【生徒全員が留学】岡山学芸館高校・英語科の先生にインタビュー

サト

執筆者

TOEIC990点(満点)。ELSA認定アンバサダー。インドネシアで日本語学校を運営している日本語教師。話せる言語は英語のほかにインドネシア語、中国語。→ サトについてはこちら

岡山県・岡山学芸館高校には、私立高校で日本初の英語科があります。

同校の英語科は生徒全員が1か年留学するなど、先進的な取り組みで「知る人ぞ知る」存在です。

そんな英語科の先生方にインタビューする機会に恵まれました。

インタビューに応じてくださったのは2名。英語科長である松本敦子あつこ氏と、同科の教員である青木俊道としみち氏です。

この記事では、インタビューを通して岡山学芸館高校の英語科を紹介します。

岡山学芸館高校の概要

岡山学芸館高校の校舎
岡山学芸館高校の校舎

創立は1960年。岡山学芸館高校は、岡山市にある私立高校です。

建学の精神に「世界で活躍できる立派な日本人を育てる」とあり、国際社会で通用する人材育成を意識していることが伺えます。

それを体現するかのように、海外研修旅行や留学生の受け入れを実施。そして私立高校で日本初となる英語科を新設しました。

英語科ができたのは1966年のことで、58年の歴史を誇ります。

英語科では英語の授業が通常の約2倍となる週11コマあるほか、生徒全員が1か年留学するなどかなり力を入れています。

わたしもインタビュー前から、先生方のお話を伺うのが楽しみでなりませんでした。

英語科の先生方とのインタビュー

松本敦子氏 と 青木俊道氏
松本敦子氏 と 青木俊道氏

インタビューでは次の質問をし、最後に受験生・保護者に向けたメッセージもお願いしました。

気になる質問をタップすれば、その部分をすぐに読めます。

英語教育を志したきっかけは?

ーー英語にはいつから興味を持たれていましたか。

松本敦子氏(以下「松本氏」):
私は父が海外で仕事をしている関係で、小さいころから英語に触れる機会がありました。

中学のころには英語の雑誌を読んでいましたね。大学を出てからは一般企業で勤めたり、フリーランスで翻訳をしたりしました。

青木俊道氏(以下「青木氏」):
私も幼いころから英語を耳にしていました。母が英文科卒で、家事をしながらラジオ英会話を聞いていたんです。

そのおかげか、英語は得意科目だと少なくとも自分では思っていました。

ーー幼いころから英語に触れられていたんですね。では、英語教育に携わろうと思ったきっかけはどのようなものでしたか。

松本氏:
子育てが落ち着いた段階で、あらためてどんな形で社会に貢献できるかと考えたときに、英語教育だと思ったんです。

英語はずっと好きでしたし、学生時代には講師のアルバイトもしていたので。

青木氏 :
私は、大学を出たら教育に携わりたいと考えていました。おこがましいのですが、日本をよりよくするには人を育てることが大切だと思っていまして。それで、英語教育の世界に進みました。

ご自身の英語力アップのためにしていることは?

ーーご多忙な中、どのように英語力に磨きをかけていらっしゃいますか。

松本氏:
通勤時にポッドキャストを聴いています。ニュースやTED Talksなど、高校生がわかるレベル以上の教材ですね。

青木氏:
私はYouTubeを活用することが多いです。特にネイティブスピーカーの発音に触れるためにYouTubeを見ています。

教え方のアップデートのためにしていることは?

ーー英語の教え方はどのようにアップデートされていますか。

松本氏:
オンラインセミナーで教材の使い方を学んだり、YouTubeでほかの先生の教え方を見て研究しています。

第二言語習得で有効と言われている音読多読なども授業に取り入れていますね。

青木氏:
私は、ほかの高校の授業を見学できる際には、その機会も活用しています。

ーーAIのようなツールは活用されていますか?

松本氏:
AIなどの新しいツールも試していますが、それに頼りすぎるのは危険だなと思いました。

実は、とある英文添削サービスを使ったところ、添削結果にかなりの手直しが必要だったので……。

青木氏:
AIは、たしかに文法的に正しい文は作ってくれますよね。

でも「内容の真偽や論理構成」については人間が判断する必要があるので、AIに頼りきりになるのではなく、上手に使う必要があると感じています。

英語科の強みは?

ーーここからは、貴校の英語科についてお聞きしたいと思います。英語科ならではの強みは何ですか。

松本氏:
なんといっても、生徒全員が1か年の留学を経験することですね。

それにもかかわらず、トータルで3年間で卒業できるようになっているので「留年」のような形にはなりません。

留学先(カナダ)のホストファミリーとの集合写真
留学先(カナダ)のホストファミリーとの集合写真

ーーーどのタイミングで留学するのですか?

松本氏:
だいたい1年生の終わりごろから留学します。

ちなみに「留学に送り出したら終わり」ではなく、現地でもしっかり学べるように、定期的にオンラインでクラス会をするなど、全力でサポートしています。

ーー同じ体験をすることで、生徒の皆さんもお互いに仲良くなりそうですね。

松本氏:
そう思います。実は「英語科ファミリー」ということばを使っていて、つながりを大切にしています。

「英語科の生徒の心構え」の1つに「後輩を大切にする」ことがあるぐらいで、卒業生とのつながりも強いですね。

こちらから何も言わなくても自発的に連絡をくれる卒業生がいて、ありがたいかぎりです。

英語科のインスタグラムにも卒業生がちょくちょく登場していますし。

青木氏:
私は本校の普通科から英語科に来て2年目ですが、英語科のつながりの強さには驚きました。

やはり「留学」という共通の経験があるからこそ生まれる絆だと思います。

英語力以外に重視している力は?

