TOEICのスコアは10点から990点までですが、600点がひとつの目安と考えられます。
たとえばIIBC(TOEICの運営団体)が実施した「英語活用実態調査2019」によると、「大学卒業時に最低限必要だと思うスコア(短大含む大学側の見解)」の平均は591点でした。
この記事では、TOEIC600点がどれぐらいのレベルなのかをはじめ、必要な英語力や勉強時間、おすすめの勉強方法やおすすめの本などを紹介します。
結論をざっくり言うと、TOEIC600点は日本の平均スコアより上で、大学卒業後に毎日2時間勉強すれば、1年で達成できるレベル。
多読・多聴をメインにしつつ公式本をうまく活用するのがおすすめです。
なお、この記事の「TOEIC」は、「TOEIC Listening & Reading」を指します。リスニングや文法、読解の問題を延々と解いていくやつですね。
目次
TOEIC600点はどれぐらいすごいの?
TOEIC600点をマークするのは、どれぐらいすごいのでしょうか。
結論から言うと、決してかんたんに取れるスコアではありません。
600点は、ちょうどアジアの平均スコアで、日本の平均スコア(561点)より上です。
また、日本の大学生の平均スコアを見ても、600点を超えるのは国公立大で英語専攻の場合のみ。
やはり、誰でも取れるわけではなさそうですね。
先ほども触れた次の2点について、詳しく見てみましょう。
TOEIC600点についての情報
TOEIC600点はアジアの平均スコア
TOEIC600点は偶然にも、ちょうどアジアの平均スコアです。
TOEICの公式サイトによると、2022年に日本とアジアで行われたTOEICの平均スコアは、次のとおりでした。
TOEIC L&R 2022 Report on Test Takers Worldwide
セクション 日本 アジア Listening 309点 331点 Reading 252点 269点 合計 561点 600点 日本とアジアの「TOEIC L&R」平均スコア(2022年)
600点を取れば、アジアレベルで、日本レベルより上になれるわけですね。
TOEIC600点は国公立大学・英語専攻の平均点ぐらい
IIBCが実施した「英語活用実態調査2019(大学・高校)」によると、国公立大学で英語を専攻している学生のTOEIC平均点は612点。
TOEICのスコアを専攻別に比較してみると、英語を専攻している生徒の得点がもっとも高かったです。
同調査をもとに得点の高い専攻のベスト5を抜き出したのが、次の表です。
専攻 | 平均スコア |
---|---|
語学・文学系(英語専攻) | 612点 |
国際関係学系 | 591点 |
語学・文学系(英語専攻以外) | 564点 |
医・薬学系 | 522点 |
法学系 | 502点 |
ほかの専攻だと600点を超えないんですね。6位以下はすべて400点台でしたし……。
日本において、TOEIC600点は英語をみっちり勉強する環境でやっとマークできるスコアだということです。
けっこうハードルが高いことがわかります。
ちなみに「英語活用実態調査2019(大学・高校)」によると、大学4年生(全体)のT平均スコアは国公立で526点、私立で518点でした。
【補足】「600点」は日本の平均?
ところで、「TOEIC600点」は日本の平均というデータもあります。
「TOEIC Program 2022年度 受験者数と平均スコア」 というデータによると、平均点は608点だとか。
先ほど紹介した2022年のデータでは、561点でした。
同じ「2022年」なのに、平均点に40点も差があるのはなぜ……?
……と思い、IIBC(TOEICを運営する団体)に問い合わせ。
平均点に違いがある要因として、次の2点を挙げていただきました。
平均点に違いがある要因
順に見ていきましょう。
計算方法が違うため
まず、計算方法に違いがありました。
平均点が低い方は「公開テスト」と「IPテスト」のどちらも合わせた平均点で、高い方は「公開テスト」だけの平均点だったとのこと。
「IPテスト」は、団体で申し込むTOEICです。
「IPテスト」だけの平均点は、「TOEIC Program 2022年度 受験者数と平均スコア」によると493点でした。
「公開テスト」に比べて、100点以上も低いんですね。
「公開テスト」と「IPテスト」の平均点が、「公開テスト」のみの平均点より下がるのも納得です。
期間が違うため
また、「2022年」と「2022年度」という期間の違いも影響しているんだとか。いちおう、次のとおりです。
期間の違い
まあ、こちらはそれほど大きな差になるとは思えませんが。
いずれにしても、この記事では、「561点」を日本の平均点として話を進めていきます。
母数が大きく、日本のTOEICの平均点としてはよりよいデータなので!
TOEIC600点を取るのに必要な英語力
TOEICで600点を取るのに必要な英語力は、どれぐらいのものでしょうか。
リスニングとリーティングがあるので、分けて見てみましょう。
TOEICを運営するIIBCは、リスニング・リーディングのスコアに基づいて、英語力のレベルを3〜4段階に分けています。次の表のとおりです。
レベル | リスニングのスコア | リーディングのスコア |
---|---|---|
レベル1 | 495~375 | 495~425 |
レベル2 | 370~275 | 420~325 |
レベル3 | 270~5 | 320~225 |
レベル4 | (なし) | 220~5 |
合計600点の内訳はいろいろあるのですが、ここではリスニング275点、リーディング325点の場合を見てみます。
リスニング275点・リーディング325点でちょうど600点ですし、両方とも上から2つ目の段階なので!
