今回は、少し文化的なことに触れたいと思います。
それは日本人は「謝る」という行動を重んじるということと、アメリカ人は「どう改善するか?」を重要視するという話です。
目次
日本人は「謝る」という動作を重んじる
日本には「謝る」という動作をとても大切にする文化があります。
たとえば、けんかをしたら謝って仲直りをしますよね。
会社の不祥事があれば、重役が謝罪会見をしているところをニュースで見たことがあるはず。
あの謝罪会見、見ていて「みっともない」と思う人もいる半面、実際は謝ることに重きを置いている人が多いのも事実です。
もし、何か嫌なことをされたら、
なにはともあれ「謝ってほしい」と思いませんか?
不祥事のあった会社が、謝罪せずに解決策に乗り出そうとしたら「まずは謝罪することが大事」と思う人が多いのです。
「謝るまでは先に進めない」くらいの考え方ですね。
我々日本人にとって「謝ること」「非を認めること」というのは、とても大切なのでしょう。
アメリカでは、会社の大きな不祥事に代表者が謝罪文を発表することはあります。
でも、日本のように、カメラの前で謝罪するというような光景は見たことがありません。
アメリカの「謝罪しない会見」
先日のユナイテッド航空で起こった、医師を強制的に降機させたという出来事もそうですね。
ユナイテッド航空の不手際で飛行機が定員オーバーになってしまい、抽選で選ばれた4名が降りることになりました。
そのうちの1名(医師)が、仕事を理由に拒み続けたため、駆けつけた警官に無理やり飛行機から降ろされました。
その医師は鼻の骨を骨折し、前歯を2本折るけがを負ったという……世界中から非難を浴びた事件です。
その後、2017年4月27日にユナイテッド航空とその医師との和解が成立しましたが、ユナイテッド航空のCEOは、文書でのコメントを発表しているだけです。
日本の会社なら、会社の対応のまずさをカメラの前で謝罪し、経緯を話していたはず。
顧客や消費者に何か被害が及んだ場合、アメリカだと、謝罪を飛び越え、さっさと示談交渉していたりしますから、ユナイテッド航空の対応が異例だったわけでもありません。
カメラの前で、公に謝罪するかしないかは、日本ほど大きな問題ではないんですね。
うちの娘が謝られなかった体験
また、小さなところではこんなこともありました。
アメリカでは、お店で買った風船がしぼんできたら、お店で再び空気を入れてくれるサービスがあります。
先日、娘の風船をそのお店に持ち込んだところ、店員さんが空気を入れるときに失敗して風船が割れてしまったんです。
ところが、店員さんは一言も謝らず、こんなひと言。
代わりの風船をあげるからいいよね? ピンク色でいいよね? ね、ね??
と、言葉を立て続けに。わたしは唖然としながら
……この人、なんで謝らないの?!
……と思っていました。
うちの夫もまったく謝らない
こんなことばかり書いていたら、夫が「謝らない人」だということも思い出しました。
けんかをしても、夫が全然謝らないのです。
それどころか、さっさと改善策に話を進めたがるしまつ。
なので私は……
こ……この人は意地でも謝らない性格なのか!?
……と思っていたんですね。
アメリカでは謝るだけでは不十分
さて、アメリカ人が謝らないという事例を見てきました。
逆に日本だと謝罪の言葉だけで終わることが多くないですか?
「すみません」「ごめんなさい」と謝った時点で、それ以降不快な気分を引っ張らないことが多いです。
子どものころから「ごめんね」と言ってもらったら「もういいよ」と許すように教えられますよね?
相手が謝れば、よほど悪いこと以外は「許される」と暗黙のうちに期待している節もありますよね。
でも、アメリカでは「Sorry.」や「I'm sorry.」と言って謝るだけでは、実は不十分。
誰かに謝ることは「最初の一歩」ですが、それに続く段階(step)があるのです。
たとえば、次のような言葉が使われます。
How can I feel you better ?
(どうしたら、キミの気分が戻る?)
