英語の「come」といえば、日本語では「来る」です。でもこれ、日本語の「来る」とまったくイコールではないんです。
今回は日本語の「来る」と英語の「come」の違いをまとめました。
※ 「come」にはたくさんの用法があるのですが、今回は、「(人の)移動」に関する用法にしぼっています。
目次
日本語の「来る」と英語の「come」の比較
中学英語の初期段階で習う「come」ですが、多くの人は「come=来る」とおぼえていると思います。
たしかに間違いではありません。
でも、日本語で「来る」という言葉を使わない場合も、英語では「come」という言葉を使うことがあります。
日本人には不思議に感じる用法なので、少し細かく見ていきましょう。
日本語の「来る」について
まず、英語の「come」の説明の前に、日本語の「来る」についてです。
私が持っている国語辞典の「来る」は、
空間的に離れているものが自分のいる方・所へ向かって動く。また、近づく。
ア:こちらに近づいたり、着いたりする。接近・到着する。訪れる。
例:バスが来た / 留守に友人が来たイ:自分が今いる所を、再び、また以前に訪ねる。やってくる。
例:いつか来た町 / また明日来ます
と出ています。
簡単に言うと、日本語の「来る」のポイントの1つは、「自分がいる(いた)場所」です。
日本語の「来る」は自分のいる場所が重要
「バスが来た / 留守に友人が来た」という用法は、今まさに「自分がいる方・所に向かって」何かが動いたり、近づくことです。
「いつか来た町 / また明日来ます」の用法では、「自分が一度は行ったことのある場所」が基準点になっています。
また、2つ目のポイントとして、双方の用法とも、動作の方向が「自分がいる(いた)場所に向かっていること」が挙げられます。
「こちらに向かってくる」という感覚ですね。
そして、まだその場所を訪れていないと「来る」は使えないんです。
一度も訪れたことがない場合は「行く」を使う
一度も訪れたことがない所に「動く」場合は、「来る」の代わりに「行く」を使いますよね。
みなさん、無意識のうちに使い分けていると思います。無意識にできるところが、母語のすごいところです。
例えば、
東京在住Aさん「東京には初めて来ますか?」
東京を知らないBさん「はい、明日初めて行きます」
Aさんは「自分のいる場所をBが訪れる」ので、「来る」を使いますが、Bさんはまだその地を踏んでいないので、訪れるまでは「行く」を使います。
この時点で、Bさんが「はい、明日初めて来ます」を使うとおかしいですよね。
でも、次の日、東京に着けば、「今日初めて来ました」と言うことができます。
この場合、すでに到着しているので、「行く」を使うとおかしな言い方になりますね。
ついでに日本語の「行く」の意味をまとめると……
- 自分がいる場所から離れた方向(向こう)に動く
- 「学校へ行く」のように、目的地に向かって進む
という感じですね。
英語の「come」について
では、英語の「come」はどうでしょう。
私の持っているOXFORD社の英語学習者向けの辞書『wordpower』の「come」は、
1、to move to or towards the person who is speaking or the place that somebody is talking about
「or」や関係代名詞ばかりで何がなんやら……といった感じですが(笑)。
要は、発話者や話題にしている人のいる場所に向かって動くことです。
そこで、別の英和辞書で調べてみると……
来る、(こちらへ)やってくる
あー、日本語といっしょですね。……と思いきや!! こんな注釈がありました。
comeとgo
【1】相手のいる(いた、いることになっている)所へ行く場合は、comeを用いる。
【2】相手といっしょに行く場合は、comeもgoも可。
これ、日本人には、不思議に感じてしまう用法なんですが、大事なのは【1】です。
英語の「come」は相手のいる所に行くときにも使う
英語の「come」は、「(こちらへ)やってくる」という意味もありながらも……
相手の いる(いた / いることになっている)所へ行く場合にも「come」を使う
……んですよ。
さらに英語の「come」は「自分が以前にその場所に行ったことがあるかどうか」というのは、全く関係ないんです。
先ほどの日本語の「来る」のポイントは、
- 自分のいる(いた)場所
- 動作の方向が「自分がいる(いた)場所に向かっていること」
でした。
日本語では、「相手のいる(いた / いることになっている)所」はどこであろうと関係なく、「自分の いる(いた )所」に向かって動けば、「来る」を使います。
逆に「自分の いる(いた)所」から離れて動けば、「行く」を使います。
また、一度も訪れたことがない所に「動く」場合は、「来る」は使えませんでした。
(代わりに「行く」を使いました)
ところが、英語の「come」は、「自分のいる所」に向かってくる動きだけを見ているのではダメなんです。
英語では、「自分のいる所」から離れて、「相手のいる(いた / いることになっている所)」(自分が一度も訪れたことがない所でも可能)に向かって動くときにも注意が必要なのです。
つまり、「明日、君の家に行くよ」というとき、相手の所に行く場合でも「I'll come to your house tomorrow.」のように言うことになっているんです。
英語の「come」と「go」の比較
では今度は、使用例を見ながらどんなときに「go」ではなく「come」を使うのかの例を見てみましょう。
例: 別の部屋にいる夫に「ちょっと来て」と呼ばれた
例えば、別の部屋にいる夫に「ちょっと来て」と呼ばれたとします。
こんなとき、日本語だとどう答えますか?
