「king」の発音は「キング」じゃなかった?!「ng」を完璧に発音するコツを紹介!

ヨス

執筆者

アメリカ留学で言語に興味を持ち、日本語教師の資格をとる。メディアなど掲載多数。著書は2冊。一般的には学ばない「日本語の音声」を学ぶことで英語の発音を習得し、独自の英語の発音習得メソッドを持つ。→ ヨスについてはこちら

今回は英語の発音記号でよく見かける「 ŋ 」という記号の発音についてです。

たとえば、「king」の発音で [ kiŋ ] と書かれていたりしますが、ちゃんと発音できますか?

もし、「キング」と発音していたら大間違いなので、この記事を参考に直しましょう!!

「king」を発音してみてください

英語の「king」という単語は、カタカナ英語として日本語になっています。

「○○キング」とか「キング・オブ・○○」みたいに使ったりしますよね。

日本語では「キング」というふうに言いますが、
英語では「キング」って発音しないんですよ!!

ヨス

いや、「king」は「キング」だろっ!!

……とツッコみたくなりますが、違うんです。

2文字だが音声は1つ

そもそもなんですが、「king」のように「ng」という2つの文字で表記されるのがややこしいんですよね……。

「 n 」と「 g 」を連続で発音して「ングッ!!」って言いたくなるのも当然というものです!!

でも、この「ng」は国際音声記号としては [ ŋ ] と書き、1つの音声なんです。「ン+グ」みたいに2つの発音を言うのではないということです。

ヨス

日本語の「しゃ・しゅ・しょ」も2文字だけど1つの音声というのと同じですね!

ということで、まずは英語で「ng」で表記されるところは [ ŋ ] という1つの音声になるということを覚えておいてください。

ngの文字は ŋ という1つの発音になる。

[ ŋ ] の発音はどんな音?

では、[ ŋ ] の発音です。どんな発音なんでしょうね。

わたしが発音しているものを聞いてみてください!(ちょっと鼻が詰まっているときに録ったのでアレですが)

この順に発音してます

  1. king
  2. ring
  3. sing
  4. young

どうでしょうか?「king」なら「キン」に近い発音に聞こえませんか?「グッ!」っていう音は聞こえませんよね?

ということで、日本語には下記のようなカタカナ語が満載ですが、今日から全部「グ」は禁止です(笑)!

今日から「グ」は禁止!

  • ヤン(young)
  • リン(ring)
  • シン(sing)
  • ハイキン(hiking)
  • ランニン(running)
  • ウォーキン(walking)
  • クライミン(climbing)
  • ウォッチン(watching)
ヨス

でも、よく考えると「Hong Kong(香港)」とか「Ping-Pong(卓球)」は日本語で「ホング・コング」「ピングポング」とは言いませんね。「ホンコン」と「ピンポン」です。なぜだ?!

舌を上あごから離した瞬間には [ g ] のような音声が出ますが「グ」の発音とは違います!

[ ŋ ] の発音の仕方

では具体的にどうやって [ ŋ ] を発音するかについて説明しますね!

[ ŋ ] という音声は正式には「軟口蓋鼻音(なんこうがいびおん)」という名前です。

まず、舌の根元を「軟口蓋」と呼ばれる部分(参考: 口の中の名称)に当て、口から出る息を完全にふさぎます

そのまま、口から出るはずだった音声を鼻から出す(→ 鼻音)のが [ ŋ ] の発音です。

「 ŋ 」の発音
[ ŋ ] の発音

辞書を使っている方なら「ing」の発音記号が「 iŋのように書かれているのを見たことがあると思います。割と有名な発音記号ですよね。

先ほども書きましたが、英語表記では2文字で「ng」と書きますが、この [ ŋ ] は1つの音声です。

日本語で使われる [ ŋ ]

いやー、こんな口の中の図を見せられ「さあ発音してみろ!」と言われても、いきなり言うなんて無理ですよね。

[ ŋ ] の発音
[ ŋ ] の発音

でも、実はこの [ ŋ ] という発音は日本語でも無意識に発音している音声なんですよ!

たとえば、「銀行(ぎこう)」とナチュラルスピードで発音するときの「ん」の発音です。

つまり、「ん」のあとに「カ行」や「ガ行」が来るときの「ん」の発音が、 [ ŋ ] の発音になります。

ヨス

日本語の「ん」の特性ですが、あとに続く音声に備えて「ん」の発音が変化します。詳しくは日本語の「ん」の発音についてを!

ほかにも、こういう単語の中の「ん」の発音が [ ŋ ] ですね!

[ŋ]の発音になる「ん」

  • 銀行(ぎこう)
  • 漫画(まが)
  • 参加(さか)
  • にゃ
  • ランキング(らぐ)

こんな感じで、[ ŋ ] の音は頻繁に日本語の中で発音されているんです。完全に無意識のうちに!

[ ŋ ] の発音のコツ

では [ ŋ ] の発音のコツですが、これも簡単です。たとえば「king」を発音しようとするときはこんなふうに言ってください。

[ ŋ ] の発音のコツ

「キング」を言おうとして、「グ」を言わずに「ン」で止める!!

最後の「 g 」を発音してしまいたくなりますが、「ン」で止めるだけです!!

たぶんですが、最初のうちは中途半端で気持ち悪い気がするかもしれませんね(笑)。

ヨス

自信を持って発音して大丈夫ですよ!

とにかく、これが正しい発音なので、慣れてください!

英語では[n]と[ŋ]の区別がある

さて、英語では [ n ] と [ ŋ ] の発音を間違えると伝わらないことがあります

たとえば、こんな感じで2つの発音の違いで、単語の意味が変わってしまうんですよ。

[n]と[ŋ]の違い
[n]の発音 [ŋ]の発音
sin(罪) sing(歌)
thin(薄い) thing(もの)
win(勝つ) wing(羽)

例えば「sin」と「sing」はどちらもカタカナだと「シン」と書きます。でも、英語だと「sin(罪)」と「sing(歌う)」はまったく意味が違うんですね。

逆に、日本語では [ ŋ ] の発音は使われていますが、[ ŋ ] の発音をしようとして言っているのではないのです。

「キング」と発音する過程で [ g ] の発音(グ [ gu ])に引きずられ、知らず知らずに [ ŋ ] の発音をしているだけなのです。

他にも日本語では鼻濁音の「が [ ŋa ] 行」の発音があります。

でも、これもたとえば「鏡(かがみ)」の発音を「kagami」と発音しても「kaŋami」と発音しても意味の違いにはなりません。

ヨス

発音の違いが「意味の違い」にならないから、存在に気づかないんですね。

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まとめ

今回は「king」の「ng」の発音である [ ŋ ] の発音(軟口蓋鼻音)についてガッツリと紹介しました。

とにかく「キング」の「グ」は意識して言わないようにしてください。「グ」を言いたくなるけど、「ン」で止める!

ちなみに [ n ] の発音はこちらをご覧ください!

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アメリカ留学で言語に興味を持ち日本語教師に。その後、自分が「音声学」に猛烈に惹かれることに気づく。一般的には学ばない「日本語の音声」を学ぶことで英語の発音を習得し、独自の英語の発音習得メソッドを持つ。>>ヨスについて詳しくはこちら
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