「天ぷら」を英語で「tempura」と書くのですが、これって不思議に思いませんか?
わたしは中学校のころからずっと疑問に思っていました。
ではなぜ「てんぷら」の「ん」は「 n 」ではなく「 m 」を使うのでしょうか? 今回はその謎を紐解きます。
そして、英語で「ん」の発音をする単語に出合ったとき、スペルが「 n 」と「 m 」のどちらかがわかる方法も紹介します。
目次
なぜ英語では「天ぷら」を「tempura」と書くの?
なぜ英語では「天ぷら」を「tempura」と書くのかというと、理由は簡単です。
それが発音するときに正しいからです。
いや、意味不明なんだけど……
……という声が聞こえてきそうですね(笑)。
ここでびっくりしてください。
実は日本人も「天ぷら」と発音するときに
「tempura」と発音しているのです。
まじで?!
「てんぷら」の「ん」の発音は [ m ] である
繰り返しますが、日本語でも「てんぷら」の「ん」の発音は、 [ m ] で発音されているのです。
実際に「てんぷら」と発音してみてください(ナチュラルスピードで)。
「てんぷら」の「ん」を発音するときに、唇を閉じていませんか? つまり [ m ] の発音をしていることになります。
上の図は、 [ m ] を発音するときの口のなかの図です。
「ん」だけを発音しても唇は合わさらないのに、「てんぷら」と発音するときには唇が合わさっている……。
これは、日本語の「ん」の発音に次のような特性があることが原因です。
日本語の「ん」の特性
うしろに来る音声によって発音方法が変わる。
「ん」については下記の記事に超くわしく書いているので、ご参考に!
なぜ「てんぷら」の「ん」が「 m 」になるの?
では、なぜ「てんぷら」の「ん」の発音が、[ m ] になるのでしょうか?
そのほうが発音しやすいからです。
こちらの2つは、両方とも唇で発音しますよね?
どちらも唇を使う発音
まずこちらは [ m ] の発音をしているときの口のなかの図です。
続いて、[ p ] を発音しているときの口のなかです。
つまり、1唇で作る音 [ m ] 2唇で作る音 [ p ] ……のように流れたほうが、しゃべるのがラクで負担が少なくなります。
そのため、「ぷ [ pu ] 」の前にくる「ん」の発音は唇を使って発音する [ m ] になるのです。
「tenpura」と表記するとどうなるの?
では「tempura」を、本来のローマ字表記である「tenpura」と書いてみましょう。
実は [ n ] の発音は次のようになります。
まとめると次のような違いがあります。
[ m ] [ n ] の違い
つまり、「tenpura」のように「ん」を「 n 」で書いてしまうと、1上前歯の後ろに舌をつけて発音する [ n ] 2唇を閉じて発音する [ m ]という動作が必要になり、非常に発音しにくくなります。
せっかくなので、「tempura」と「tenpura」を文字のとおりに発音した音声を作ってみました。
聴き比べるぶんには、 [ m ] で発音しても、 [ n ] で発音しても大差なく聞こえますよね。
ところが、「言いやすさ」で比較すると、圧倒的に [ m ] で発音したほうが言いやすいのです。
「tenpura」で発音すると、「テヌプラ」って言ってるみたいでいいにくい……。
ローマ字=表記を重視・英語=音声を重視
突然、[ n ] の発音の話が出てきてびっくりしたかもしれませんね(笑)。
実は、英語で「 n 」と表記した場合、 [ n ] の発音をしなくてはならないように見えてしまいます。
つまり、「tenpura」と表記してしまうと、英語圏の人を含め海外の人は「ん」を読むときに [ n ] の発音をしてしまうのです。
おおざっぱに言うと、「ローマ字表記」と「英語表記」には次のような違いがあります。
- ローマ字表記(ん = n)
- 「 n 」の発音だから「 n 」を使っているのではなく、「ん」の代わりになる記号として利用しているだけ。
- 英語表記(ん ≠ n)
- 基本的には1つの文字につき1つの音(例外は多いが)なので、実際に発音される発音によって「 n 」と「 m 」を使い分ける。
ということで、日本人しか読まないところに書く場合は「tenpura」と書いても問題ありません。
なぜなら、日本人の間では「ん = n 」と 理解されているため、「 n 」と書かれていても [ m ] の発音をしてくれるから。
ローマ字では、「発音」ではなく表記を重視しているんですね!
「ん」が [ m ] の発音になるのはどんなとき?
では、日本語の「ん」が [ m ] の発音になるパターンを見てみましょう。
唇を使って発音する「ぱ行」「ば行」「ま行」の前に来る「ん」は [ m ] の発音になります。
- 「ぱ行( p )」の前
-
- アンパンampan
- 散歩sampo
- 「ば行( b )」の前
-
- 日本橋nihombashi
- 乾物kambutsu
- 「ま行( m )」の前
-
- 群馬Gumma
- 3メガsammega
「群馬(Gumma)」「3メガ(sammega)」の「ん」の発音については「ん」と「n」の違いという記事も合わせてお読みください。
実はこのルールを知っておくことで、英語のスペルを覚えるときにも役に立ちます。
なぜなら、英語のスペルでも「 p 」「 b 」の前には基本的には「 n 」ではなく「 m 」がくるからです。
- 「 p 」の前
-
- compare(比較する)
- camp(キャンプ)
- 「 b 」の前
-
- September(9月)
- emblem(象徴)
ただし、「input(インプット)」「cranberry(クランベリー)」のように、2つの語が合体してできた言葉には「 n 」がくる単語も多いです。
英語で「nb」や「np」のようなスペルになっていても、実際には日本語のように音声変化が起こり [ m ] の発音になります。
スペル | 実際の発音 |
---|---|
input | ɪmpʊt |
cranberry | kræmberi |
ちなみにこの法則がわかると、次の画像にある「こんぴらさん」の英語表記が変だということに気づきますね。
そうです。海外の人に読みやすくするには「Kompirasan」が正解ですよー!
次の画像の「なんば」のアルファベット表記はきちんと「Namba」になっていますね。
インスタでも投稿しています!
まとめ
さて、今回はなぜ「tempura」の「ん」は「 m 」なのかについてお話ししました。
日本人にしか読まれない場合は「tenpura」と書いても問題ありませんが、外国人が読む「メニュー」などでは「tempura」と表記しましょう。
そのほうが発音に忠実だし、発音しやすいですので!
こちらは関連記事です。