社とも電話をくれました。
しょうもない質問に答えてくれて、感謝です。
ただ。共通の見解はこちらです。
アメリカのガロンで数えると5ガロンなのでガロンと呼ばれています。
え……?
わたしの頭の中、「?」だらけになりました!
なんで「5」ガロンやのに「5ガロン」って書かないんですか?!
そんな素朴な質問をぶつけたところ、アクア社の方は「これ以上のご質問は問い合わせフォームにお願いします」との対応。
もう1社は「そういう習慣なので……」と。
うーん。少なくとも、アメリカのガロンを採用していることだけは分かりました。
アメリカにも5ガロンのサイズあり
アメリカ在住のライター、タカコに聞いてみると、こんな貴重な写真を送ってくれました!
表示はちゃんと「5ガロン」。アメリカにもこのサイズがあることがわかって、テンション上がりました。
というより、こちらがオリジナルか。
リットル表示だと、18.9リットルか……。まあ、0.1リットルの差はご容赦ください(笑)
「ガロンの謎」の答えはタイにあり?
そんなこんなで、最大手のアクア社について、再度インターネットで調査しました。
すると、同社がインドネシア初のミネラルウォーターを作ったことがわかりました!
また、同社創業者の弟がノウハウを学ぶために、創業の1973年以前にタイへ渡ったとか!
これは、タイに何かヒントがあるのかもしれません。
さっそく、インターネットでタイのミネラルウォーターのメーカーのことを調べてみました。ポラリスという名前の会社です。
すると、この会社、創業者がアメリカ人で、1958年ごろタイへ渡ったことが判明!(いつ会社を作ったのかは不明ですが)。
ここで「ガロン」という単位がタイに伝わったのかも。
ただ、以前タイに住んだことのある日本人に聞いてみたところ、タイでは「リットル」を使っていて、「ガロン」は使われていなかったとのこと。
けっきょく「迷宮入り」に
19リットルのごっついサイズは「飲料水タンク」ぐらいの表現だとかで、それが載っているというURLも送ってくれました。でも、タイ語は読まれへんわ。
タイネスレのサイトだと英語バージョンもあり、そこには「5ガロン(18.9リットル)」との情報が!
ただ、同じページのタイ語バージョンだと「18.9リットル」としか書かれていないそうです。
一方、「タイ ガロン 水」(日本語)で検索すると、タイの在住と思しき方が書かれた記事がいくつかヒットしました。
どうも「ガロン」が普通に使われていて、18.9リットル入りを示しているような。
うーん……。 タイでは「ガロン」は外国人向け? その昔、「ガロン」という単位が入って来たものの、リットルで統一したのかも。
ミネラルウォーター「ガロン」の名前に関する仮説
以下、わたしの仮説になります。
1958年以降、アメリカ人がポラリス社設立、タイでミネラルウォーター生産開始。そのときに「ガロン」という単位を使った。
1973年以前に、インドネシア人がタイの会社でミネラルウォーター生産のノウハウを習得。そのノウハウと「ガロン」という単位がインドネシアに入ってきた。
インドネシアでは「ガロン」という言葉は馴染みがなく、勘違いで5ガロン(19リットル)がガロンだと思ってしまった。
誰も気づかないまま今に至る。
または……気づいたけど後戻りできないまま今に至る(だってもうみんなそう呼んでるし、国営通信の記者もそういう前提で記事書いてるし……)。
……といったところです。よくありますよね、気づいたけど……っていうこと。
フザケているみたいに見えますが、この仮説、今まで得た情報を基に真剣に考えてます(笑)。
まとめ
理由は追究しきれなかったのですが、とにかく、インドネシアでは「ガロン」がアメリカでいう5ガロンのサイズを指し示しているということは事実です。
ただし、ミネラルウォーター限定です。
ともかく、上述の仮説を検証すべく、調査を続けていきます! タイ語を勉強して、タイに飛ぶしかないか(笑)。