コミュニケーションを取るときには、ことばが主役ですよね。
でも、ことば以外にも、メッセージを伝える手段があるんですよ。
それが「非言語コミュニケーション」こと「ノンバーバル・コミュニケーション」です。
この記事では、そんな「ノンバーバル・コミュニケーション」について解説します。
ノンバーバル・コミュニケーションとは?
では、「ノンバーバル・コミュニケーション」とは、そもそもどんな意味なのでしょうか。
「ノンバーバル」は英語で「non-verbal」。「non-verbal」をさらに2つに分けると、次のとおりになります。
「non-verbal」とは
- non:否定(〜ではない)
- verbal:ことばを使う
つまり、「ノンバーバル・コミュニケーション」は、「ことばを使わないコミュニケーション」という意味です。
「無言のメッセージ」を伝えるコミュニケーションとも言えますね。
「非言語コミュニケーション」と呼ばれることもありますよ。
ノンバーバル・コミュニケーションの例
「ことばを使わないコミュニケーション」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、ジェスチャーではないでしょうか。
ウンウンとうなずいて「聞いてますよ」ということを示したり、手を振って「バイバイ」と伝えたり。
でも、ノンバーバル・コミュニケーションは、ジェスチャーだけではないんです。
ここでは、ノンバーバル・コミュニケーションを「音声メッセージ」「非音声メッセージ」の2つに分けて説明します。
Wikipediaでは、次のように説明されています。
非言語コミュニケーション - Wikipedia
メッセージの例 具体例 非言語/音声メッセージ 声の張り、イントネーション、話す速度、言葉遣い 非言語/非音声メッセージ 外見・身だしなみ、身振り手振り、姿勢、視線、対人距離、表情、呼吸
ノンバーバル・コミュニケーションには、ジェスチャーのほかにもいろいろあるんですね。
では「非言語音声メッセージ」「非言語非音声メッセージ」の例をそれぞれ紹介します。
非言語音声メッセージ
非言語音声メッセージには次のようなものがあります。
声の張り
まず、「声の張り」から解説します。「おはようございます」という朝のあいさつを想像してください。
たとえば、張りのある声であいさつをすると、「今日も元気にがんばりましょう」という無言のメッセージが伝わるかもしれません。
逆に、ボソボソとあいさつをした場合、相手に「この人、今日は機嫌が悪いんかな」とか「わたしのこと嫌いなんかな」とか思われてしまう可能性があります。
あいさつの仕方で「おはよう!」以外のメッセージ(=非言語音声メッセージ)も伝わってしまうんですね。
イントネーション
2つ目の例は「イントネーション」です。
たとえば、わたしは昔、イントネーションをつけて話すのがニガテでした。
「棒読み」みたいな話し方だったんですよ。
わたしが学生時代、先輩を飲み会に誘うために電話をしたときのことです。
留守電にメッセージを残し、電話をかけなおしてきた先輩に次のように怒らせてしまいました。
お前、ほんまに俺に来てほしいと思ってんのか?!
わたしの言いかたにイントネーションがなく、棒読みだったので「本当は来てほしくない」と受け取られてしまいました。
もちろん、尊敬している先輩だったので来てほしかったのですが……。
実際に顔を合わせて話していれば、表情などから、そんな誤解は生まれなかったかもしれませんね。
話す速度
「話す速度」も非言語音声メッセージのひとつです。
たとえば、わたしは昔、早口で話す傾向がありました。
会社で働いていたとき、上司に「あわてて話さなくてもいい」とアドバイスをもらったことを覚えています。
「緊張して、あわてている」という無言のメッセージを発していたようです……。
わたしは急いで話しているつもりはなかったのですが、少なくとも上司にはそう伝わっていたんですね。
逆に、適度にゆっくり話すことで「落ち着いている、自信がある」という(これまた無言の)メッセージを伝えられたかもしれません。
ことばづかい
非言語音声メッセージの最後の例は、「ことばづかい」です。
たとえば、この間ひさびさに友人に会ったときのことです。
基本的にタメ口で話していたのですが、友人がたまに敬語を使ってきて、少し距離を感じてしまいました。
LINEでは100%タメ口だったのに……。
あまり仲良くなりたくない人に、丁寧なことばを使うことがありますが、そのパターンではないと信じたいところです。
非言語非音声メッセージ
つづいて「非言語音声メッセージ」です。
「音声がないメッセージ」ってなに……?
