日本語をアルファベットにしたローマ字というものがあります。
小学校の低学年で習うことになるローマ字は、俗に「訓令式ローマ字」と呼ばれているものです。
では、訓令式ローマ字とはどういうルールがあるのでしょうか?
本記事では訓令式ローマ字の特徴について詳しく紹介します。
目次
訓令式ローマ字とは?
訓令式ローマ字というのは、日本人が読みやすく、覚えやすいように開発された記述方法です。
日本語の「あいうえお表」のルールに近く、日本人にとって理解しやすくなっています。
たとえば「ohayô(おはよう)」「sinbun(新聞)」のように書きます。
「訓令」とはどういう意味?
そもそも「訓令式ローマ字」の「訓令」とはなんでしょうか? 辞書では次のように書かれています。
上級官庁が下級官庁に対して、権限の行使を指揮するために命令を発すること。また、その命令。
「訓令(クンレイ)」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書
「命令」のことを「訓令」と呼ぶんですね。
なぜ「訓令式ローマ字」と呼ぶの?
なぜ「訓令式ローマ字」と呼ばれているのかというと、昭和29年に訓令として「ローマ字はこういうふうにつづりなさい」と国から出されたから。
実は、厳密には「訓令式ローマ字」という名称ではないのです。
ヘボン式ローマ字と区別するために便宜上、そう呼ばれているだけ。
つまり「ローマ字」と呼んだときは、基本的には訓令式ローマ字を指します!
訓令式ローマ字表
では実際に、訓令式ローマ字を使って日本語をどう表記するのかを見ていきましょう。
【清音】訓令式ローマ字表
こちらは訓令式ローマ字の清音を表にしたものです。
あ行 | a (あ) | i (い) | u (う) | e (え) | o (お) |
---|---|---|---|---|---|
か行 | ka (か) | ki (き) | ku (く) | ke (け) | ko (こ) |
さ行 | sa (さ) | si (し) | su (す) | se (せ) | so (そ) |
た行 | ta (た) | ti (ち) | tu (つ) | te (て) | to (と) |
な行 | na (な) | ni (に) | nu (ぬ) | ne (ね) | no (の) |
は行 | ha (は) | hi (ひ) | hu (ふ) | he (へ) | ho (ほ) |
ま行 | ma (ま) | mi (み) | mu (む) | me (め) | mo (も) |
や行 | ya (や) | − | yu (ゆ) | − | yo (よ) |
ら行 | ra (ら) | ri (り) | ru (る) | re (れ) | ro (ろ) |
わ行 | wa (わ) | − | − | − | o (を) |
注意が必要なのは「を」です。「わ行」ですが、「wo」ではなく「 o 」と書きます。
発音が「お( o )」とまったく同じだからです。
ちなみに、訓令式ローマ字だと表記できない言葉があります。
たとえば「ティー」は「ti」と書きたいところですが、「ti」は訓令式だと「ち」と読みます。そのため「ティーカップ」などが表記できません。
「トゥー」も同じく「tu」だと「つ」になるため表記できません。
【濁音】訓令式ローマ字表
続いて、訓令式ローマ字の濁音を表にしたものです。
が行 | ga (が) | gi (ぎ) | gu (ぐ) | ge (げ) | go (ご) |
---|---|---|---|---|---|
ざ行 | za (ざ) | zi (じ) | zu (ず) | ze (ぜ) | zo (ぞ) |
だ行 | da (だ) | zi (ぢ) | zu (づ) | de (で) | do (ど) |
ば行 | ba (ば) | bi (び) | bu (ぶ) | be (べ) | bo (ぼ) |
ぱ行 | pa (ぱ) | pi (ぴ) | pu (ぷ) | pe (ぺ) | po (ぽ) |
訓令式ローマ字の濁音にも例外があります。それは「だ行」の「ぢ(zi)」と「づ(zu)」です。
先述した「を( o )」のルールと同じで、「ぢ」は「じ」と発音が同じ、「づ」は「ず」と発音が同じであるため、そちらと同じつづりになります。
地域によっては発音を分けているところもありますが、例外です(参考:四つ仮名について)。
【拗音】訓令式ローマ字表
こちらは訓令式ローマ字の拗音を表にしたものです。
きゃ行 | kya (きゃ) | kyu (きゅ) | kyo (きょ) |
---|---|---|---|
しゃ行 | sya (しゃ) | syu (しゅ) | syo (しょ) |
ちゃ行 | tya (ちゃ) | tyu (ちゅ) | tyo (ちょ) |
にゃ行 | nya (にゃ) | nyu (にゅ) | nyo (にょ) |
ひゃ行 | hya (ひゃ) | hyu (ひゅ) | hyo (ひょ) |
みゃ行 | mya (みゃ) | myu (みゅ) | myo (みょ) |
りゃ行 | rya (りゃ) | ryu (りゅ) | ryo (りょ) |
ぎゃ行 | gya (ぎゃ) | gyu (ぎゅ) | gyo (ぎょ) |
じゃ行 | zya (じゃ) | zyu (じゅ) | zyo (じょ) |
びゃ行 | bya (びゃ) | byu (びゅ) | byo (びょ) |
ぴゃ行 | pya (ぴゃ) | pyu (ぴゅ) | pyo (ぴょ) |
こちらは全部ルールどおりで例外はありません。すべて「 y 」をはさんでいますね。
訓令式ローマ字のルール
続いて、訓令式ローマ字のルールを見ていきましょう。
訓令式ローマ字の基本ルール
まずは、訓令式ローマ字の基本ルールから紹介します。
大文字からはじまりピリオドで終わる
まず、文頭は大文字からはじまり、ピリオド( . )で終わるというルールがあります。
例
Hai, kyô wa atui desu.
