在米11年目になりますが、英語のことは日々勉強です。
英語の初心者のころ、誰かにお願いするときは「〜 please」と言えばいいと習いますよね?
その延長として、命令形に「please」をつける表現もありますが、これは失礼になることもあります。
本記事では、アメリカに来た当初に学んだ「命令形はpleaseをつけても命令である」ということについて紹介します。
目次
「Be quiet, please」と言われた夫の体験
アメリカに住み始めた当初、10年ほど前のことです。
娘が生まれる前、私は夫と義母といっしょに日本に里帰りしました。
その日本に向かう飛行機の中で、夫は義母と話す声がだんだん大きくなっていました。
夫は話に力が入ってくると、少し声が大きくなってしまう人です。
私は、それに気づいていたのですが、少し様子を見ていました。すると、夫の後ろに座っていた20~30代の日本人男性二人組から、いきなり次のように言われたのです。
Be quiet, please.
(静かにしなさい)
夫は「Oh, sorry」と言ったあと、夫と義母は、その後日本に着くまでの数時間、ひとことも話しませんでした。
私が「命令形+please」に感じた違和感
夫が「Be quiet, please」と言われたとき、私にも違和感がありました。
「Be quiet」という表現は、中学校で命令形を習ったときに出てきますよね?
「静かにしろ」という意味ですね。
「Be quiet」に「please」がついていたので、少し丁寧なニュアンスにはなっているでしょう。
でも、いくら「please」がついていても、飛行機で乗り合わせた他人に、命令表現で言うのは、ちょっと失礼な気がしたのです。
「Be quiet」は「しゃべらないで」と禁止命令を出しているように感じられました。
夫に「命令形+please」について確認
実はこの事件の当初はこの話題に触れなかったのですが、2年間モヤモヤした後に、夫に「命令形+please」について聞いてみました。
覚えているかどうかわからないけど……
……と切り出したのですが、夫はそのときのことを鮮明に覚えていました(笑)。
たぶん、英語をあまり知らない人だったんだと思うけど、あの言い方はちょっとね……。
本当は文句を言いたいくらい、腹が立っていたようでした。
そもそも、夫の感覚では、他人にはあまり注意しないのだそうです。
ただ、「あまりに長時間うるさいとか、子どもを寝かせたい、とかなら言うかも」とは言ってますが。
なんで注意しないの?
だって、相手がどんな人かわからないじゃない? 注意したことでトラブルに巻き込まれたくないからね。
No one is perfect(完璧な人はいない)
アメリカ人は「right(権利)」にとても敏感です。
そのため、公共の場では誰もが等しく、誰もが肩身の狭い思いをせずにその場にいる権利があって、みんながそれを認め合っています。
そのときの声は少し大きかったかもしれないけど、短時間だったし、誰にも危害を加えていないよね?
飛行機の中は普段と違う精神状態で、たまたま声が大きくなっているのかもしれないよね。
もし、自分がそんな人の横にいても、注意なんかしないよ。
そして「No one is perfect(完璧な人はいない)」というフレーズもよく聞きます。
異常に興奮した人や、お酒に酔っている人、自分の身の危険を感じる場合は別ですが、「ちょっとしたこと」は大目に見ようという感覚です。
まとめると、日本的、アメリカ的な考え方は次のようになりそうですね。
日本的 | いかに周りの人に気をつかい、迷惑をかけないようにするか |
---|---|
アメリカ的 | いろんな人がいる公共の場で、いかにその空間を共有するか |
アメリカでは、公共の場で泣いてしまう赤ちゃんにすごく寛大なのも、もしかしたら関係があるかもしれません。
性別や年齢に関係なく「気にしないで」「赤ちゃんは泣くのが仕事」などと言ってもらえることが多いです。
他人に命令形を使うのは失礼
「Be quiet」の表現に戻りますが、夫はこう言っています。
「Be quiet」は「command(命令)」でしょ? さすがにありえないよ。
「command」? コマンド……そういえば、昔、テレビゲームで見たような。「指示」とか「命令」ということですね。
やはり、「please」を使っていたとしても、他人に命令形を使うのは、かなり失礼だったようです。
そういえば、日本語の命令形「静かにしろ」を少し丁寧にした「静かにしなさい」はぜんぜん丁寧じゃないですよね?
上司に「お返事を明日までに送りなさい」と言ったら間違いなくしかられます(笑)。
そのニュアンスと近いのかもしれません。
とにかく「please」をつけても、お願いするときに命令形は使わないようにしましょう!
お願いするときは「Could you please〜?」
では、「please+命令形」ではなく、どういう表現をつかえばいいのでしょうか?
一番有名なのは「Could (Can) you please 〜?」でしょう。
Excuse me, could you please talk a little quiet ?
(すみませんが、少し小さい声で話していただけませんか?)
可能表現で使う「could(can)」を使っているだけあって、「……していただくことは可能ですか?」というような感じで、命令ではありません。
「could」を「can」にするとカジュアルになりますよ(参考:助動詞が過去形になると「丁寧」になる)。
ちなみに「please」は文末にもっていくこともできますよ。
Could you turn it down please ?
(すこし静かにしていただけますか?)
ちなみに「turn down」で「静かにする(ボリュームを落とす)」という意味です。
まとめ
英語表現を誤ると、他人にかなり失礼な言い方になってしまうという例を体験からご紹介しました。
「pleaseをつけたら丁寧」だと思っていた場合は「please+命令形」はかなり失礼になることがあると知っておいてくださいね。
「静かに!」というときの「シー」について以前書いたものがあります。こちらもぜひ。