英語の文法を勉強していると、必ず耳にするのが時制の一致という言葉です。
「過去形」や「現在形」のように「いつのことか?」を表すのが「時制」で、英文法にある「時制の一致」とは「文の中で時制をそろえる」というルールのことです。
今回は、時制の一致の基本的な使い方から例外まで、「時制の一致」について詳しく紹介しますね。
目次
英語の時制の一致とは?
はじめに、時制の一致とは何かをハッキリさせておきましょう。
時制の一致とは「従属節の動詞の時制は主節の動詞の時制に一致させる」というルールのことです。
……と言われても何のことやらですよね(笑)
主節・従属節について
まず、以下の例文をご覧ください。
I think (that) he is sick.
(私は)彼は病気だと思う
この文を分解すると、「私は〜だと思う」という文の「〜」の部分に「彼は病気だ」が入っている形です。
このような構造の文の場合、文全体の「メイン(骨格)」になるほうを主節、その中身になるほうを従属節と呼びます。
こちらの図で「主節」と「従属節」をご確認ください。
主節・従属節とは?
- 主節…… 文のメインになる部分
- 従属節…… 主節の中身になる部分
「主節」が過去形になると「従属節」も過去形に
では、ここで主節を過去の話にしてみましょう。
「私は〜だと思う」から「私は〜だと思った」に変えるということですね。
すると、例文は以下のようになるんですよ。
I thought (that) he was sick.
(私は)彼は病気だと思った
主節の動詞「think(思う)」が過去形の「thought(思った)」に変化しただけでなく、従属節の動詞「is」も過去形の「was」になりました!
これが時制の一致と呼ばれる英文法のルールです。
メインの動詞の時制が変わると、それにつられて「従属節(that節)」のほうの動詞も時制が変化するわけですね。
日本語にはない、英語独特のルールですよ!
ちなみに英語で時制の一致は「backshift of tenses」と言います。
意識するのは「メインが過去になったとき」! 時制の一致のやり方
「時制の一致」の意味がわかったところで、実際に試してみましょう。
時制の一致のコツ
英語の時制の一致を覚えるにはちょっとしたコツがあります。
ずばり以下のポイントを覚えておいてください。
時制の一致のコツ
動詞が過去形か過去完了形のときに起こる!
そう……時制の一致が起こるのは
「過去形」か「過去完了形」のときだけなのです。
これは言い換えると、メインの動詞が「現在形」「未来形」なら時制の一致は起こることはないとも言えます。
時制の一致の手順
では、「時制の一致」の手順を見ながら練習してみましょう。
以下の例文をご覧ください。
I know she is tired.
(彼女が眠いのは知っているよ)
この例文のメインの動詞を過去形にしてみましょう。
現在形の「know」を過去形の「knew」にするわけなので、従属節もつられて過去形になるということです。
時制の一致の例
I know she is tired.
I knew she is was tired.
I knew she was tired.
(彼女が眠いのは知っていたよ)
できましたか?
このようにメインの動詞が現在形から過去形になったら、文の意味上の中身のほうの時制も変えてください。
ちなみに、「眠い」は「sleepy」ではなく「tired」を使うのが普通です。
時制の一致が起こる例
では、さらに「時制の一致」なるいくつかのパターンを紹介します。
英文法では過去形・完了形がよく関わってきますよ。
主節と従属節の時制が同じ場合・違う場合、そして間接話法の場合を例文で紹介していきますね。
「主節」と「従属節」の時制が同じ場合
まず、主節と従属節の時制が同じ場合です。
You tell me that she is angry.
(彼女が怒っているとアンタがあたしに言う)
主節は「tell」で現在形、従属節も「is」で現在形。つまりどちらも同じ時制になっています。
先述したように、この例文のメインの動詞「tell(言う)」を過去形にすると以下のようになります。
You told me that she was angry.
