原形不定詞って……ちょっと耳慣れない言葉ですよね。
本来「不定詞」がくる動詞が「原形」のままのものを指す文法用語ですが、ふつうの不定詞とはだいぶ用法が異なるのです。
意味・動詞の原形との違い・使われる3パターンなど、今回は英語の「原形不定詞」について詳しく紹介しますね。
目次
英語の「原形不定詞」について
はじめに、英語の「原形不定詞」の意味をハッキリさせましょう。
英語の「原形不定詞」とは?
英語で「不定詞」と言えば、通常は「to + 動詞の原形」のことを指します。
それに対して、原形不定詞とは「to + 動詞の原形」から「to」が取れてなくなった形のことです。
原形不定詞とは?
「to + 動詞の原形」から「to」が取れてなくなった形
たとえば、以下の文の「eat」は原形不定詞になっています。
I saw her eat carrots.
(彼女がニンジンを食べるのを見たよ)
「to eat」を使って「I saw her to eat carrots」と言いたいところですが、この場合は「to」はつかないんです。
限定不定詞の例
I saw her to eat carrots.
このように「to + 動詞の原形」になりそうだけど「to」は付かなくて動詞の原形だけであるものを原形不定詞と呼びます。
動詞の原形との違いは?
では「限定不定詞」と、通常の「動詞の原形」との違いはあるのでしょうか?
もうお気づきかもしれませんが……形そのものは動詞の原形とまったく同じです。
不定詞が使われるっぽいシチュエーションでの動詞の原形のことだと思ってくれればOKですよ。
ちなみに、英語で「原形不定詞」にあたる言い方・考え方はありません。
日本の英文法上の用法の1つだと思っておきましょう。
パターンは3つ! 原形不定詞が使われる表現
意味がわかったところで、原形不定詞の実際の使われ方を見ていきましょう。
大きく分けて3つのパターンがあるので、それぞれ紹介していきますね!
使役動詞 + 目的語 + 原形不定詞【make・let・have】
まずは「使役動詞 + 目的語 + 原形不定詞」という形です。
使役動詞とは「(誰かに)〜させる」という形をとる動詞のことを言います。
たとえば「宿題を取りに帰らせる」のような表現ですね。
動詞( V )が使役動詞になる文のときは目的語 + 原形不定詞と続けることになっています。
例文で見たほうが理解しやすいので、以下をご覧ください(「made me clean」の部分がそう)。
Mom made me clean the living room yesterday.
(昨日はママにリビングの掃除をさせられたよ)
この場合は「to clean」ではなく、ただ原形の「clean」をポンっと置きますよ。
この形を取る使役動詞は、具体的には「make」「let」「have」の3つです。
「get」も使役動詞としての用法がありますが、「to」が必要なので注意してください。
詳しく使役動詞についてをご覧ください。
ちなみに使役動詞を使ったこの形は、5つの文型で言えばSVOCの第五文型ですよ。
知覚動詞 + 目的語 + 原形不定詞【see・hearなど】
お次は「知覚動詞 + 目的語 + 原形不定詞」です。
知覚動詞とは「see(見る)」や「hear(聞く)」などの五感で感じる動作のことを指します。
それら知覚動詞も、先ほど紹介した使役動詞とまったく同じ形を取るんですよ(以下例文を参照)。
I heard a baby cry.
(赤ちゃんが泣くのが聞こえたよ)
知覚動詞「hear」の後に目的語(a baby)+ 原形不定詞(cry)と続いていますね。
ただし、知覚動詞のこの形のときは原形不定詞ではなく現在分詞(〜ing)を使うことも可能です。
つまり先ほどの例文なら「I heard a baby crying.」とすることもできます。
I heard a baby crying.
(赤ちゃんが泣くのが聞こえたよ)
ここでの「cry」と「crying」の使い分け例は次のようになります。
crying | チラッとごく短い時間だけ聞いた場合 |
---|---|
cry | 泣き始めから泣き終わりまでずっと聞いた場合 |
help + 目的語 + 原形不定詞
3つ目は「help」です。
動詞の「help」も使役動詞・知覚動詞と同じく目的語 + 原形不定詞の形を取るんですよ。
たとえば以下のような具合です。
She helped me open the door.
(彼女はドアを開けるのを手伝ってくれたよ)
この場合は「open(開ける)」が原形不定詞ですね。
ちなみに「help」の場合は原形不定詞ではなく、ふつうに「to + 動詞」の原形を取ることもできます。
She helped me to open the door.
(彼女はドアを開けるのを手伝ってくれたよ)
「help」は原形不定詞でも「to不定詞」でもOKと、覚えておいてください。
原形不定詞を使うのは基本的には以上の3つのパターンです。
あとは「All you have to do is + 原形不定詞」など、慣用表現もいくつかありますよ。
受け身には気をつけて!原形不定詞の受動態について
よく使われる3パターンがわかったところで、あとは受動態(受身形)についても説明しておきますね。
受動態の文で原形不定詞を使うときは注意してください。
たとえばこの記事の中で紹介した「My mother made me clean the living room yesterday.」という使役動詞の文を受け身にしてみましょう。
すると以下のようになるんですよ。
I was made to clean the living room by my mother yesterday.
(昨日はママにリビングの掃除をさせられたよ)
なんと原形不定詞ではなく「to不定詞」になるんです!
受動態にすると「to」が出てくるというのは知覚動詞も同じですよ。
「原形不定詞は受け身になるとto不定詞になる」と覚えておいてください。
なお、使役動詞だと「make」だけがこの特徴に当てはまります。
「let」と「have」はそもそも受動態を作らないので、「be let to V〜」や「be had to V〜」はありません。