アメリカにいると、テレビのニュースで「homicide(殺人)」という言葉をよく耳にします。
この単語にある「cide」には「切る」という英語の語源の意味があります。
そこから「殺す」という意味の単語のパーツとして使われるんです。
今回は、「cide」がつく単語をいくつか紹介しますね。
単語の成り立ち、語源から覚えると、英単語をマスターしやすくなりますよ!
目次
「殺人」という意味で使われる「cide」
まずは、「殺人」という意味の言葉で使われる語源「cide」を見ていきましょう。
怖い言葉ばかり出てきますが……。
homicide(殺人)
冒頭で紹介した「homicide」は、「殺人」を指す言葉です(参考: 「殺人」を表す英単語)。
この言葉を分解すると次のようになります。
homo+cide
homoicide
人間を切る
殺人
現代人類のことを「Homo sapiens(ホモサピエンス)」と言いますが、その「homo」と同じですね。
そして「cide」は、「切る」という意味を持つ接尾辞です。
「切る」ということは「殺す」ことにつながるため、「殺す」という意味を持つようになりました。
suicide(自殺)
「suicide」ですが、これは「自殺」です。
語源はラテン語で、「one's own(自分自身)」という意味の言葉に「-cide(殺し)」がくっついています。
sui+cide
suicide
自分を切る
自殺
よって「suicide」は、「自分を殺すこと」から「自殺」を意味します。
カタカナで「スーサイド」と書かれることもありますが、英語の発音では [ suːəsaɪd ](イギリスでは [ suːɪsaɪd ] )です。
アメリカでは「スーアサイド」に近い発音ですね。
femicide(フェミサイド)
比較的新しい言葉が「femicide(ファミサイド)」です。分解すると次のようになります。
femi+cide
femicide
女性を切る
フェミサイド(女性を標的にした殺人)
定義としては、主に男性による女性嫌悪が引き金となった女性殺人のことです。犯人が女性の場合もあります。
ときどき「無差別殺人」と報道される事件の中には「女性だけ」を狙ったものがありますよね?
そういった事件は性別にかかわらず「無差別」に起こしたのではなく、意志を持って女性を狙っているため「フェミサイド」に該当します。
この「フェミサイド」という恐ろしい言葉は、まだ日本語に定着していませんが、事件としてはよく見かけます。怖いです……。
infanticide(幼児殺し)
そして、「infanticide(幼児殺し)」です。
infant+cide
infanticide
幼児を切る
幼児殺し
「infant」という言葉は日本ではほぼ見かけませんが、アメリカでは「乳児」や「幼児」を指す一般的な言葉です。
「infanticide(幼児殺し)」は、日本でもときどきニュースになっていますよね。
いろんな動機がありますが、生まれて間もない赤ちゃんが亡くなっている悲しい事件が。
私にもまだ幼い娘がいるので、そんなニュースを聞くと、特に心が痛みます。
genocide(大量虐殺)
そして、日本語にもなっている「genocide(ジェノサイド)」です。
geno+cide
genocide
人種を切る
ジェノサイド
「geno」は「genom(ゲノム: 遺伝子情報)」の語源でもありますね。
ジェノサイドとは「特定の民族、人種の根絶を目的にした大量虐殺」のことを意味します。
ヨーロッパ在住ユダヤ人を抹殺しようとしたナチス。そのナチスがやった大量虐殺を指すために作られた言葉でもあります。
matricide(母親殺し)
どうやら「matricide(母親殺し)」という単語があるそうです。
mater+cide
materricide
母親を切る
母親殺し
当メディアのライターはつさんから聞いたのですが、養蜂をしている人の間では普通に出てくる単語だそうです。
女王蜂が卵を産まなくなると、働き蜂(娘たち)が、新しい女王蜂を作って古い女王蜂を殺すか巣から追い出すんですが、それを「matricide」という単語で言いますよ。
ちなみに、家族への殺人にはそれぞれ専門用語があるようですね。どれも怖い言葉だし、一生使わないような言葉だらけですが箇条書きで紹介します。
patricide | 父殺し |
---|---|
parricide | 親殺し |
fratricide | 兄弟殺し |
sororicide | 姉妹殺し |
regicide | 王国殺し |
ほかに「cide」がつく単語
さて、ほかにも「-cide」の形を持つ単語がいくつかあります。
「cide」のつく単語
では1つ1つ見ていきましょう。
pesticide(害虫・害獣駆除剤)
まず紹介するのは「pesticide」です。
「pesticide」は、害虫・害獣などを退治する殺虫剤や駆除剤を指します。
pest+cide
pesticide
害虫・害獣を殺す
殺虫剤・駆除剤
「pest」は害虫や害獣のことで、疫病の「ペスト」と同じ語源ですね。
たとえば、日本でも家をシロアリに食われたりしますが、そんなときに使う殺虫剤を「pesticide」といいます。
ほかにも害獣である「rats(害獣に多いクマネズミ)」などを駆除する駆除剤も「pesticide」です。
insecticide(殺虫剤)
先述した「pesticide」が害獣も含むのに対し、虫だけに限定すると「insecticide(殺虫剤)」になります。
insect+cide
insecticide
虫を殺す
殺虫剤
「昆虫」を意味する「insect」に「-cide」がくっついているので、「殺虫剤(防虫剤)」の意味です。
ほとんどの人から嫌われている、ゴキブリに使うスプレーもそうですね。
herbicide(除草剤)
「herbicide」は、「除草剤」を指します。
herb+cide
herbicide
草を殺す
除草剤
「herb」は、バジルやローズマリー、ミントなどを指す「ハーブ」と同じです。
茎の部分が木質ではなく、花が咲いたあと根以外が枯れる植物や、根と区別して「草葉」のことも指します。
そんな「herb」+「cide(殺す)」なので、「除草剤」という言葉にも納得ですね。
ほかにもこんな単語がありますよ。
fungicide | 防カビ剤 |
---|---|
bactericide | 殺菌剤: バクテリア |
germicide | 殺菌剤 |
sporicide | 殺胞子剤 |
virucide | 殺ウイルス剤 |
decide(決める)
最後に意外な単語を紹介しましょう。
それは「decide(決める)」です。
学校でも習う基本単語の1つですが、次のような構造になっています。
de+cide
decide
雑念を切り離す
決める
「de」には「離れて」という意味です。次のイメージで覚えましょう。
「雑念を切り離す」という意味から、「決心する・決める」というイメージで覚えると覚えやすいですよね。
まとめ
「殺人」や「自殺」など、暗い言葉が多かったので書いていて少しどんよりした気分になってしまいました……。
語尾に「cide」がつく単語を見たときは「殺し」に関係があるということを覚えておいてください。
言葉を1つ1つおぼえるのは大変ですが、語源や構造が同じだと、関連付けられておぼえやすいですね。
一度聞いたら忘れない、「むかで」と「かかし」を指す英単語の記事も合わせてどうぞ。
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