「今行くよ!」と言いますよね。
ところが、英語では「go」ではなく「come」を使います。
I'm coming !(今行くよ)
これって「え??」と思いませんか? だって日本語だと「今行くよ!」と言いますから。
日本語につられて「I'm going!」と言うと、部屋ではなく、家から出てどこか違う場所に行くように聞こえます。
「え?! どこに行くの??」と言われるのでご注意(笑)。
例: 海外赴任に「ついて来てほしい」と言われた
今度は、海外赴任の決まった彼氏に「ついてきてほしい」と言われたというシチュエーション。
この場合も「come」を使います。
I'll come with you.(いっしょに行くよ)
もしくは、断る場合……
I can't come with you.(いっしょに行けないよ)
日本語だと「いっしょに行く」と言いますよね?
先ほどの辞書の注釈によると「相手といっしょに行く場合は、comeもgoも可」でした。
なので「go」も使えそうですが??
「いっしょに旅行に行く」など、彼といっしょに行動するのであれば「go」も使えます。
でも、この場合は「いっしょに行動する」という、道中の単純な動作を指しているわけではないので、「come」が適当ですね。
例: 道に迷った人を目的地まで連れて行ってあげる
ではもう1つの例を。道に迷った人を目的地まで連れて行ってあげる場合はどうでしょうか?
日本語だと、「案内する」意味で、「いっしょに行きます」と言います。
この場合は、話し相手の行きたい場所まで、話し相手と自分がいっしょに動くので、「come」でも「go」でも使えて……
- I can go with you.
- I can come with you.
……のようにどちらも使えます。
「come」の使い方まとめ
最後に英語の「come」の使い方をもう一度まとめてみます。
日本語の「来る」と同じ「come」の用法
まず、基本的に「come」は日本語の「来る」と同じだと理解してください。
つまり、自分がいる場所に相手が向かってくるという意味です。
これは問題なく理解できましたね。
日本語の「来る」とは違う「come」の用法
一方、日本語の「来る」とは違った「come」の用法もありました。
それが、相手のいる場所に「行く」ときにも「come」を使うということ。
日本語では「行く」を使う場面なので混乱しそうです。
ここで「go」と比べることで理解が深まります。
「come」と「go」の違い
相手がいる場所に向かって行くときに英語では「come」を使いますが、ここで「go」を使うと下の図のように理解されます。
「go」を使ってしまうと、相手がいる場所とは違った「第三の場所」に向かっていくように理解されます。
「相手のいる場所」に行くときは「come」を使い、そうじゃない別の場所に行くときには「go」を使うということです。
まとめ
いかがでしたか?
「come=来る」という用法もありながら、場合によっては、日本語の「行く」と使う場合でも、「come」を使うことがあるのが、ややこしいですよね。
日本語の「来る」と「行く」は、こちらに動く「来る」と、向こうに動く「行く」で、動く方向が正反対なので、よけいに混乱してしまいます。
この感覚がつかめるようになるまでは、少し時間がかかりますが、間違えながら学んでいってください。
きっとわかるようになりますので!