英語だと現在の話なら動詞は現在形だし、過去の話なら過去形を使いますよね?
でも、時制に関係なく「原形」を使う場合があるんです!
それは「仮定法現在」という文法用語で呼ばれる、次のような文のときです。
My father suggested that I be a pro gamer.
(父はあたしがプロゲーマーになることを提案したよ)
なんか、「be」が突然出てきてモヤモヤとしますが、今回は「that節」内の動詞が原形になるケースについて詳しく紹介しますね。
「that 節」の動詞を「原形」にさせる動詞
まず最初に、英語では「that」で文をつなげられるという話からおさらいしましょう。
次のように、英語の文は「that」を使うことで複数の文を1つにすることができます。
I noticed that you were there.
(キミがそこにいたことに気づいていたよ)
「I noticed(主節)」と「You were there(従属節)」の2つの文を合体させるために「that」を使っていますよね。
「that」のあとに続く文のことを「that節」と呼びますよ!(参考: that節について)
そして、「that」で2つの文をつなぐときのポイントは、時制を一致させること。
上の例だと、「noticed」が過去形なので、「that」のあとに続く文も過去形にして「you were there」になっています。
「that 節」で動詞が原形になる例
では、ここからが本題。
この「that」あとに続く動詞が、現在形ではなく「原形」になることがあるのです(参考: 現在形と原形の違い)。
「that」のあとの動詞が原形になる例
「that」以降に続く文の動詞が原形になるという例を見てみましょう。
I recommend that you be there.
(キミがあそこにいることをオススメするよ)
「あれれ?」と思いませんか?
I recommend that you are be there.
「あなたはあそこにいる」を英語にするとき、通常なら主語の人称に合わせてbe動詞の「are」を使うので「You are there.」となります。
ところが、先ほどの例文では「are」ではなく原形の「be」になっていますよね?
「be」になる原因は「提案・要求」を表す動詞
その理由は……ずばりメインの動詞として「recommend(おすすめする)」を使っているからです!
英語では、文のメインの動詞が「提案・要求」の意味の動詞だと、あとに続く「that節」内の動詞(thatのあとの文で使われる動詞)は必ず原形を使います。
- メイン(主節)……提案・要求・命令・主張などの動詞
- that節(従属節)……動詞は必ず原形
「recommend」以外の具体的な動詞に関しては後述しています。
なぜ「that節」の動詞が原形になるの?
「that節」内の動詞が原形になる理由は「まだ起きていないこと」だからです。
「私はオススメする」と提案したとき、「(あなたが)あそこにいる」という状態は、過去にも現在にもまだ起きていないことですよね?
そもそも「オススメ」した内容は、「空想」の話であり、「仮定」だからです。
話している時点では過去や現在の話ではなく、空想であるため、時制の無い形である「原形」を使いますよ。
英文法では「仮定法現在」という用法になります。
名前は「仮定法現在」ですが、現在形ではなく「原形」になるので気をつけてくださいね!
「that 節」で原形をとる代表的な動詞一覧
では、なぜ原形をとるのかがわかったところで、「that 節」で原形をとる代表的な動詞を見てみましょう。
該当するのは3つの意味を持つ動詞
共通するのはこちらの意味の動詞だということです。
該当する動詞の意味
- 提案・要求
- 主張・命令
- おすすめ・お願い
具体的には、以下の動詞たちが代表的ですよ。
advise | 助言する・忠告する |
---|---|
ask | 要求する |
command | 命令する |
demand | 要求する |
desire | 熱望する |
insist | 主張する |
order | 命じる |
propose | 提案する |
recommend | おすすめする |
request | 依頼する |
require | 必要とする |
suggest | 提案する |
urge | 促す |
これらの動詞の後に続く「that節」では、be動詞でも一般動詞でも原形にしてくださいね。
該当する単語の暗記方法
大学入試やTOEICなど、試験対策ならぜひ
「drips」と覚えておいてください。
「drips」とは、該当する8つの単語の頭文字をとったゴロ合わせです。
dripsとは?
- d …… demand・desire
- r …… recommend・request・require
- i …… insist
- p …… propose
- s …… suggest
「that節」内で「原形を選ぶ」という問題の大半が、これらの単語から出題されていると言われていますよ!
「it's〜that」で動詞を「原形」にさせる形容詞
動詞に続いて、今度は形容詞です。
「こういう形容詞が来たらthat節の中は原形」という場合があります。
例えば以下のような場合です。
It is necessary that you be home.
