YouTubeで人気の「ニック式英会話」というチャンネルをご存じですか?
そのYouTubeチャンネルで英語を教えているニック・ウィリアムソン(Nic Williamson)氏が著書を出版しました。
それが『A4一枚英語勉強法』です。
本屋さんでもベストセラーになっている本書ですが、実際に内容もいいのでしょうか?
今回は『A4一枚英語勉強法』を読んだ感想を英語勉強マニアのわたしがまとめます!
目次
著者のニック・ウィリアムソン氏について
本書『A4一枚英語勉強法』の著者は、ニック・ウィリアムソン氏(以下、「ニック氏」)です。
ニック氏はオーストラリア生まれで、現在は日本で活躍中。
「ニック式英会話」という英会話学校で講師を務めるかたわら、YouTubeでも英語学習に関する情報発信をしています。
YouTubeのチャンネル登録者数は、なんと40万人以上もいるんですよ!
なぜこんなに人気があるのでしょうか。
理由はいろいろありそうですが、日本語で分かりやすく説明していることが大きいと思います。
ニック氏の次のYouTube動画を見てみてください。
マクドナルドのCMでおなじみの「I'm loving it.」をとっかかりにして、「現在形」と「現在進行形」についてわかりやすく説明してくれています(参考: マクドナルドの発音について)。
それにしても、日本語、めちゃくちゃうまいですよね!
わたしは日本語教師としての経験が10年以上あるのですが、今まで関わってきた学生の中で、ここまで日本語を自在に操れるのはごくわずかです。
ニック氏は日本語学習に成功したと言えますね。
そんなご自身の経験を踏まえ、20年以上にわたって日本人に英語を教える中で、効率のいい英語の学習方法を生み出しました。
その方法が、本書のタイトルにもなっている「A4一枚英語勉強法」です。
本書で紹介されている「A4一枚英語勉強法」とは?
では、「A4一枚英語勉強法」とは、どんな方法なのでしょうか。
ひとことで言うと、「テンプレートで英語の文を作る」学習方法です。
「テンプレート」は、「決まった形」のことですね。
その「形」をおさえれば、あとは単語を入れ替えるだけで文が作れるというわけです。
しかも、この「形」がとことんシンプルに作られているので、「形」を覚えるのに一苦労、なんてこともないんですよ!
ちなみになぜ「A4一枚英語勉強法」という名前なのかと言うと、その「テンプレート」がA4サイズにまとまっているからです。
テンプレートはどんなもの?
ここまで「テンプレート」と何度も書いてきました。
その「テンプレート」がどんなものか、ニック氏の動画の中で見られます。
上の動画を再生すると、背景にピンクや水色のチャートのようなものが見えますね。これが本書にある「テンプレート」です。
詳しいことは本書に譲りますが、このテンプレートを使うことで、いろいろな文を作ることができるんですよ。
どんな文が作れるの?
では、どんな文が作れるのか見てみましょう。
テンプレートで作れる文(シンプルな文)
まずは、シンプルな文をご紹介します。
テンプレートで作れる文1
- いつも5時に帰っている
- 今、帰り道
- 今夜は帰らない
日本語を見て、パッと英語にできましたか?
この日本語を英語にするプロセスは、次のとおりです。
Q.「いつも5時に帰っている」は?
時制は?-----普段
肯定?否定?疑問?-----肯定
だから英文は?----- Ì go home at 5.
ニック・ウィリアムソン著『A4一枚英語勉強法』(2021年 SBクリエイティブ)より引用しました。
こんなふうに、「時制」や「肯定か否定か」などを考えて文を作るわけですね。
あと2つ、例を見てみましょう。
Q.「今、帰り道」は?
時制は?-----今
肯定?否定?疑問?-----肯定
だから英文は?-----I'm going home.
Q.「今夜は帰らない」は?
時制は?-----未来
肯定?否定?疑問?-----否定
だから英文は?-----I'm not going to go home.
ニック・ウィリアムソン著『A4一枚英語勉強法』(2021年 SBクリエイティブ)より引用しました。
……こんな感じで、いろんなパターンで練習していくんですね。
テンプレートで作れる文(複雑な文)
先ほどの例はシンプルな文でした。
でも、テンプレートを使いこなせるようになると、次のような日本語の文を英語にすることもできます。
テンプレートで作れる文2
- 彼が職に就いてうれしい
- コンタクトをつけっぱなしで寝た
- 彼は酔っ払って帰ってきた
- 目が覚めたら、犬がベッドの上で寝ていた
- テレビを観ながら料理をしていたら指を切っちゃった
これは例の一部に過ぎませんが、「なかなか複雑なことも言えるなあ」と思ったのではないでしょうか。
効果はあるの?
「A4一枚英語勉強法」のように、決まった形があって、単語を入れ替える練習を「パターン・プラクティス」と言います。
外国人への日本語教育でも頻繁に使われている練習方法です!
パターン・プラクティスのメリット
なんとなく効果がありそうに思えますが、実際にはどうなのでしょうか。
その効果について、次のように書いてありました(太字はサトによる)。
パターン・プラクティスは反復を中心とする機械的な練習であるがゆえ、「単調」、「つまらない」、「記憶に残りにくい」といった批判の声が聞かれるが、その一方で、「知的緊張感による英文把握力の向上」(齋藤,2015)といった長所が認められることから、「言語活動への導入法」(谷口,2004)と位置づけられており、英語使用への不安感を緩和するうえで、効果的な明示的指導法のひとつとみなされている。
井上聡「技能統合型の授業におけるパターン・プラクティスの効果 -習熟度と動機づけの観点から-」(2017年)より引用しました。
英語を使うことへの不安をやわらげる効果があるということですね!
「英語がニガテでどうしようもない」と思っている場合に、特に効果的ということでもあります。
しかも、この「A4一枚英語勉強法」はただのパターン・プラクティスではなく、決まった形をA4一枚にまとめてあります。
極限にまでシンプルにしたパターン・プラクティスとでも呼べるでしょう。
試して見る価値、あると思いませんか?
パターン・プラクティスの欠点を補う方法
ところで、先ほどの研究に、パターン・プラクティスは「単調」で「つまらない」ということが書いてありました。
この問題は、自分に関係のある文、実際に使いそうな文を作ることで対処しましょう。
劇的におもしろくなるわけではありませんが、単調でつまらない練習が少しはマシになるはずです。
わたしも日本語の授業でパターン・プラクティスをするときは、できるだけ学生自身のことを話してもらえるように工夫しています。
まとめ
この記事では、『A4一枚英語勉強法』という本をご紹介しました。
まずは形をおさえて、あとはひたすら単語を入れ替える。
この練習方法自体は新しいものではないのですが、本書では「形」がこの上なくシンプルになっています。
英語がニガテで、今まで何度も挫折したという経験をお持ちなら、ぜひ一度手に取ってみてくださいね!
英語の勉強にオススメの書籍はほかにもいろいろあります。
次の記事にわかりやすくまとめたので、ぜひご参考に!!