絵本の中にはアメリカをはじめとする英語圏の絵本が和訳されたものも多いです。
その中でも、うちの娘が気に入っていた絵本が『はらぺこあおむし』です。
今回は『はらぺこあおむし』の日本語版と、英語版『THE VERY HUNGRY CATERPILLAR』の違いについて紹介しますね。
目次
絵本『はらぺこあおむし』とは?
『はらぺこあおむし』は、アメリカの絵本作家エリック・カール氏の絵本です。
この本はエリック・カール氏が書いたものなので、英語版がオリジナルで、日本語版が翻訳されたものです。
エリック・カールの絵本は有名なので、子ども向けの本をよくご存じなら、知らない人はいないほどでしょう。
『はらぺこあおむし』のほかにも、何冊も有名な本があります。
アメリカでも子ども向けの本といえば、エリック・カールか、ドクター・スース(Dr. Suess)……というぐらいの知名度です。
「はらぺこあおむし」のストーリーを簡単に紹介すると、こんな感じになります。
ストーリーの要約
生まれたばかりのあおむしが、おなかをすかせて食べ物を探して回り、いろんなものを食べ、最後には、さなぎを経て蝶になる
カラフルな絵もかわいいし、食べ物をどんどん食べていく様子がおもしろいです。
『はらぺこあおむし』の英語版・日本語版の違い
では、『はらぺこあおむし』の英語版・日本語版の違いをまとめます。
結論から書いてしまいますが、英語版を読んでみて、「日本語版は、なんと優しい言葉で訳されているんだろう」と思いました。
実は英語版にちょっとがっかりしてしまったのです。逆に言うと、日本語への翻訳がすばらしいということになるのですが。
私の英語の読解力が薄ぺんぺらなのかな? と思ったりしますが、使っている言葉は、日本語版の方が優しく、言葉の表現に幅がある気がするのです。
英語版と日本語版はタイトルが違う
『はらぺこあおむし』の原題は、『THE VERY HUNGRY CATERPILLAR』といいます。
直訳すると、「とてもお腹のすいたいもむし」ですね。ちなみに「いもむし」と「あおむし」の違いですが、緑色系のいもむしのことを「青虫(あおむし)」と呼びます。
「いもむし」よりも、「あおむし」の方が、音声的にも表現的にも親しみがわきやすい気がします。
そして、「はらぺこあおむし」という和訳ですが、忠実に訳されていますよね!
とくに「はらぺこ」という言葉を使うあたりが、なんだかちょっとほっこりします。
翻訳されたタイトルが「おなかをすかせたあおむし」だと全くイメージが違っていた気がしますね。
英語版はお月様がしゃべらない
そして、ストーリーなのですが、冒頭からびっくりしました。
なんと、英語版では、お月様はしゃべりません。
英語版と日本語版を見比べてみましょう。
- 英語版
- In the light of the moon a little egg lay on a leaf.
(訳: 月明かりの中、はっぱに小さなたまごがあります) - 日本語版
- 「おや、はっぱの うえに ちっちゃな たまご」
おつきさまが、そらからみて いいました。
どうですか?
実は、私はこの書き出しのお月様の言葉で、この本に引き込まれたんです。
絵本のこのページは、葉っぱの上に卵がある様子と、お月様が描かれているのですが、お月様には顔があり、卵を見ているような感じなのです。
それを利用してか、日本語版ではお月様がしゃべります。
なんだか、あおむしを見守っているような感じさえしますね。
ちなみに、月を「おつきさま」、あとから出てくる太陽を「おひさま」と呼んでいますが、こんな言葉を使うと、ファンタジーのにおいが出ますね。
日本語版には「やわらかい表現」が多い
さらに、「a little egg」もただ「小さな」という言葉ではなく、「ちっちゃな」という言葉を使う小技も効いています。
こういう言葉がこの本ではたくさん使われています。
ほかにも、「tiny=とても小さい」を「ちっぽけな」と表現したり、あおむしの食べた物を「○○をひとつ(ふたつ / みっつ)たべました」と表現したり。
「ひとつ(ふたつ / みっつ)」は、1個(2個 / 3個)よりもやわらかい響きです。
ちなみに英語版では、「He ate through one (two / three) ○○」
成長して太ったあおむしを「ふとっちょ」と表現しているのも優しい響きです。
英語版で「太った」は、「fat」を使っています。
日本語版のオノマトペ「ぺっこぺこ」がしっくりくる
『はらぺこあおむし』の中でも私が特に気に入っているのが「ぺっこぺこ」という言葉です(文法では間投詞に分類される)。
「中身が詰まっていない状態」に使う言葉で、おなかがとてもすいている時によく使いますね。
「ぺこぺこ」よりも、もっとおなかがすいているような語感です。
子ども向けの本なので、言葉の響きも大事ですね。
あおむしは、生まれてからいろんな物を食べていくのですが、食べても食べてもおなかはいっぱいにならず、「ぺっこぺこ」なのです。
日本語版
まだ おなかは ぺっこぺこ
やっぱり おなかは ぺっこぺこ
それでも おなかは ぺっこぺこ
まだまだ おなかは ぺっこぺこ
※それぞれの表現の間に、あおむしはどんどん食べ物を食べていっています(量も増えていきます)
「まだ」とか「やっぱり」とかの言葉の効果も手伝って、どんなに食べてもまだおなかがすいている様子がよくわかります。
これが英語版だと、「But he is still hungry(でもあおむしはまだお腹が空いています)」の表現を何度も使うだけなのです。
もちろん、あえて同じ言葉を繰り返しことでリズムがあっていいですけどね。
「でも、まだおなかがすいています」とか「まだおなかがいっぱいになりません」とか? なんだかあっさりしているように聞こえませんか?
アメリカの子どもたちは、この英語版を読んで、あおむしのおなかがどれくらいすいているのか、わくわくしながら想像できるのかな? と思いました。
日本語版の方が「擬人化」されている
とうとう食べすぎて、あおむしはおなかが痛くなります。
- 英語版
- The night he had a stomachache !
(訳: その夜、あおむしはおなかがいたくなりました)) - 日本語版
- そのばん あおむしは、おなかが いたくて なきました。
う~ん、なんだかやっぱりあっさりしています。
ここまで書いて(やっと)わかったのですが、日本語版の方が、登場人物を人間のように表現しているんですね。
擬人化というんでしょうか。
お月様がしゃべったり、あおむしが泣いたり。なので、英語版は、淡々と話が進んでいくように聞こえるんでしょうね。
まとめ
日本でもとても有名な『はらぺこあおむし』、私の場合は日本語から入って、今回初めて英語版と出合ったのですが、日本語版の方がやっぱり好きです。
日本語版の『はらぺこあおむし』は、もりひさし氏がされていますが、大好きにさせてくれてありがとうと、お礼が言いたいくらいです。
こちらの絵本だと日本語と英語の両方が書いてあるそうです。ぜひその違いを楽しんでみてください。
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