英語の発音を勉強していると「二重母音」という言葉が出てきます。
英語では「diphthong」と呼びますが、「二重母音」というのは、2つの母音が明確な境目なく、滑らかに移行して発音される母音のことです。
今回はその「二重母音」の中でも[ aɪ ]の発音に注目して詳しく説明しますね。
二重母音って?
英語に存在する二重母音というものをご存じですか?
その名のとおり、母音2つが重なっている母音のことです。
英語の二重母音
では実際にどんな二重母音があるのかを見てみましょう。英語ではこちらの6種類が有名ですね。
英語にある二重母音
- aɪ
- aʊ
- ɪə
- eɪ
- oʊ
- ɔɪ
二重母音の数え方はいろいろあるみたいです。アメリカ英語とイギリス英語でも違いますし。
一番上の「aɪ」を例に挙げてみます。
「aɪ」を例に挙げると
こちらを音声で聞いてみてください。
まず、日本語で「愛(あい)」と2回言って、そのあとに英語の「 I(私は) 」と2回言っています。
「 I(私は)」とか「ice(氷)」ならそのまま[ aɪ ]の発音が入っていますね。
「sky /skaɪ/」「guide /gaɪd/」「rice /raɪs/」などのように、単語の最後や間に入っている場合がほとんどです。
日本語読みの「アイ」と非常に似ていますね。母音が2つが連なっているという意味がおわかりでしょうか?
日本語にあるのは「連母音」
「aɪ」を「アイ」とカタカナで書くと「おおー! 日本語と同じかー!」……のように勘違いされそうですので、日本語の説明もしておきます。
日本語の「愛 /a.i/」のような連続した母音は「二重母音」ではなく「連母音」と呼ばれます。
何が違うのかというと、日本語での発音「あい」の場合、「あ」の発音が終わってから「い」が始まっていることです。
2つの母音の境目がはっきりしているというのが違いですね。
「二重母音」と「連母音」の違い
ちょっとややこしいですので、「二重母音」と「連母音」の違いをまとめてみます。
もう一度こちらをお聞きください。
どうでしょうか? 違いがおわかりでしょうか?
二重母音
英語の「 I[ aɪ ]」の発音のように、2つの母音の間にはっきりした切れ目がないもの。
1つ目の母音から2つ目の母音に移るときに滑らかで連続して発音されます。
この「二重母音」はあくまで1つの母音であって、2つの母音を順に言っているのではないのがポイントです。
連母音(母音連続)
2つの母音を連続して言っていて、2つの間にしっかりと切れ目があるもの。
「二重母音」とは違って、あくまで2つの母音であることがポイントです。
「二重母音」と「連母音」の例
今度はこちらの音声です。
「しかい」という発音を3つの種類で言っています。
この順番に言ってあります。
発音している言葉の順番
- しかい(歯科医)× 2回
- しかい(司会)× 2回
- しかい(shikai)× 2回
発音の違いをまとめてみますね。
- 歯科医(しかい)…… 連母音
- 3つの音声「し」「か」「い」を連続して言っているのがよくわかると思います。完全な連母音ですね。
- 司会(しかい)…… 二重母音風の「連母音」
- 「歯科医」ほど「し」「か」「い」がくっきりとわかれていませんが「連母音」です。「し」「かい」と言っている感じです。
- shikai …… 二重母音
- 英語風に「しかい」を言っています。「kai」の「ai」の部分が二重母音です。
二重母音を発音するコツ
先ほどの「しかい」という発音をしている音声をもう一度持ってきます。
最後の2回が「二重母音」の「aɪ」ですが、どうすればうまく発音できるのでしょうか?
最初の「 a 」を長めに言う
上の音声データをお聞きになるとわかると思いますが、[ aɪ ]の発音では[ a ]の発音が長めです。
カタカナだと「ア〜イ」と言っているように聞こえます。ただ、これは英語にアクセントが必ず入ることが原因ですね。
基本的に二重母音にアクセントが来ることが多いのですが、「idea」のように[ aɪ ]にアクセントがこない場合は長めには言いません。
「 a 」の発音は日本語とほぼ同じ
この[ aɪ ]の出だしの[ a ]の発音は、日本語の「あ」にかなり近いです。
何が言いたいかというと、英語で「あ」の発音に似ている[ ʌ ]でも[ ə ]でも[ ɑ ]でも[ æ ]でもなく[ a ]だということです。
なので、発音するときは気にせず「ア」で言ってオッケー。
【重要】一息で[ ɪ ]に移る
そして二重母音[ aɪ ]で最も重要な点が、一息で[ aɪ ]と言うこと。
日本語(連母音)とまったく違うところですね。こちらの図を見てください。
日本語の「あい」の場合、2つの母音が連なって発音されているだけです。
でも英語の二重母音[ aɪ ]の[ a ]と[ ɪ ]には明確な境目がなく、1つの母音なんですね。ただ単に途中で音声が変化するだけです。
厳密には[ a ]を言っている途中で、 [ a ]の音が滑らかに移行して[ ɪ ]になった……という感じです。
[ a ]を発音している「途中」に口を閉じたら、「音声的に[ ɪ ]みたいな発音になった」というイメージで発音するとしやすいかも。
[ ɪ ]は小さめに発音
そして[ ɪ ]の発音は、[ a ]と比べるとかなり控えめに言います。
もう消え行くような存在ですね。
まとめ
さて、今回は二重母音の「 ai 」についてまとめました。
2つの母音というのではなく、1つの母音であるという意識を強く持っておいたら発音しやすいかもしれません。
ちなみに中国語には三重母音があります。たとえば「怪」を三重母音で「クアイ/kuai/」と発音します。
本物の中国語の発音が日本語よりねばっこく聞こえるのは、母音に切れ目がなく発音する二重母音(三重母音)だからです。