以前、「見る」という意味を持つ3つの動詞、「see」と「look」と「watch」の使い分けについて書きました。
今回は、同じ「見る」という意味のある「see」と「watch」との違いを、徹底的に比較してみます。
- 「see・look・watch」の違い
- 「see」と「watch」の違い今ココ
- 「meet」と「see」の違い
目次
「see」と「watch」の見方の違い
まず、基本的な「see」と「watch」の見方の違いをおさらいしましょう。ちょっと車に乗ることを想像してみてください。
今、車の運転席に乗りました。で、目の前を見るとフロントガラスが見えますよね。
エンジンをかけ、車を発進させました。運転していくと……
- 公園がありました。
- 電車の踏切が見えてきました。
- 手前で踏切の遮断機が下がり始めました。
- 車を停車させて待ちます。
- 電車がやってきました。
- 「あ、普通電車だ」
- 「乗客がけっこう多いなぁ」
- 「なるほど、この時間は高校生がたくさんいるからか」
- 電車が通過し、遮断機も上がり、車を発進させました。
さて、この動作ですが、「see」と「watch」に分けることができます。フロントガラスを通して「目に入ってくる」景色すべてが「see」にあたります。
「see」は意識せずとも、目に映るものを「見る」動作をいうのです。
「watch」も、フロントガラスを通して「見る」ことには変わりがありませんが、意識してあるものを見続けることをいいます。なので、この「見る」という動作は、「see」です。
「see」と「watch」にわけてみる
先ほどの例文を分解して細かく見てみました。
- 1公園がありました。
-
この例文では、車を運転をしながら公園を探していたわけではありません。運転していると、「公園が目に映った」んですね。
そこで、この公園を見た動作は、「see」です。
- 2電車の踏切が見えてきました。
-
そのあとに続く文章も同じです。最初から、踏切や遮断機を探していたわけではありません。
「あ、見えた」という感じですね。そもそも、運転している最中に「watch」は危険すぎます。
- 3〜4手前で踏切の遮断機が下がり始めました。車を停車させて待ちます。
-
遮断器が降り始めているを見る動作は「see」です。自然に目に入りましたから。
ここで車を停車させ、目の前を通り過ぎる電車を「観察」し始めます。
- 6〜8 「あ、普通電車だ 〜 この時間は高校生がたくさんいるからか」
- やってきた電車を一定時間見続けていますよね。なのでここでは「watch」を使います。
こんなふうに、「watch」はあるものに対して意識して継続的に見続けることを指します。
映画などを「見る」にも「see」を使う
さて、ここで2つの例文を見比べてみましょう。このような表現を聞いたことがありますか?
- I watched a movie last night.
- I saw a movie last night.
どちらも用法は間違っていないのですが……何か違和感はありませんか?
先ほどの用法でいうと、「watch」は、見たいもの(この場合は映画)を意識して見続ける見方でしたね。なので、1の「watch」は正しいと思う方は多いと思います。
でも、「see」について違和感のある方が多いのではないでしょうか?
映画は、じーっとスクリーンを意識して見続けるのに、なぜ「see」? と。
実は、「see」には、自然と目に映るものを「見る」という見方の用法のほかに、「(映画や演劇を)見る」という意味もあるのです。
そこで、日本語にすると、どちらも「私は、きのう映画を見ました」なのですが……。
両方とも用法が正しくて、同じ和訳なんて、ややこしいですよね。でも本当に完全に同じなのでしょうか?
「see」と「watch」の動作は、性質的に違う!?
さきほどの例文2つ、
- I watched a movie last night.
- I saw a movie last night.
この意味は完全に同じなのか、夫(アメリカ人)に聞いてみました。

ねえねえ、この2つの文の違いがわからないんだけど?

この2つは、動きが全然違うよ。「watch」の方が、より具体的な動作(specific action)なんだよ。それから、この「see」は、「見る」は「見る」でも、「(自然に)目に入ってきた」とは違う動作なんだ。

そんなこと言われても、全然わからない(笑)。

この「see」と「watch」では、動作の性質が全然違うんだ。

「動作の性質が違う」って? もっとわからなくなってきた。

タカコ、「I will go to the cinema and watch a movie tomorrow.」と「I will see a movie in the cinema tomorrow.」の違いはわかる?

まったく同じに聞こえるけど?

最初の文は、「映画館に行って、映画を見る」っていう具体的な動作だけど、あとの文は、「see」使って、「映画館に行って帰ってくるまで」の一連の動作をいってるんだよ。具体的な動作の描写じゃないってこと!