(彼女が怒っているとアンタはあたしに言った)
どちらも過去形になりましたね。
もともとメインと中身がどちらも現在形だった場合、こうするだけでOKです。
そもそも同じ時制のことを言っていたなら、メインが過去になれば中身も過去にすれば大丈夫ですよ。
主節と従属節の時制が違う場合
では、メイン(主節)と中身(従属節)の時制が違う場合はどうでしょうか?
主節=現在形・従属節=過去形である文の「時制の一致」
たとえば次のような場合です。
I think he was sick.
(彼は病気だったとあたしは思う)
メインの動詞は現在形「think」ですが、中身の動詞である「was」は過去形になっています。
イラストにすると次のようなイメージですね。
つまり、メインと中身の時制が一致していませんよね。
この文の「think」を過去形にすると、以下のような時制の一致が起こりますよ。
I thought he had been sick.
(彼は病気だったとあたしは思った)
そう、中身である「従属節」が過去完了になるのです(「had been」はbe動詞の過去完了形)。
意味的には「私が思った」時点よりもさらに過去の時代に「彼は病気だった」ということですよ。
このように、そもそもメインより中身の時制が古い文のときは、中身のほうを過去完了形にしてやってください。
主節が現在形、従属節が過去形の場合の時制の一致
- 主節:現在形
過去形に変更 - 従属節:過去形
過去完了形に変更
主節=過去形・従属節=未来形である文の「時制の一致」
実は、中身である従属節の時制は「過去」だけでなく、「未来」の場合もありますよ。
たとえば次のような場合です。
I think he will get sick.
(彼は病気になるだろうと思う)
この文を過去形にする場合、未来を表す助動詞「will」を過去形の「would」にしてやってください。
つまり以下のようになりますよ。
I thought he would get sick.
(彼は病気になるだろうと思った)
これは「will」だけでなく、「can」や「may」などの助動詞でも同じです。
ただし「must」「should」「would」などはそのまま使ってください。これらは慣用的に「現在でも過去でもその形で使う」という助動詞ですので!
元の形 | 時制の一致後 |
---|---|
will | would |
can | could |
may | might |
must | must ※変化しない |
should | should ※変化しない |
would | would ※変化しない |
ought to | ought to ※変化しない |
used to | used to ※変化しない |
「ought to」や「used to」といった助動詞的な表現も形を変えずに使いますよ。
「直接話法」を「間接話法」にする場合
時制の一致は「話法」が変わるときにもよく起こります。
「直接話法」と「間接話法」とは?
話法とは「それを言った人のセリフをそのまま使うか・使わないか」の話です。
たとえば「『私はお腹がすいた』というセリフを彼女が言ったということ」を伝えたいときを例に2種類の話法を紹介しましょう。
- 直接話法
- その人のセリフをそのまま使う
【例文】She says “I’m hungry!”
(彼女は「あたしはハラヘッタ!」と言っている) - 関節話法
- セリフはそのまま使わず、内容だけ伝える
【例文】She says that she is hungry.
(彼女はお腹がすいたと言っている)
「直接話法」を「間接話法」にすると時制の一致が起こる
過去にあったことを話していて、「直接話法」を「間接話法」に言い換えるときに「時制の一致」が起こります。
まずは、直接話法の例を見てみましょう。
She said “I’m hungry!”
(彼女は「あたしはハラヘッタ!」と言った)
このようにその人が言ったセリフをそのまんま言うため、時制は現在形で言いますよね。
ところが、この文を「間接話法」にすると以下のようになります。
She said that she was hungry.
