英語字幕版『君の名は。』を観て日本語と比べよう! なぜ「口噛み酒」は「Kuchikamisake」なのか?

ヨス

執筆者

アメリカ留学で言語に興味を持ち、日本語教師の資格をとる。メディアなど掲載多数。著書は2冊。一般的には学ばない「日本語の音声」を学ぶことで英語の発音を習得し、独自の英語の発音習得メソッドを持つ。→ ヨスについてはこちら

ハリウッドでも実写化が決定した映画『君の名は。(Your Name)』。

今回はそんな『君の名は。』(アニメ版)の英語字幕と日本語のセリフを比べていきたいと思います!

いや、ホントに何回見てもいい映画です。

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ただひたすらに美しい眺めだった

映画の序章で出てくる印象的なセリフからです。

あの日、星が降った日
(That day when the stars came falling.)

そのまんまですね。日本語の「降った」は「fall」になるんですねー。

それはまるで
(It was almost as if...)
まるで、夢の景色のように
(as if a scene from a dream.)

「まるで」は、やはり「as if」ですね。

ただひたすらに……
nothing more, nothing less
美しい眺めだった
(than a beautiful view.)

「ただ、ひたすらに」は「nothing more, nothing less(これ以上もこれ以下もなく)」という言葉で訳していますね。

よく考えると「ひたすら」って妙な日本語ですね。説明が難しい(笑)。

「瀧くん、覚えてない?」

主題歌のあとに聞こえる、この映画の重要なシーンです。

瀧くん、瀧くん 覚えてない?
Taki, Taki, Dont you remember me?)

そう、電車で三葉が瀧に組紐を渡すシーンですね。

まず、瀧のことを「瀧くん」ではなく、「Taki」と呼んでいるところが全然印象が変わってます。

ヨス

英語ではふつう、名前を呼び捨てで呼びますからね。「覚えてない?」はそのまま「否定疑問文」ですね。

そして……

名前は三葉!
(My name is Mitsuha!)

ここは想像通りです。そのままでした。

「お前は誰だ?」

そして、三葉のノートに書かれていたこの文字。

お前は誰だ?
(Who are you?)

これも「Who are you?」です。ほかに言いようがないですよね。

ただ、英語では二人称は「you」だけです。

三葉は瀧のことを「あなた」「きみ」のように言って、瀧は三葉のことを「おまえ」って呼んでいます。

でも英語だと全部「you」になります

カタワレ時

物語では、高校の授業中で初めて「カタワレ時」という言葉が出てきます。

この映画の中で、最も重要なキーワードの1つである「カタワレ時」は英語字幕ではなんと呼ばれているのでしょうか?

カタワレ時
(Kataware-doki)

……と、そのまんまでした。

たそがれ
(twilight)

……という説明ももちろんでてきましたよ!

じゃあ次、宮水さん

学校の授業のシーンの続きですが、文化の差を感じる字幕がありました。

じゃあ次、宮水さん
(OK next, Mitsuha.)

これ、ユキちゃん先生が三葉を当てるときのセリフですが「宮水さん」というふうな名字ではなく、「三葉」と名前を呼び捨てで呼んでいますよね。

英語圏では学校の先生は生徒のことを名前で呼び捨てが普通です。

日本語とかなり違います!

ずっと変な夢を見とったような気が

高校でテッシーとさやちんといっしょに三葉が話をしているシーン。

そういえばずっと変な夢を見とったような気がするんやけど。なんか別の人の人生の夢?
(Well, I do feel like I've been in a strange dream lately... A dream about someone else's life?)

「そういえば」が「Well」に訳されています。そうか、「そういえば」はフィラーなんですねー。

「見とった」という方言ですが、これが「have been」という現在完了形になっていますね!

腐敗のにおいがするなぁ

個人的にすごく印象に残っているテッシーのセリフがこれ。

腐敗のにおいがするなぁ
(I smell corruption.)

ここでテッシーの言う「腐敗のにおい」というのは「汚職」のことを指しています。

英語字幕ではそのまんま「corruption(汚職)」が使われていますね。でも「におう」がそのまま「smell(においがする)」になっています。

英語も日本語と同じで「感じる」というニュアンスで「smell(においがする)」を使うんですね。

口噛み酒

「カタワレ時」と並んで、超重要なキーワードである「口噛み酒」ですが、これも英語字幕では……

口噛み酒
(Kuchikaisake)

……になっています。

ただ、少し違うのがおわかりでしょうか? 日本語では連濁という音声変化があります。

つまり、

色 + (かみ) = 色(がみ)

……というふうに、あとにくっついた音声が「か → が」のように濁ります。

本来、「口噛み酒」の発音も……

口噛み + (さけ) = 口噛み(ざけ)

のように濁るはずですよね? 日本語のセリフでは確かに濁っています。ところが、

Kuchikamisake

……という字幕になっていますね? なんでだろう?

これ、予想ですが、「sake」という単語をちゃんとわかってもらうためだと思います。

英語では「酒」はそのまま「sake」で通じます。でも日本語の音声に合わせて「Kuchikamizake」と書いたらどうでしょうか?