リスニングセクションで275点以上を取る人の英語力
まずは、リーディングセッションで275点以上を取る人の英語力を見てみましょう。
IIBCによると、リスニングセクションで275点以上を取る人は、英語力に次の長所と弱点があるとのことです(太字はサトによる)。
IIBC公式サイト
スコア Strength(長所) Weakness(弱点) 370~275 一般的に以下の長所が認められます。
(中略)
・短い会話において、簡単な、または中級レベルの語彙が使用されるときは、話の詳細が理解できる。
・長い聴解文において、情報が繰り返され、解答に必要な情報が話の最初か最後に提示されるときは、話の詳細が理解できる。
(後略)一般的に以下の弱点が認められます。
・短い会話において、構文が複雑なときや、難しい語彙が使われている場合は、話の詳細が理解できない。否定構文が使用されるときは、詳細が理解できないことが多い。
・長い聴解文において、広い範囲にわたって情報を関連付ける必要があるとき、もしくは情報が繰り返されないときは、話の詳細が理解できない。言い換えられた情報、または難しい文法的な構造はほとんど理解できない。
(後略)
太字だけ見ると、次のことが言えますね。
長所と短所まとめ
- 語彙は中級レベルなら対応できるが、「難しい語彙」があると厳しくなる
- 「難しい文法」も理解できない
- 長い会話は内容が繰り返されないと理解するのが難しい
ざっくり、中級レベルと言えるでしょう。
IIBC公式サイトには、長所・短所についてさらにいろいろ載っているので、興味があれば見てみてください。
リーティングセクションで325点以上を取る人の英語力
続いて、リーティングセクションで325点以上を取る人の英語力を見てみましょう。
同じくIIBCの公式サイトによると、リーティングセクションで325点以上を取る人の長所と弱点は次のとおりです(太字はサトによる)。
IIBC公式サイト
スコア Strength(長所) Weakness(弱点) 420~325 一般的に以下の長所が認められます。
(中略)
・中級レベルの語彙が理解できる。文脈中の難しい語彙、よく使用される単語の例外的な意味、慣用句的な使い方が理解できることもある。
・規則に基づいた文法構造が理解できる。また、難しく、複雑で、あまり使用されない文法的な構造が理解できる。一般的に以下の弱点が認められます。
(中略)
・難しい語彙、よく使用される単語の例外的な意味、または慣用句的な使い方が理解できないこともある。似たような意味で使われる複数の単語は、区別できないことが多い。
こちらも太字の部分をまとめました。
長所と短所まとめ
- 「難しい語彙」に対応できる場合もできない場合もある
- 「難しい文法」も理解できる
リーディングについては、中級と上級の間と言ったところですね。
リーティングセクションについても、IIBC公式サイトに長所・短所にが更にいろいろ書いてあるのでよろしければご覧ください。
TOEIC600点を取るのに必要な勉強時間
ではTOEICで600点を取るのに必要な勉強時間はどのくらいでしょうか?
だいたい2,800時間〜3,000時間です。
この勉強時間は、坂田 浩氏・福田 スティーブ氏による論文「日本人の英語学習時間について」にある数字から計算しました。
2,800時間〜3,000時間で「550点〜780点」に到達できる
正確に言うと、2,800時間〜3,000時間はTOEICで550点〜780点を取るのに必要な勉強時間です。
幅はありますが、範囲が550点からなので、600点に必要な時間と大きくは変わらないでしょう。
大学卒業後なら600時間〜800時間でOK
「3,000時間」と聞くと、次のように思ったかもしれませんね。
3,000時間も勉強しないといけないの?!
答えはイエスなのですが、3,000時間には大学までの勉強時間(2,200時間)も含みます。
内訳は、次の表のとおりです。
大学卒業後に英会話学校などで勉強する場合 | 大学卒業後に自習だけでがんばる場合 | |
---|---|---|
大学卒業までの勉強時間 | 2,200時間 | 2,200時間 |
大学卒業後の勉強時間 | 575時間 | 863時間 |
合計 | 2,775時間 | 3,063時間 |
大学卒業後、英会話学校などで勉強するか、自習だけでがんばるかで勉強時間に違いが出てきます。
大学を出たあと、600時間から800時間ぐらい勉強すればいいわけですね!
1日平均2時間勉強すれば、1年で700時間ぐらいになります。
通勤時間を活用したり、週末に勉強時間を長めにしたりすれば、なんとかなりそうだね!
TOEIC600点を目指すのにおすすめの勉強方法
TOEICで600点を目指すのにおすすめの勉強方法は、次のとおりです。
TOEIC600点を目指す勉強方法
おすすめ度の順に並べてみました。
この方法はTOEICで他のスコアを目指すのにも役立ちます!
