[書評]『イラストで直感的にわかる 小学英語ワークブック』

『イラストで直感的にわかる 小学英語ワークブック』の書評
サト

執筆者

TOEIC990点(満点)。ELSA認定アンバサダー。インドネシアで日本語学校を運営している日本語教師。話せる言語は英語のほかにインドネシア語、中国語。→ サトについてはこちら

小学校でも英語の授業が始まりました。

ですが、小学校から中学校に上がって、文法などを本格的に習い始めると、途端についていけなくなるお子さんも多いようです。

小学校から中学校へ、英語の理解をスムーズに移行できる教材はないのでしょうか?

この記事では、そんな要望にピッタリの書籍『イラストで直感的にわかる 小学英語ワークブック』をご紹介します。

著者の守屋 佑真 (もりや ゆうま)氏について

まずは、本書『イラストで直感的にわかる 小学英語ワークブック』の著者である守屋 佑真氏をご紹介しましょう。

守屋氏は、大手予備校・河合塾の講師です。

河合塾は予備校なので、主に高校生や浪人生に英語を教えているということになります。

なんで予備校の先生が『小学英語ワークブック』を書いているの……?

そうなのです。不思議ですよね。

実は守屋氏は、次のようなプログラムのカリキュラムを開発したり、講師を務めたりもしていらっしゃるんです。

守屋氏が担当したプログラム

  • 小学校英語教育研修プログラム
  • 幼稚園英語教育研修プログラム

なので、守屋氏は高校生だけでなく、子ども向けの英語教育にも精通していると言えますね。

守屋氏は、「ある問題」を解決したいという思いで本書を執筆したそうです。

その問題とは、こちらです(太字はサトによる)。

その問題とは「小学校までは楽しかった英語が、中学校から楽しくなくなってしまう」という事態です。(中略)しかし、中学校に進み、それまで感覚的だった英語学習に、突如「理屈やルール」が入ってきて、ギャップに苦しむ子どもが少なからずいることも事実です。

守屋 佑真著『イラストで直感的にわかる 小学英語ワークブック』(2020年 KADOKAWA)

小学校英語は感覚的なのに対し、中学校からは文法などをしっかりと学習するので、そのギャップに戸惑う子どもがいるということですね。

そこで、本書は次のような目的で書かれています。

本書は(中略)「小学校英語」と「それ以降の英語」のギャップが生むつまずきを「大ケガ」にしないことを目的としています。

守屋 佑真著『イラストで直感的にわかる 小学英語ワークブック』(2020年 KADOKAWA)

小学校英語から中学校英語へのスムーズな移行を実現するために生まれた本とも言えます。

『イラストで直感的にわかる 小学英語ワークブック』の特徴

前項では、著者とその思いについて書きました。

ここでは、本書の特徴をご紹介しましょう。次の3点です。

本書の特徴

  1. 品詞の種類や使い方をキャラクターで楽しく学べる
  2. コミュニケーション上の目標がはっきりしている
  3. 段階的に無理なく学べる

1点ずつ解説しますね。

品詞の種類や使い方をキャラクターで楽しく学べる

まずは、品詞やの種類や使い方をキャラクターで楽しく学べる点。

品詞は、中学から学ぶ「理屈やルール」のひとつですよね。

ここでつまずいて英語が嫌いになる子どもがいるというのは、冒頭でもご紹介したとおりです。

その対策として本書では、品詞の種類や使い方が楽しく学べるよう、キャラクターを利用しています。

キャラクターは「火」「雲」「木」「水」

具体的には、品詞を「火」や「雲」などの「キャラクター」に見立てて、イラストとともに解説しているんです。

キャラクターのイラストは、著者である守屋氏のツイッターに画像がありました。

左下の画像(「小学生の理解を促す”エレメント式"」)に、「火」「雲」「木」「水」のキャラクターが見えますね。

かわいらしくて、わたしも気に入っています!

品詞とキャラクターの特徴が一致している

「火」「雲」などのキャラクターは、それぞれ次の品詞に対応しています。

キャラクター品詞
名詞
動詞
形容詞
副詞
キャラクターと品詞の対応

「火」「雲」「木」「水」のようなエレメントは、漫画やゲームなどでもよく出てくる子どもにも人気の要素ですよね。

もちろん、だからこそ使われているのだと思いますが、適当に名付けられたものではありません。

たとえば、次のような特徴を捉えているんですよ。

キャラクター品詞キャラクターの特徴品詞の特徴
名詞
動詞
形容詞
副詞
キャラクターと品詞の特徴

それぞれのキャラクターと、品詞の特徴がぴったり一致しています。

なので、次のような基本的なところが、直感的にわかるようになっていますね!

木(形容詞)は火(名詞)を説明できる

水(副詞)は火(名詞)を説明できない

本当に、うまくできているなあと思います!

キャラクターを頻繁に見る → 品詞の感覚が自然に身につく

実際に文を作る際にも、このキャラクターたちが大活躍します。

たとえば、次のとおり。

文を作る際にキャラクターが登場
守屋 佑真著『イラストで直感的にわかる 小学英語ワークブック』(2020年 KADOKAWA)

上の画像では、「I like sweet strawberries.(わたしは甘いイチゴが好きです)」の品詞の順番にキャラクターが並んでいます。

このキャラクターたちを頻繁に見ていると、次のような品詞の使い方が自然に身につくことが期待できますね!