(キミは家にいる必要があるよ)
ふつうに「あなたは家にいる」ならば「you are home」になるはずです。
ところが、「necessary(必要だ)」という形容詞が主節で使われると、「that節」内の動詞が原形になるのです。
該当する形容詞の一覧
このように「It is(It's)〜 that + 動詞の原形」の形をとる形容詞は以下のものが代表的ですよ。
crucial | 重要な |
---|---|
essential | 絶対に必要な |
impossible | 不可能な |
important | 重要な |
natural | 当然な |
necessary | 必要な |
proper | 適切な |
vital | 必要不可欠な |
該当するのは「必要性・重要性」の意味を持つ形容詞
該当する形容詞は、どれも必要性・重要性の意味を持つ形容詞ですね。
これらの形容詞を使って話す内容も「まだ起きていないこと」なので原形を使うというわけです。
「It is important」や「It's essential」などの形を見たら「あ、この後のthatの中は原形だ!」と思いましょう!
ちなみに「that節」内の主語が誰であるかはまったく関係ないですよ。
「It's 〜 that」の形で、これらの形容詞が見えたら、「that」以降に使われる動詞は問答無用で原形です!
「should」「時制」「否定」について
動詞・形容詞それぞれわかったところで、応用的な内容にも触れてみましょう。
では、こちらの3つについて紹介していきますね。
仮定法現在の応用
「should」について
まず、この形で使われることのある「should」についてです。
「should + 原形」が使われる例
ここまで、提案・要求系の動詞や必要・重要系の形容詞のあとに続く「that節」内では動詞の「原形」を使うと紹介してきました。
でも動詞の原形だけではなく助動詞の「should」も一緒に使って「should + 原形」という形の場合もあるんです!
例えば以下のようになりますよ。
I recommend that you should be there.
(キミはあそこにいることをオススメするよ)
アメリカでは「原形だけ」・イギリスでは「should + 原形」
もちろん「should」を入れずに「I recommend that you be there.」でも大丈夫。
実はこの2つの表現の違いは地域なのです。
地域の違い
- アメリカ …… 原形だけ
- イギリス …… should + 原形
このように、どちらが正しい・間違っているということはありません。どちらを使っても正解です。
どっちでもイイなら……アメリカ式のほうが楽ちんですよね(笑)
現在では、イギリスでもアメリカの影響を受け、原形だけのパターンが増えているそうです。
「shoud be」が省略されて「be」になったのではない
イギリス式では「should be」になることがある……という事実を知ると、アメリカ式の「be」が「should be」の省略で「be」になっているように見えますが、そうではないようです。
こちらに関しては、英語史の専門家である堀田隆一 氏の書籍から以下を引用します。
したがって,歴史的に見れば,アメリカ英語式の表現は should の省略などではまったくない.むしろ正反対で,イギリス英語式の should こそが後付けの挿入なのである.
英語の「なぜ?」に答える はじめての英語史より引用しました。
「仮定法現在」では「be」を使う……というルールのほうが古く、アメリカ英語ではその歴史を守っているということです。
現代英文のなかに突然「原形」が出てくるという違和感に対し、「should」を入れることで「『should』があるから原形になっている」という再解釈をしているのでしょう。
実はアメリカ英語のほうが保守的で、イギリス英語のほうが革新的であるという話が堀田氏の書籍によく出てくるのですが、非常に興味深いですね。
時制について
お次は時制について見てみましょう。
つまり「過去」や「現在」についてですね。
「主節」では過去形も現在形も使われる
提案・要求、主張・命令などを表す動詞を使ったとき、「that節(従属節)」内の動詞に「原形を使う」というルールがあると述べてきました。
では、メイン(主節)の動詞の時制にはルールがあるのでしょうか?
これに関しては、次の例文のように過去でも現在でもOKです。
- 現在
- I propose that he see a doctor.
(彼は医者に行くべきだと私は提案するよ) - 過去
- I proposed that he see a doctor.
(彼は医者に行くべきだと私は提案した)
「that節」内の動詞は必ず「原形」
ただし何度も言っているように、メインの動詞「propose」が現在形でも過去形でも、「that節」内の動詞「see」は原形となります。
「that節」内の内容は「まだ起きていないこと」なので、文法用語で言うところの「時制の一致」は起きません。
もちろん現在の時制で使われる三単現の「S」も付きませんよ!
I proposed that he sees a doctor.
否定について
ラストは「否定」についてです。
「that節」の内容が否定文になることもありますよね。
その場合は、以下のようにただ「not」を置きましょう。
I advise that you not be there.
(忠告しとくよ、キミはそこにいるべきじゃない)
唐突に「not」が出てくるのにちょっとビックリするかもしれませんが、これで100%合っているんです。
「don't」や「didn't」になることはありませんし、他の助動詞を使って「can't」や「mustn't」になることもありません。
イギリス式にshouldも使って「I advise that you should not be there.」としても正解ですよ。
「that節」で原形の否定は「not」を置くだけ……と覚えておきましょう!
まとめ
さて今回は、「that節」内の動詞を原形にさせる動詞、形容詞について紹介しました。
まとめ
- 特定の動詞・形容詞の後の「that節」内の動詞は「原形」に
- 動詞は「recommend」「propose」などの提案・要求や主張・命令を表すもの
- 形容詞は「important」「necessary」などの必要・重要を表すもの