日本の中でもっとも「アメリカっぽい都道府県」といえば、「沖縄」が浮かびませんか?
たとえば沖縄の那覇市の中心地「国際通り」周辺を歩いていると、実際にハンバーガーショップやアロハシャツのお店をよく見かけます。
そんなアメリカンなテイストを感じる沖縄ですが、なんと言語も英語とピッタリ一致しているところがあるんです!
今回は、沖縄に5年間住んでいた私が、英語と沖縄方言(うちなーぐち)の不思議な3つの共通点を紹介します。
目次
英語と沖縄方言(うちなーぐち)の不思議な3つの共通点
では、英語と沖縄方言の不思議な共通点を紹介します。
英語の「er」のように「長音」で人を表す
まず一つ目の共通点は、単語の語尾に「er(実際には『長音(ー)』)」を付けると「それをする人」を表すということです。
たとえば、英語で「歌手」は何と言うでしょうか? そう、「singer」ですね。
その成り立ちを考えてみると、「歌」という名詞「sing」の語尾に「er」を付けた成り立ちになっています。
例
sing(歌)+ er = singer(歌う人 = 歌手)
他にも「make」に「er」で「maker(メーカー) = 作る人・モノ」、「play」に「er」で「player(プレーヤー)= する人(選手)」という具合ですね。
沖縄方言「ハルサー」の例
では、沖縄方言の場合はどうでしょうか?
たとえば、沖縄では「農家の人」のことを「ハルサー」と呼びます。
この「ハルサー」は「畑」を表す「ハル」という言葉から来ているんですね。
つまり、発音の成り立ちとしては「ハル」に「サー」が語尾にくっ付いて出来ているので……そう、英語とまったく同じ作りなんです!
例
ハル(畑)+ サー = ハルサー(畑をする人=農家)
アルファベットにすると、こんなふうに見えますよね。
例
haru(畑)+ er = haruser
沖縄方言にある「人化」の例
他にも、こんなものがあります。
沖縄方言にある「人化」の例
……など、英語の「『er』が付くと人を表す」のような雰囲気の言葉がいろいろ存在します。
面白いですよね~。
私は「床屋」を表す「ダンパチャー」という言葉がお気に入りです!!
「行く」は「来る」!?
続いて2つ目の共通点は、「行く」を「来る」と表すという点です。
たとえば、誰かと電話していて「今からそちらに向かう」という意思を伝えたい場合。
日本語の標準語だと「今行くね~」のように言いますよね。
では、英語だと何と表すか知っていますか? 答えは「I'm coming.」です。
日本語では「行く」なので「go」を使いたいところですが、実は「come(来る)」で表すんですよね。
英語では自分が相手のところに行くときも「COME」を使う
これは、日本語と英語の「発想の違い」から来ています。
日本語は「自分視点」で発想するので、自分が相手に向かうなら「行く」という言葉になります。
一方、英語の場合「相手視点」で、「相手のところへ自分が近づく」という発想になり、「come(来る)」を使います。
なんだか、英語の方がちょっと「気遣いが出来る人」な感じですね。もっと詳しくはこちらの記事をご覧ください。
沖縄方言も「来る」を使う!
さて、じゃあ沖縄方言の場合はどうなるのでしょうか?
ズバリ沖縄では……「今来ようね~」です!
そう、英語と同じく「相手視点」な発想で「来る」を使うんですよ。
この言い方を知らないと、沖縄の人と電話した場合に「ん?誰が来るの?」って思ってしまい、会話が一瞬ストップしてしまうことがあるのでご注意を!
沖縄でも二人称は「you」!?
最後の3つ目の共通点は、「二人称の呼び方」です。
英語だと、一人称(自分を指す言い方)は「 I 」で、二人称(相手を指す言い方)は「you」ですよね。
では、沖縄の方言では何と表すでしょうか?
「二人称(親しい仲で使う)」は「やー」
「あなた」に当たる表現は「ウンジュ」と言うのですが、親しい仲で「おまえ」に当たるニュアンスの場合は「やー」と言います。
なんと英語の「you」とほぼ一緒の言い方なんです!
「やー」は語尾を上げめに発音するので、かなり「you」っぽく聞こえるんですよ。
ちなみに、僕は沖縄に移住して中高生と話しているときにはじめて「やー」の表現に出合いました。
まだその言葉を知らなかった僕が「さっきから言ってる、『やー』って誰のこと?」と聞くと、「やーは……やーだよ」と言われて不思議な空気になった思い出があります(笑)。
(補足:沖縄方言で「家」も「やー」と言います。年配世代は厳密に「いゃー(ぃやー)」と発音して「家」と「おまえ」を区別する傾向がありますが、青年世代より下はどちらも「やー」で発音しているようです)
沖縄方言(うちなーぐち)ってどんな言葉? 英語と共通点が多い理由は?
なぜか英語と共通点が多い沖縄方言。
一致するポイントが多いことには、何か理由があるのでしょうか?
その謎を解明するために、ここで「沖縄方言(うちなーぐち)」についてもう少し詳しく紹介しておきますね。
沖縄方言(うちなーぐち)って?
沖縄方言(Okinawa dialect)は沖縄地方で使われている言葉の総称で、「うちなーぐち」や「しまくとぅば」とも呼ばれています。
厳密には沖縄の中でも地方によって方言はかなり違うのですが、今記事では総称して「沖縄方言」と言わせてもらいますね。
文法・単語の系統としては日本語の標準語と同じ系統なので「日本の方言の一つ」と言う考え方もあれば、標準語の人とは普通に会話が成立しないので「別の言語」という考え方もあります。
ユネスコでは「別の言語」と認定されているようです!
沖縄方言には母音が3つしかない
日本語の標準語と比べてみると、「母音」の違いがあって面白いんですよ。
日本語だと「あ・い・う・え・お」ですよね?
それを沖縄方言に当てはめると「あ・い・う・い・う」になります。そう、3つの母音しか使わないんです!
たとえば「米」は「コメ(kome)」ではなく「クミ(kumi)」という発音になります。
私が暮らしていた「久米島」は別名「クミの島」とも呼ばれていたので、まさにこれに当たりますね。
英語と共通点がある理由は?
さて、そんな特徴がある沖縄方言ですが、果たして英語との共通点が多いことに理由はあるのでしょうか?
答えはズバリ……「謎」です。
はい、いまだに誰も「よくわからん」そうです(笑)
英語からの影響ではなく偶然
たしかにアメリカっぽい雰囲気が多い沖縄ですが、アメリカとの関わりは1945年(昭和20年)のアメリカ軍による沖縄占領からなので、まだ100年も経っていません。
沖縄方言「ウチナーグチ」はそれより遥か昔から存在しているので、言語的に「アメリカの影響を受けた」という可能性は無いと断言できるレベルです。
海外との付き合いで言えば、中国・朝鮮や東南アジアの方がずっと長い歴史がありますからね。
英語の沖縄方言の一致に関しては、現在のところ本当に「偶然の一致」というのが一般的な解釈です。
実際のところ、言語での偶然の一致はよくあることで、日本語で驚いたときに言う「あらまぁ」がマレーシア語(マレー語)でも「アラマー(alamak)」だったり、ハンガリー語で「塩っ気が足りない」を表す「シオタラン」だったり。
言語っておもしろいですねぇ!
まとめ
さて、英語と沖縄方言との不思議な共通点はいかがでしたでしょうか?
実際のところ、こういう共通点はまったく関係のない言語でもあるようですが、面白いですよね。
今回の内容をまとめるとこちらのような感じです。
まとめ