(彼女はお腹がすいたと言った)
従属節の「be動詞」が直接話法では現在形の「am」だったのが、間接話法では過去形「was」になりました。
このように、話法が変わると時制の一致が起こりやすいと覚えておいてください。
どちらでもいい場合は「時制の一致」を考えなくてもいい直接話法のほうがはるかに楽ちんですよ。
時制の一致の例外について
あとは時制の一致の例外についても触れておきますね。
実際の英語では、原則通りに時制の一致が起こらない場合も少しあります。
代表的な5つのパターンを紹介していきましょう。
時制の一致の例外
仮定法
まず、仮定法では時制の一致が起こりません。
仮定法は「現在の内容なら過去形、過去の内容なら過去完了形を使う」という特殊な形を取ります。
たとえば「(本当はそうではなかったけど)以前は金持ちだったならなぁ」と言いたいとしますね。
それを現在時制・過去時制それぞれ表すと以下のようになりますよ。
仮定法の例
- 現在
I wish I had been rich. - 過去
I wished I had been rich.
このように、メインの主節の動詞「wish」が現在形から過去形になっても、中身の従属節に変化はありません。
仮定法的な意味のほうが優先されるからですね。
これについてはあまり深く考えすぎず「仮定法は基本的に時制の一致を受けない」と覚えておいてください!
普遍的なこと・不変の真理など
お次は「普遍的なこと・不変の真理など」です。
つまり、過去・現在・未来、いつの時代も変わらないことなので時制の一致を受けません。
たとえば「太陽は東から昇る」みたいなことですね。
普遍的なことの例
- 現在
I know the sun rises in the east.
(太陽は東から昇るって知っているよ) - 過去
I knew the sun rises in the east.
(太陽は東から昇るって知っていたよ)
太陽は東から昇ること自体はいつ・どこでも変わらないですよね?
こういった場合は時制の一致は起こりません。
現在も変わっていない習慣
続いては「現在も変わっていない習慣」です。
たとえば長年ずっと「朝5時に起きている人」がいたら、以下のようになります。
変わっていない習慣の例
- 現在
She tells me that he wakes up at 5 a.m.
(彼は5時に起きるんだと彼女は私に言う) - 過去
She told me that he wakes up at 5 a.m.
(彼は5時に起きるんだと彼女は私に言った)
過去に話した時点でそうだったことが、現在でもまだ変わらず続いている場合ですね。
この場合も時制の一致は起こりません。
人の習慣などはそもそも時制に関係ないことなので、いつだって現在形で表しますよ。
さきほどの「普遍的なこと・不変の真理など」と同じ考え方ですね。
歴史上の出来事
「歴史上の出来事」も時制の一致を受けません。
たとえば以下のような具合です。
歴史上の出来事の例
- 現在
I know that World War II began in 1937.
(第二次世界大戦は1937年にはじまったと知っている) - 過去
I knew that World War II began in 1937.
(第二次世界大戦は1937年にはじまったと知っていた)
歴史上、過去に「第二次世界大戦」が起こったということを言いたいわけですよね?
自分がそれをいつ知ろうが、その事実に影響はないというニュアンスです。
現代の私たちからすれば、いつだって歴史上のことは過去形ですよ。
ちなみに「World War II」の「II」は「two」と発音します。
ことわざ・慣用句
あとは「ことわざ・慣用句」ですね。
これもイメージはさきほどの「普遍的なこと・不変の真理など」に近いです。
たとえば以下のような感じですよ。
ことわざ・慣用句の例
- 現在
He says that failure teaches success.
(失敗は成功のもとだよと彼は言う) - 過去
He said that failure teaches success.
(失敗は成功のもとだよと彼は言った)
「失敗は成功のもと」ということには、過去も現在も未来も関係ないですよね?
そのため、時制の一致を受けることはありませんよ。
ことわざ・慣用句はそのままの形で使えばOKです!
まとめ
では最後に「時制の一致」についてまとめます。
時制の一致のまとめ
- 主節の動詞が過去形になれば従属節の動詞も時制を変える
- そもそも主節より従属節の時制が古い場合は、従属節を過去完了形に
- 時制の一致を受けない例外もある
「時制の一致」は、日本語にはないルールです。
慣れるまで難しいと感じるかもしれませんが、ルールはシンプルなので慣れましょう。