この「zake = sake」ということがわかりづらくなりますよね?

なので、英語字幕では「Kuchikamisake」というスペルにしているのだと思います。

神様はうれしいんかなあ?

口噛み酒のシーンでもう1つ、英語っぽいところを。

口噛み酒。神様はうれしいんかなあ? あんな酒もらって。
("Kuchikamisake." Do the gods appreciate sake made that way?)

なんと、「神様」は「gods」というふうに複数形になっているじゃないですか?!

日本人の言う「神様」は唯一の神じゃないというのを表現しているんでしょうかね。

キリスト教だと神は1人なので「God」というふうに「 g 」を大文字で固有名詞として使います。

あと、「あんな酒」という表現が、「sake made that way(あんなふうに作られた酒)」というふうに具体的な表現になっています。

もうこんな町イヤやあ!

そして、三葉の有名なこのシーン。

もうこんな町嫌やあ! こんな人生嫌やあ!
(I hate this town! I hate this life!)

これはそのまんま。英語の授業では「hate = 憎い」って習いましたが、「イヤ」という言葉にも合いますね。

来世は東京のイケメン男子にしてくださーい!!
(Please make me a handsome Tokyo boy in my next life!)

「イケメン」の英語訳は「handsome」です。「ハンサム」というカタカナ英語はほぼ廃れていますが、英語では廃れていません。

「来世」も「next life」になっています。

東京やぁ〜!

瀧の身体になった三葉が外に出て東京の景色を見ながら言う印象的なシーン。

東京やぁ〜!
(I'm in Tokyo.)

日本語では「東京だ」という感じですが、英語だと「I'm in Tokyo」です!

「東京にいる〜!!」というニュアンスで、じゃっかん日本語と違うふうに感じられますね。

司くん?

お次は、瀧(中身は三葉)と友達の司が会うシーンです。

つかさくん?
(Oh, Tsukasa?)

さっきも出てきましたが、英語では下の名前を呼び捨てするのが普通です。

でも呼び捨てにすると次のシーンに続きません。

君付け? 反省の表明?
At least you sound apologetic.

おおー! ここはまったく違うセリフになっていますね!

「At least you sound apologetic(少なくとも反省しているみたいだな)」という感じでしょうか。

「sound(〜のように聞こえる)」を使っているので、瀧の話し方から「反省しているようだな」ということを感じたことにしているんですね。

ここで瀧が「Tsukasa-kun?」と言うとオカシイですもんね。日本語を知らない人が見ると「-kun」って何?と思いますから。

えーと、わたし……

瀧の高校の屋上でのシーン。

えーと、わたし……
(-Uh... Well... I (watashi)...)
わたし?(-Feminine?)

いつもなら自分のことを「オレ」と呼ぶ瀧が「わたし」って言ったことに違和感を持った司 & 高木とのやりとりです。

英語では自分のことは「 I 」しかないので、カッコの中に苦し紛れに「watashi」と書いています(笑)。

「feminine」は「女っぽい」という意味なので司と瀧が「ええ?! なんか女っぽいぞ?」と言ったことになってます。

説明くさいですが、仕方ないのかな。

つづいて……

I (watakushi)!
I (boku)?
I (ore)?

「watakushi」「boku」「ore」と、字幕でも日本語の一人称を連呼していますね。これ、完全に内容を変えたほうが良かった気がしますが、難しいんでしょうね。

個人的には、ちゃんと英語圏の人が見て伝わるのか心配ですが……

奥寺先輩

では「奥寺先輩」という表現はどうでしょうか?

英語では年上でも下の名前を呼び捨てするのが普通ですからねー。

奥寺先輩
Ms. Okudera)

女性につける「〜さん」の意味である「Ms.」を使って、名字の「奥寺」をそのまま使っています。

ちなみに「奥寺ミキ」という名前ですが、英語圏のように「Miki!」と呼ぶと一気に雰囲気(関係性)が変わるので、「Ms. Okudera」と訳しているのでしょう。

私、夢の中であの男の子と入れ替わっとる?!

ヨス

そして、映画のプロモーションでもよく見たこのシーン。

これって、これってもしかして
(Is this... Could this be...)
これって、もしかして本当に
(Could this be that we're really...)

英語ではこの段階で「we(わたし達)」が出ていますね。語順が逆ですからね。

私、夢の中であの男の子と
(In our dreams, that guy and I are...)
オレは夢の中であの女と……
(In our dreams, that girl and I are...)

ここも、「夢の中で」が「in our dreams」になっています。

入れ替わっているのは「2人の夢の中」なので複数形なんですねー。ややこしい(笑)。

「あの男の子」の訳は「boy」ではなく「guy」を使っていますね。「guy」には「やつ」っていう意味もあるのでこれがカジュアルで合うんでしょうね。

逆に瀧が言った「あの女」という言い方は「girl」になっているんですね。

  • あの男の子 → that guy
  • あの女 → that girl

この変化は興味深いですね。

三葉のキャラクター的に「あの男」と言うよりも柔らかめの「あの男の子」の方が合うからでしょうね(あとから「あの男はー!?」って感情的に言うシーンもありますが)。

でも英語だと「boy」ではなく「guy」。逆に「あの女」が「girl」になっているのは、ほかに合う表現がないからでしょう。

入れ替わってる?!
switching places?