ほかにも、こちらもよく使われます。
What can I do for you ?
(ボクはどうすればいい?)
「I'm sorry.」と言うのも大事は大事なのですが、アメリカではそのあとの部分の方が圧倒的に重いです。
小さいことであれば「sorry」と言わずに、解決策や改善策を示す方が多いくらいかな。
「どうしたらその問題を解決できるか」がアメリカ流
前項で紹介した、ユナイテッド航空と私の風船の件では次のような歩み寄りが示されています。
歩み寄りの例
たぶん、ユナイテッド航空は医師に莫大な和解金を支払ったでしょう(解決策)。
また、あの出来事がきっかけで、オーバーブッキングで席を譲った人が受け取れる補償金の金額も大幅に変更されました(改善策)。
私の風船の件も、上から目線の言い方や態度はさておき、わかる気がします。
「代わりの風船がもらえるんだから、不満はないよね?」というような態度は嫌だけど。
なぜなら、割れた風船は謝ったところでもとには戻りません。
そこで、ほかに何で解決できるか考えたら、やはり「代わりの風船」が妥当なんですね。
何か嫌なことがあったときには、何か代償を求める。
アメリカが「訴訟大国」と言われるのも、この国の文化的な一面から来ている、とも言えそうです。
「sorry」は多用する言葉ではない
夫の話にまた戻りますが、夫には私がなぜ「謝ること」にひどくこだわるのか理解できないようです。
別の日に、こんなことを言われました。
タカコは何でもすぐに「sorry」って言うね。
実際のところ「sorry」は多用する言葉ではないようです。
本当に心が痛んだときだけ使う言葉なんですね。
考えてみれば、私は日本語の「悪いけど」の部分で、つい「sorry」を使ってしまったり、「sorry」を言うほどでもないことで使ってしまったりしていました。
「sorry」を使わなくていい場面でたくさん使っていたんです。
「sorry」が不要なときを意識する
たとえば、夫婦間やパートナー同士で「あ、ごめん」「ごめんごめん」と軽く言うことってありますよね。
その「ごめん」の代わりに「sorry」を使うと違和感があるようです。
「あ、ごめん、忘れてた!」と言うときは、ただ「Oh ! I forgot !」と言うだけでOK。
Oh ! I forgot !
(おお! 忘れてた!)
「ごめん、その本、取ってくれる?」と言うときも「Can you pass me that book ?」でじゅうぶん。
Can you pass me that book ?
(その本取ってくれる?)
ポイントとしては、何かお願いするときは「sorry」じゃなく「please」に言い換える!
これだけで英語でのコミュニケーションがうまくいくことが多いですよ。
夫にとっては私が「sorry」で終わらせるのが不満
さらに夫は、私が「sorry」と言うだけで終わることが不満のようです。
「sorry」って言うだけ!?
「sorry」のあとは、解決策や改善策があるはずなのに、それがないから同じことをまた繰り返す。そしてイライラ。
日本人では相手が先に謝ると「いやいや、私の方こそごめんなさい」と言うことがあります。
この感覚も日本人だけのようです。
「謝ったから、これでけんかは終わり」という流れにはなりません!
そもそも主張し合うことに慣れていない日本人は、言い争いを避ける傾向にありますし。
「もうこれ以上言い争いたくない」と思って、「I'm sorry.」と言っても、英語では何の意味もないです。
イライラ……(謝ってるのにいつまでケンカを続けたいの?!)
イライラ……(解決策を言わないでただ単に謝るだけ?!)
最初は、どうしてそれがうまくいかないのか、全然わかりませんでしたが、夫との出会いから10年ほど経って、やっと理解できたレベルです(笑)。
まとめ
今回は日本とアメリカの「謝る」ということに関する認識の違いをまとめました。
ずいぶん文化的に違うことがおわかりいただけたでしょうか?
これもどちらが正しいのでもなく、文化が違うというだけなんです。
この「謝る」に対する認識を知っているだけでもアメリカ人と接触するときに衝突が減るかもしれません。
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