……と思ったかもしれませんが、ジェスチャーはまさに「音声がないメッセージ」の代表と言えます。
ことばを使わずに、身振り手振りで何かを伝えるわけですから。
ここでは、非音声メッセージの例として、次の7つについて説明しますね。
外見・身だしなみ
まず、「外見・身だしなみ」です。
たとえば、寝ぐせだらけのボサボサ頭で大切なお客さんに会うのって、なかなかハードルが高いですよね。
お客さんに、次のように思われても仕方がありません。
(わたしのこと、どう思ってるんだろうか……というか、この人に仕事を任せて大丈夫なんだろうか……)
逆に、めちゃくちゃ仲のいい友人とプライベートで会うときに、仕事用のスーツでビシッと決めるのも、ちょっと勇気がいるかもしれません。
友人がムダに距離を感じてしまいそうですね。
このように、髪型や服装といった「外見・身だしなみ」でも、無言のメッセージを伝えてしまいます。
時と場面に合っていれば、無言のメッセージを伝えて「くれる」んですけどね。
身振り手振り
「身振り手振り」は先ほど少し触れた「ジェスチャー」ですね。
先述の通り、手を振ることで「バイバイ」という別れの挨拶を伝えられます。
ほかにも、人差し指を立てて、閉じた口の前に持ってくると「静かに」というメッセージになりますね。
ちなみに「シー!静かに」のジェスチャーは英語でも同じです。
姿勢
「姿勢」も非言語コミュニケーションになります。
これもわたしの失敗談ですが、会社で働いていたときのこと。
PC作業に疲れたわたしは、ちょっとの間、ほおづえをついてPC画面を見ていたんです。
すると、それを見た上司はこう言ってきました。
お前、やる気あんのか?!
当然、ほおづえは、ことばではありません。
ですが「やる気がない」「仕事ではなく、他のことを考えている」というメッセージが伝わってしまったんですね。
視線
「視線」も大切な非言語コミュニケーションのひとつです。
たとえば、友人と話しているときに、こちらをまったく見てくれないと、「怒っているのかな……?」と心配になりますよね。
また、相手の視線が定まらず、あちこちさまよっていると、「自信なさげだな……」とか「何か隠してるのかな?」と思うかもしれません。
このように、視線もメッセージを発していると言えます。
「目は口ほどに物を言う」というやつですね!
対人距離
「対人距離」でも無言のメッセージを送ることができます。
たとえば、苦手なタイプの人には、物理的に近づきたくないですよね……。無意識のうちに、距離を空けてしまっているかもしれません。
逆に「お近づき」になりたい人には、文字通り、距離が近くても苦にならないはず。
このように、物理的な距離で、相手に対する気持ちを伝えることができます。
あまり露骨にやると、問題になるかもしれませんが……。
表情
「表情」もことばではありませんが、メッセージを伝えることができます。
言うまでもなく、笑顔なら「楽しい」とか相手に対する好意などが伝えられます。
しかめっ面ならその逆ですね。
なんなら無表情で、「関心がない」ことも伝えられます。
呼吸
最後に紹介するノンバーバル・コミュニケーションは「呼吸」です。
「呼吸」でなにか伝えることってできるの?
……と思われたかもしれませんが、たとえば「ため息」はどうでしょう。
仲のいい友だちがため息をついていると、「どうしたの? なにかあったの?」と聞きたくなりますよね。
ため息自体はことばではないのですが、「心配事がある」「悩んでいる」といったメッセージが含まれる場合もあります。
ノンバーバル・コミュニケーションの重要性
ここまで、ノンバーバル・コミュニケーションについて、例を交えて解説してきました。
では、実際にコミュニケーションを取るとき、ことばとそれ以外(ノンバーバル・コミュニケーション)とでは、どちらの影響が大きいのでしょうか。
日本語教師になるための試験の書籍に、次のとおり書かれていました。
バードホイステルは母語話者同士が会話した場合でも、言語による情報量は約30%で、残りの70%前後はノンバーバルによる情報手段で伝えられるとしている。
ヒューマンアカデミー著『日本語教育能力検定試験 完全攻略ガイド 第2版』(2011年 翔泳社)
なんと、7割がノンバーバル、つまりことばを使わない手段で伝わっているんですね。これは超重要です。
ことばそのものだけでなく、ノンバーバルの要素にも気を配らないと、誤解を生んでしまう恐れがあるということにもなります。
そう、昔のわたしのように……。
まとめ
この記事では、ノンバーバル・コミュニケーションについて解説しました。
まとめると、次のとおりです。
まとめ
- ノンバーバル・コミュニケーションは、ことばを使わないコミュニケーションである
- ノンバーバル・コミュニケーションの例は、声の張り、イントネーション、姿勢、呼吸など数多くある
- ノンバーバル・コミュニケーションが情報量に占める割合は約70%と高い
ことばによるコミュニケーションだけでなく、ノンバーバル・コミュニケーションも意識して、コミュニケーション力を高めたいところですね。
ご参考になれば幸いです!