ーー英語以外にどんな力を重視されていますか。

松本氏:
大きく分けると「マインドセット」と「スキル」がありますね。

まず「マインドセット」として、「間違えても大丈夫」ということを1年生の段階で徹底的に理解してもらいます。

ーーそのマインドセットはものすごく大切だと思います!

松本氏:
ですよね。間違いを恐れて黙っていたら、実りのある留学もその後の成長も望めないですから。

留学時に「勇気を持って話しかけたら友だちになれた」といった小さな成功体験を積み重ねることで、大きく成長した例もあります。

留学先(カナダ)の同級生との集合写真
留学先(カナダ)の同級生との集合写真

保護者の方からも「シャイだったのに、人前でもものじせず話すようになった」という声をいただくことが多いですね。

ーーほかにも生徒さんに伝えている「マインドセット」はありますか?

松本氏:
そうですね。私たちの学校では「日本」を大切にしていて、生徒全員が茶室でのマナーを学びます。これは英語科だけではなく全生徒です。

たとえば「畳のへりを踏まずに入る」のようなマナーですね。他国の文化を尊重するには、まずは自国の文化を理解できていないと難しいですから

そんな「日本」を大切にする我が校の方針が、英語科にもプラスに働いているのは間違いありません。

ーー英語以外の「スキル」についてはどうでしょうか。

松本氏:
論理的思考やPCスキルも重視していますね。

論理的思考については、英語の授業ではないのですが、大学入試の小論文対策や、課題研究などで鍛えられます。

留学先で「アカデミックライティング」(論文やレポートのライティング)を学んで成長した例もありますね。

日本語で論理的に書く力がつくと、英語でも構成のしっかりした文章が書けるようになり、論理的に話す力もアップすると感じています。

英語でのプレゼンの準備
英語でのプレゼンの準備

ーー母語の運用能力は大切ですよね。ではPCスキルについてはどうでしょうか。

松本氏:
留学先ではPCで課題を作成・提出するのがふつうです。なので、留学前の1年生の段階で、ひと通りのPCスキルが身につくように取り組んでいます。

英語科の先生の特徴は?

英語科の先生方
英語科の先生方

ーー英語科の先生方にはどのような特徴がありますか。

松本氏:
実は本校の英語カの先生には変わった特徴があります。

私も含めて、先生は全員、学校での英語教員以外の経験があるんです。大学を卒業してすぐに英語の教員になった先生は、1人もいません

ーーたしかに、それは珍しいかもしれませんね!

松本氏:
はい。私は会社員などを経験していますし、青木先生は学習塾で教えていました。いちばん若い先生も一般企業での経験があります。

ネイティブスピーカーの先生も1人いて、彼も元ジャーナリストです。

ネイティブスピーカーの先生の授業
ネイティブスピーカーの先生の授業

ちなみに、英語科の運営に携わっている副校長も、以前は企業コンサルタントでした。

もちろん、教員ひとすじの先生方も尊敬しています。一方で、さまざまな社会経験を教育現場に活用できるケースも無数にあるのは間違いありません。

県外からの生徒さんはいる?

ーーここからは、生徒さんや卒業生についてお聞きします。県外からの生徒さんはいらっしゃいますか。

松本氏:
毎年、何名かいますね。遠いところだと東京や千葉から来ていて、寮に住んでいます。

岡山県内でも、2時間かけて通学している生徒もいますよ。

英語科の取り組みはユニークなので、遠くからでも通う価値があると思っていただいているのでしょう。

受験生へのアドバイスは?

ーー受験生へのアドバイスはありますか。

松本氏:
英語科で何をしたいのか、どうしてそれをしたいのか、自分なりにしっかり考えてほしいと思います。

何となく「留学したほうがよさそう」といった理由で入ってくると、留学もつらくなりますから。

卒業生の進路は?

ーー社会に出てから、どんな分野で活躍される卒業生の方が多いですか。

松本氏:
もう、本当にさまざまです。今はどの分野でも英語が必要ですからね。

国際弁護士、CA、パイロットもいれば、大手企業やスタートアップで勤めている人、さらに起業した人もいます。

多様性が1つの特徴かなと思います。

受験生・親御さんへのメッセージ

ーー最後に、受験生や親御さんにひとことお願いします。

松本氏:
岡山学芸館高校の英語科では、週に11時間も英語を勉強します。

でも、最初から英語が得意でないと入学できない、ということはありません。大切なのは英語が好きなことです。


また、英語科での3年間は、留学をはじめ、新しい経験や冒険の連続です。

とにかく英語が好きで、自分を変えたい人は、ぜひチャレンジしてみてください。

青木氏:
先日、はじめて生徒を留学に送り出し、1か月たったところでオンラインのクラス会を実施しました。

話を聞いていると、やはりふつうの高校ではできないタフな経験をしています。

そんな経験を通じて成長したい人は、いっしょにがんばりましょう!

ーーーありがとうございました!

まとめ

この記事では、インタビューを通して岡山学芸館高校の英語科を紹介しました。

ここで学べば英語力はもちろん、論理的思考力や人とのつながりを大切にする力など、今後の社会を生き抜くうえで欠かせない力が身につきそうです。

インタビュー後は、人生をやり直せるなら岡山学芸館高校の英語科で学びたい……と思ったほどでした。

さらに詳しい情報は、岡山学芸館高校・英語科の公式サイトをご覧ください。

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英語びより編集長。独学でTOEIC980点をマーク(2023年9月)。インドネシアで日本語学校を運営している。>>サトについて詳しくはこちら
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