(はい、今日は暑いです)
句読点は「句点→ . 」「読点→ , 」のように置き換えましょう。
「分かち書き」をする
訓令式ローマ字は「分かち書き」をします。
分かち書きとは、英語のように単語と単語の間にスペースを空ける書き方のことですね。
例
Asita wa hareru kana?
(明日は晴れるかな?)
どこにスペースを空けるのかは、明確にルールとしてあるわけではありません。
「読みやすくする」のが目的で、基本的には単語で分けるという解釈でいいでしょう。
固有名詞の語頭は大文字になる
英語と同じで固有名詞の語頭は大文字になります。
例
Kinô wa Tarô to Sinzyuku de asonda.
(昨日は太郎と新宿で遊んだ)
長い単語にハイフン
長い言葉の場合は、間にハイフンをはさみます。読みやすくするのが目的でルールはありません。
例
Pikatyû ga "denkô-sekka" o oboeta.
(ピカチュウが「電光石火」を覚えた)
訓令式ローマ字のスペルに関するルール
お次は、訓令式ローマ字のスペルに関するルールを紹介します。
助詞のスペル「は=wa」「へ=e」「を=o」
ローマ字で助詞を書くときには注意が必要です。
「は」「へ」「を」は「wa」「 e 」「 o 」のように書きます。
例
Watasi wa sûpâ e banana o kai ni itta.
(私はスーパーへ、バナナを買いに行った)
「Watasi ha sûpâ he banana wo kai ni itta」だと声に出すとおかしいですよね。
「じ/ぢ」「ず/づ」は同じスペル
「じ/ぢ=zi」と「ず/づ=zu」は同じスペルになります。
例
パソコンでは「sokodikara」や「tuduki」と入力するので、混乱しないようにしましょうね。
「撥音(ん)」の後に「や行/母音」がくるときは「'」をはさむ
「撥音(ん)」のあとに「や行」や「母音」がくるときは、次のように「 n 」のあとに「'」をはさみます。
例
Hon'ya de ren'ai-syôsetu o katta.
(本屋で恋愛小説を買った)
なぜこんなことをするのかというと、「 n 」が後ろにある「や行」や「母音」と合体して「honya(ホニャ)」「renai(レナイ)」のように読めてしまうからです。
「'」を挿入することで、ここが境目であることが伝わりますね。
日本語と英語の「ん」の違いも参考になりますよ。
促音(っ)は子音を重ねる
促音(っ)を訓令式ローマ字で表記するときは、促音のくる子音を重ねます。
例
Hokkaidô wa tottemo oisii mono ga dossari.
(北海道は、とっても美味しいものがどっさり)
長音には「^(サーカムフレックス)」を使う
「長音(ー)」は長音記号として「^(サーカムフレックス)」を使います。
例
Sâ! Kyô mo onîsan to onêsan to takkyû o suruzo.
(さあ! 今日もお兄さんとお姉さんと卓球をするぞ)
「長音(ー)」と意識しない言葉はそのままの綴りで書く
日本人が「長音」として認識していない言葉の場合は、長音符号を使わずにアルファベットで書きます。
例
【暗記できたかチェック!】訓令式アルファベットのルール
最後に、訓令式アルファベットのルールを覚えられているかをチェックしてみましょう。
かつおぶし | katuobusi |
---|---|
ぎょうざ | gyôza |
イカ | ika |
タコ | tako |
キュウリ | kyûri |
なすび | nasubi |
こんぶ | konbu |
ソース | sôsu |
らっきょう | rakkyô |
マヨネーズ | mayonêzu |
ごま | goma |
パンケーキ | pankêki |
ピーナッツ | pînattu |
サンドイッチ | sandoitti |
チョコレート | tyokorêto |
じゃがいも | zyagaimo |
ラーメン | râmen |
コンニャク | konnyaku |
シューマイ | syûmai |
まとめ
今回紹介した「訓令式ローマ字」は小学校の低学年で学びます。
ルールはヘボン式ローマ字と比べるとシンプルなので覚えやすいと思います。
ぜひ本記事を参考に、マスターしてくださいね。
ヘボン式ローマ字についてはこちらをどうぞ。