TOEICで満点・800点を目指す勉強方法としても紹介しています。
順に掘り下げていきましょう。
多読・多聴をする
いちばんのおすすめは、多読・多聴です。
「多読」は、「だいたいわかるレベルの英語」をたくさん読む活動。
「多聴」も「だいたいわかるレベルの英語」をたくさん聴く活動です。
わたしは15年ぶりぐらいにTOEICを受けるので、多読・多聴を毎日しています。
先日、本番と同じ形式の問題に取り組んだところ、200問中192問が正解でした!
多読・多聴を真っ先におすすめする理由は次の2つです。
多読・多聴をおすすめする理由
少し補足しますね。
人間が外国語を習得するのに効果的
だいたいわかるレベルの外国語をたくさん読んだり聴いたりするのが大切なことは、「第二言語習得」という研究分野では常識です。
「第二言語習得」は、人間が第二言語(外国語など)を習得するプロセスなどを研究している分野ですね。
楽しくて自然に続けられる
多読・多聴は単純に楽しいので、「続けよう」と思わなくても続いてしまうのもうれしいポイントです。
わたしはTOEICに向け、英語の小説で多読・多聴を試しています。
そして、「ああ、今日も小説を読まないと(聴かないと)……」と思ったことは一度もありません。
続きが気になりすぎて、気づけば小説を手にしているレベルです。
ちょっとした中毒ですね……。
それぐらい楽しい活動であることは、間違いありません。
TOEICの問題を解く→弱点を参考書(単語集含む)でつぶす
多読・多聴で英語力を上げつつ、TOEICの問題にも取り組みましょう。
その際には、まずTOEICの問題をやってみて、わかった弱点を参考書でつぶしていくのがおすすめです。
TOEICで点を取るノウハウを少し学ぶ
余裕があれば、TOEICで点を取るノウハウも少し学びましょう。
これば補助的なものなので、最後に紹介しています。
ノウハウはインターネット上にあふれているので、探し出すと沼にハマってしまうおそれが……。
なので、本を1冊読むぐらいでいいでしょう。
たとえば『英語がニガテで高校時代に「E判定」だったボクが超有名大学へ進学しカリスマ英語講師になってTOEIC(R) L&Rテストで満点を89回もとった 超効率! 英語勉強法 』という本(タイトル長すぎ……)には、次のようなノウハウが満載です。
TOEICで点を取るノウハウ
- 各Partのパターンとは?
- リスニングで聞きとれる単語と聞き取れない単語の違いは?
- リーディングセクションで戦略的に捨てる問題パターンとは?
- リーディングセクションの攻略テクニックとは?
- リーディングセクションの時間配分は?
TOEIC600点を目指すのにおすすめの本
TOEICで600点を目指すのにおすすめの本は、次の2点です。
TOEIC600点を目指すのにおすすめの本
いずれも公式の本であることが最大の特徴。
市販の教材にもクオリティの高いものはもちろんあります。
でも、「中の人」が作った公式の本があるなら、使わない手はありません!
以下、おすすめの本をかんたんに紹介します。
『公式TOEIC® Listening & Reading 問題集』
まず、『公式TOEIC® Listening & Reading 問題集』です。
2023年10月発刊の最新版!
この本には、本番と同じ形式の問題が2回分収録されています。
さらに、正答数からだいたいのスコアを算出できるように鳴っているんですよ!
まあ、本当に「だいたい」ですけど……。
わたしの場合、次の結果が出ました。
正答数 | 換算スコア | |
---|---|---|
リスニング | 96問 | 475〜495 |
リーディング | 98問 | 460〜495 |
合計 | 194問 | 935〜990 |
合計スコアが935点〜990点と、かなり幅があります……。
TOEICのスコアは1問ずつ配点が決まっているわけではないので、仕方がないところですね。
それでも、公式クオリティの問題に取り組むことにはめちゃくちゃ価値があります!
『公式TOEIC® Listening & Reading 650+』
それから、『公式TOEIC® Listening & Reading 650+』です。
「600点」ではなく「650点」が目標の本ですが、公式本では「600点」にいちばん近いのでおすすめしています。
この本の構成は、次のとおり。
『公式TOEIC® Listening & Reading 650+』の構成
- パート別 出題の傾向
- 演習(262問)
- 本番と同じ形式の問題(200問)
出題の傾向がわかるほか、公式本では最多の問題数(462問)を誇ります。
600点を目指すなら、手元に置いておきたい1冊です。
個人的には「出題の傾向」についての公式の見解がものすごく気になる……。
よくある質問
ここで、よくある質問をまとめました。
まとめ
この記事では、TOEIC600点がどれぐらいのレベルなのかをはじめ、必要な英語力や勉強時間、おすすめの勉強方法やおすすめの本などを紹介しました。
TOEIC600点は日本の平均スコア(2022年)より上で、大学卒業後に毎日2時間勉強すれば、1年で達成できるレベルです。
多読・多聴をメインにしつつ公式本をうまく活用して、600点を目指しましょう!