品詞の使い方

  • 火(名詞)の次に雲(動詞)が来る
  • 木(形容詞)で火(名詞)を説明するときは、木→火の順に使う

コミュニケーション上の目標がはっきりしている

本書の特徴の2点目は、コミュニケーション上の目標がはっきりしている点です。

たとえば、「自分の1日を伝える」という目標が先にあって、その目標を達成するのに必要なことばや文法を学ぶという順番になっているんです

ここで学ぶことばや文法は、たとえば次のとおりです。

ことば

  • 起きる
  • 学校へ行く
  • 宿題をする

文法

  • 動詞の使い方

「目標を提示する→ことば・文法を学ぶ」という順番は、意外と大切です。

実際にコミュニケーションができるようになるためには、この順番が理想的とも言えます。

わたしが学校で受けた英語教育とは、まったく違う!

わたしが受けた英語の授業は、たとえば「今日は受動態(受け身形)を勉強しましょう」という感じで始まり、次のような説明を受けるわけですね。

受動態の作り方

  1. She kicked him.
  2. He was kicked by her.

1の受身の形が2だという説明です。

でも、12の違い、もっと言うと、何のために「受け身」を使うのかについては触れられなかったと記憶しています。

あくまでも目標は「受け身」という形をマスターすることで、実際に使えることではなかったのかもしれませんね。

最近は日本の英語の教科書でも、具体的な目標を提示しているものがあります。

その点、本書では目標が先に来ています。

言い換えると、「本に出てくることばや文法を学ぶとどんなことができるようになるか」がはっきりしているとも言えます。

ちなみに、わたしはインドネシアで日本語教師をしているのですが、今使っている教材でも「目標を提示する→ことば・文法を学ぶ」という順番になっています。

ことばや文法が実際のコミュニケーションの場でどう役立つかがわかっていると、学生のモチベーションも上がると感じています。

段階的に無理なく学べる

本書の特徴も最後になりました。3点目は、段階的に無理なく学べる点です。

たとえば、「自分の1日を伝える」ということについては、次のステップで紹介されています。

ステップ

  1. フレーズを学ぶ(並べ替える)
  2. 日本語(短い文)を英語にする(英語をなぞる)
  3. 文法をキャラクターで学ぶ
  4. 日本語(短い文)を自分で英語にする

この「自分の1日を伝える」という目標について1ステップずつ見てみましょう。

フレーズを学ぶ(並べ替える)

まずは目標を達成するのに必要なフレーズを学びます。

たとえば、「起きる」であれば、次のとおりです。

フレーズの学び方

  1. 「wake up」という音声を聞く
  2. 本に書いてある「up / wake」を並べ替えて「wake up」と書く

聞いてから並べ替えるので、ハードルはかなり低いですよね。

本書には、無料でダウンロードできる音声がついています。

日本語(短い文)を英語にする(英語をなぞる)

次に、たとえば「ぼくは6時に起きます」という短い文を英語にします。

手順は、次のとおり。

日本語を英語にする手順

  1. 「I wake up at six.」という音声を聞く
  2. 薄い字で「I wake up at six.」という文が書いてあるので、これをなぞる

ここでも、まず聞いてから書きます。

文だと、フレーズよりは長くなっていて、難しくなりますが、実際には薄い字で書いてあるのをなぞるだけ。

ここもハードルは低いと言えるでしょう。

文法をキャラクターで学ぶ

そして、本書の最大の特徴でもある「キャラクター」で文法を学びます。

「キャラクターで文法を学ぶ」のがどんな感じなのか、少しだけ見てみましょう。

キャラクターで文法を学ぶ
守屋 佑真著『イラストで直感的にわかる 小学英語ワークブック』(2020年 KADOKAWA)

ここでは、「自分の1日を伝える」という目標に必要な「動詞」を学ぶわけです。

キャラクターがうまく使われていて、わかりやすいですよ!

日本語(短い文)を自分で英語にする

最後に、いよいよ自分で文を作るときが来ました!

たとえば、「わたしはネコを飼っています」という日本語を英語にする問題があります。

ここには薄い字で書かれた文はありません

ヒントはあるのですが、基本的に自分の力で書くことになります。

だんだん助けがなくなる → ひとり立ちをサポート

ここまで、本書の「学び」のステップをご紹介しました。

まずは「並べ替え」や「なぞる」といった助けを借りて英語の文を作り、最後には自分の力で英語を書く。

ひとり立ちをしっかりサポートしてくれると言えるでしょう。

自転車でいうと、次のようなイメージです。

イメージ

  1. まずは補助輪をつけたり他の人に押してもらったりして自転車をこぐ
  2. だんだん「助け」をなくしていく
  3. 最終的にひとりでこぐ

こういう感じなので、無理なく学ぶことができます!

まとめ

この本では、 『イラストで直感的にわかる 小学英語ワークブック』という本をご紹介しました。

本書の特徴をもう一度チェックしましょう。

本書の特徴

  1. 品詞の種類や使い方をキャラクターで楽しく学べる
  2. コミュニケーション上の目標がはっきりしている
  3. 段階的に無理なく学べる

とくに、子どもにとっつきやすい「エレメント」のキャラクターが真髄です。

お子さんに合いそうだと思ったら、ぜひ一度手に取ってみてくださいね。

英語の勉強にオススメの書籍はほかにもいろいろあります。

次の記事にわかりやすくまとめたので、ぜひご参考に!!

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サト
英語びより編集長。独学でTOEIC980点をマーク(2023年9月)。インドネシアで日本語学校を運営している。>>サトについて詳しくはこちら
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