「入れ替わる」という言葉は「switch places」なんですね。これも「2人」なので複数形の「places」になっていますね。

それがムスビ、それが時間

お次は、三葉のおばあちゃんこと一葉の重要なセリフです。

より集まって形をつくり
(They converge and take shape.)

「converge」は「一点に集中する」という意味です。

「They」というのはここでは糸たちのことですね。

ねじれてからまって
(They twist, tangle)

「ねじれる」は「twist」、「もつれる・からまる」ことを「tangle」と言います。

ときには戻ってとぎれ、またつながり
(sometimes unravel, break, then connect again.)

「unravel」は「ravel(もつれさせる)」に「un」が付いて反対の「ほどける」という意味になります。

それがムスビ、それが時間
(Musubi - knotting. That's time.)

「ムスビ」は「Musubi」と書かれています。もちろん「knot(結び目を作る)」という言葉で、「Musubi」の説明もしてくれていますね。

お姉ちゃん、いよいよヤバイわ

お次は三葉の妹 四葉のセリフです。

お姉ちゃん、いよいよヤバイわ。
(Mitsuha has finally lost it.)

「ヤバイ」は「lost it」と訳されていますねー。

「いよいよ」は「finally」です。

あと、四葉は三葉のことを「お姉ちゃん」と呼びますが、英語だと「Mitsuha」になりますね。

年上のきょうだいに「お姉ちゃん」「お兄ちゃん」と呼ぶ文化は英語圏にはありませんから。

私たちは合えば絶対すぐにわかる

こちら、涙が出てきそうになるセリフです。

私たちは会えば絶対すぐにわかる
(If we see each other, we'll know.)

日本語では「もし」が略されますが、英語では略さずに「If」が必要です。

私に入っていたのは君なんだって、君に入っていたのは私なんだって
(That you were the one who was inside me. That I was the one who was inside you.)

これも表現としてはそのまんまでわかりやすいですね。

大事な人、忘れたくない人、忘れちゃダメな人

ヨス

そして、こちらも観た人なら涙が止まらなくなるセリフ……。

大事な人、忘れたくない人、忘れちゃダメな人
(Someone dear to me. I don't want to forget. I shouldn't forget!)

「大事な人、忘れたくない人、忘れちゃダメな人」の部分は「誰か/大切な/私にとって」というわかりやすいぐらい「日本語とは逆」の語順ですね~。

そして、こちらのセリフに続きます。

誰だ? 誰だ? 誰だ? 誰だ? 名前は?
(Who? Who?Who? Who? What's your name?)

あのときの瀧の表情、動き、声が目に焼き付いてます。な……涙が……。

ずっと何かを探している

そして最後の方のシーン。序章にあったシーンと同じセリフです。

ずっと何かを探している。
(I'm always searching for something.)

ここで言う「探す」は「search for」がぴったりですね。「look for」ではなく。

いつからかそんな気持ちに取り憑かれている。
(This feeling has possessed me for some time.)

おおー!「気持ちに取り憑かれている」を、「this feeling has possessed me(この気持ちが私に取り憑いている)」というふうに訳しています!

日本語は「受身形」を使うのですあ、英語は無生物を主語にして能動系のままです。いやー、英語らしい。

この「posess(所有する)」には「(悪霊などが人に)取り付く」という意味もあるようです。知らなかった……。

君の名は

そして、最後のシーンです。

三葉に瀧が声をかけます……。

あの!
(Hey!)

ヨス

「あの」が「Hey!」になっとる!!

もちろん、日本人の言う「ヘイ!」とはニュアンスがぜんぜん違いますが、なんか「んん?!」と思っちゃいますね(笑)。

オレ、君をどこかで……
(Haven't we met?)

「オレ、君をどこかで……」という曖昧な表現は、超具体的に「Haven't we met?(オレたち会ったことない?)」に変貌しています。

英語はちゃんと具体的に伝える言語ですからねぇ。

私も
(I thought so too!)

ここも日本語の「私も」とは違って「I thought so too!(私もそう思った!)」になっています。

ニュアンスが違うように見えますねー。

そして、最後の……

君の名前は?
(Your name is...?)

「君の名前は?」は「Your name is...?(君の名前は?)」になっています。

ここが「What's your name?」だとイヤですね。良かった(笑)。

まとめ

さて、今回は映画『君の名は。』の英語字幕版を観て、あーだこーだと書きました。

こういう対比をさせると、英語圏文化と日本文化の差が、そのまま言語の差になっているのがよくわかります。

言語っておもしろいです! というか『君の名は。』は最高の映画です。

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ヨス
アメリカ留学で言語に興味を持ち日本語教師に。その後、自分が「音声学」に猛烈に惹かれることに気づく。一般的には学ばない「日本語の音声」を学ぶことで英語の発音を習得し、独自の英語の発音習得メソッドを持つ。>>ヨスについて詳しくはこちら
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