うーん、まだよくわからない……(笑)。

じゃあ、こういうのはどう? 「When I was watching a movie 〜(something happened)」とは言えるけど、「When I was seeing a movie 〜」は、言えない!

うーん、なんとなく……(「see」は、動作を継続的にできないのかな?)。じゃあ、「I'm seeing」のように、「seeing」は言えないってこと?

「映画とか演劇を見た」っていう場合は言わないね。ただ、別のことで「seeing」を使うこともあるよ。

あるんだ! (ややこしいな……)

それはね、意中の人に「今、誰かほかにいい人はいるの?」って聞くときに「Are you seeing anyone right now?」と言ったりするんだよ。

え? なに?! そんな風に使うんだ! おもしろいね!
「Are you seeing anyone right now?」についても気になると思うので、あとで書きますね。
「see」は具体性に欠ける「見る」という動作
さて、話は戻って、
この「see」は、「I'm seeing a movie」というように、動作の継続を表現することはできません。
なぜでしょう?
実は、この場合の「see」は、「何かを見る」という動作としては、具体性に欠けるからなんです。
具体性に欠ける=抽象的ということですね。
「具体的」な動作、「抽象的」な動作って?
「具体的」な動作、「抽象的」な動作がどういうものか、夫との会話にあった
- I will go to the cinema and watch a movie tomorrow.
- I will see a movie in the cinema tomorrow.
で検証します。
まず、1の和訳としては、「明日、私は映画館に行って映画を見るつもりです」です。
「私」が、「映画館に行って」「映画を見る」……という2つの具体的な動作がありますよね。
この2つの動作だけを描写しています。ところが、2は、どうでしょう?
I will see a movie in the cinema tomorrow.

夫が言うには、この場合の「see」は、映画館に行って、映画を見て、帰ってくるまでの一連の動作を表現しているのだそうです。
この文章を見ただけでは、そんな細かい動作がわかりませんね。
1の細かい(具体的な)動作の描写に比べて、2はずいぶんぼやけていると思いませんか? はっきりわかりませんよね?
この具体性に欠ける=「ぼやけた・はっきりしない」、つまり抽象的なのです。
「see」は話の骨組みを伝えるような感じ
例えば、
映画館に行って、チケットを買って、ポップコーンと飲み物を買って、映画を見て、帰ってくる。
……のような、具体的な動作の可能性があります。
でも、そんな一連の動作を「see」の一言ですませてしまっているのです。
具体的な動作を特定できないので、動作の継続を表現することはできないんですね。
また、文章としては、その具体的な動作の描写がなくても全然かまわないのです。
「see」を使って、骨組みを話すような感じで、具体的に話したければ、補足するように話を続けます。
I will see a movie in the cinema tomorrow.(明日、私は映画館で映画を見るつもりです)
I'm looking forward to going there because it's new.(その映画館は、できたばかりなので、行くのが楽しみです)
I will get a cup of soda and some popcorn before the movie starts.(映画が始まる前に、ジュースとポップコーンを買うつもりです)
というように。いかがですか?
夫がくれた2つの例文ですが、実は全然違う動作なのがわかると思います。
あえていうと、「see」を使った「I will see a movie in the cinema tomorrow.」は、日本語的には「明日、私は映画館で映画を見てくるつもりです」という感じですね。
「Are you seeing someone right now?」とは?
さて、最後に先ほどの「Are you seeing someone right now?」です。
この質問は、夫の言葉を使うと「more personal」なのだそうで、「いいな」と思っている人に「(友人から恋人へ)一歩進んだ関係」を望むときに、
今、誰かほかにいい人はいるの?
というような意味で聞いたりするそうです。
「Do you have a boyfriend (girlfriend)?」というよりも、「more direct(直球)」なのだとか。ひゃー(赤面)。
また、
They are seeing each other.(彼らはつきあっている)
という表現も有るようです。
「I saw my friend yesterday.」というと、「きのう友人と会った」という意味ですが、「be seeing」になると、ぐっと親密感が増すとは……何とも不思議です。
まとめ
いかがでしたか?
今回は、「see」と「watch」の動作の違いについて書きました。
日本語だと「見る」の一語で使い通せるので、ピンとこないかもしれませんが、状況を思い返してみると、動作の性質が全然違いました。
英語ではその部分を違う言葉で表現するんですね。
いやー、難しい。ややこしい。
「see」は抽象的な性質だからか、ほかにも用法が多岐にわたっています。それはまた別の記事で…。