日本では学校で英語を習いますが、話す練習が足りないと言われていますよね。
そのため、学校では英語の得点が高くても日本語なまりがひどい人もいます。
では「日本語なまりの英語」でも問題ないのでしょうか?
今回は「日本語なまりでもいいの?」という疑問にお答えします。
目次
「OKな日本語なまり」と「NGな日本語なまり」とは?
では「日本語なまり」の英語ではダメなのでしょうか?
この答えは
半分はイエスで半分はノーです。
なぜなら「日本語なまりの英語」とひとことで言っても2種類があるからです。
2種類の日本語なまり
ではこの2種類の日本語なまりの例を見ていきましょう。
英語圏の人に通じる「OKな日本語なまり」
まずは英語圏の人に通じる「OKな日本語なまり」の例を見てみます。
たとえば「彼女」を表す「she」という言葉がありますよね?
この発音を日本人が発音すると日本語なまりになった「シー」という発音になります。
なにが違うのかというと、口の中での舌の位置と口の構えが微妙に変わり、発音も変わるのです(参考: 日本語と英語の「SH」の発音の違い)。
ただし、日本語なまりで「彼女」を「シー」と言ったとしても99%伝わります。
英語には[ ʃ ]と[ ɕ ](日本語の「シ」の子音)の2つの発音の区別がないからです。
つまり、英語の[ ʃ ]の発音が日本語なまりの[ ɕ ]の発音になってもコミュニケーション上は問題ないと言えます。
英語には[ ɕ ]が存在しないため、単語の意味の分別に関係ないからですね!
ちなみに中国語を学ぶ場合は、[ ʃ ]と[ ɕ ]の区別が必須になります。
英語圏の人に通じない「NGな日本語なまり」
では今度は英語圏の人に通じない「NGな日本語なまり」の例を見てみましょう。
「海」を表す「sea」という言葉がありますよね。
この発音を「シー」と言ってしまう人がいますが、これはNGで必ず「スィー」と発音しなければなりません。
ええー! なんで?!
なぜなら「シー」と言ってしまうと「she」の発音だと思われるからです。
「海」と言いたいのに、何度言っても「彼女」だと言っているように伝わるんですね……。
つまり、英語では「シー[ ʃiː ]」と「スィー[ siː ]」の2つの発音を区別して単語を分けているからです(参考: [ s ]と[ ʃ ]の違い)。
[ s ]と[ ʃ ]の発音の違いだけで区別している単語の例を見てみましょう(参考: ミニマルペアとは?)。
S[ s ] | SH[ ʃ ] |
---|---|
C / see(見る)/ sea(海) | she(彼女) |
seat(席) | sheet(シーツ) |
save(助ける) | shave(毛をそる) |
so(だから) | show(見せる) |
sort(種類) | short(短い) |
sell(売る) | shell(貝) |
sit(座る) | shit(糞) |
same(同じ) | shame(恥ずかしい思い) |
sigh(ため息) | shy(恥ずかしがり) |
sift(ふるいにかける) | shift(移す) |
これらの単語を区別するためには、[ s ]と[ ʃ ]の発音を区別する必要があるのです。
つまり、区別できないと文の意味が変わってしまうような日本語なまりは改善する必要がありますね!
日本語なまりの英語でいいの?
OKとNG、2種類の日本語なまりについて紹介しましたが、本題に入りましょう。
日本語なまりのある英語のままでいいのでしょうか?
「NGな日本語なまり」は改善すべき
先述したような、「NGな日本語なまり」は改善すべきだと言えます。
なぜかというと、
コミュニケーションで誤解が生じるからです。
【例】「seat」と「sheet」の違い
たとえば家具屋さんで「I want a sheet.(シーツがほしい)」と言うべきところを「「I want a seat.(席がほしい)」と言ってしまうと、お店の人は「え?」と思います。
まぁ、この程度なら笑ってすませられますが……。
日本語での例
今度はわかりやすいように日本語の例を出しましょう。
たとえば、「来てください」と「聞いてください」は「長音(伸ばし棒)」があるかどうかの違いですよね?
違いは長音の有無
発音としてはかなり似ていますが、意味はまったく違います。
日本語では、「長音」があるかないかでここまで意味が変わるのです。
ところが、残念なことに英語では長音が発音の区別につながりません。
そのため、英語圏の人が日本語を勉強するときに「来て」と「聞いて」の違いで必ずつまずきますが、この発音の違いができないと誤解を招きます。
こういった「意味の分別につながる発音」には「なまり」がないことが望ましいでしょう。
「OKな日本語なまり」はあまり気にしなくていい
逆に「OKな日本語なまり」はあまり気にしなくてもいいでしょう。
日本語での例
わかりやすいように、「なまり」の例を日本語での例をあげて紹介します。
次の音声データは「ドラえもん」の「ラ」の発音を4種類の発音で言っています。
発音の内訳はこちらになっています。
4種類の「ら」
- 普通の日本語の「ら」で発音(発音記号は[ ɾa ])
- 英語の「 L 」で「ら」を発音(発音記号は[ la ])
- 英語の「 R 」で「ら」を発音(発音記号は[ ɹa ])
- 巻き舌の「ら」で発音(発音記号は[ ra ])
どの発音を聞いても同じ「ドラえもん」の姿が頭に浮かびますよね?
なぜなら、日本語には「ら行」に似た発音である[ l ][ ɹ ][ r ]は存在しないからです。
このように、意味の違いにつながらない場合は、なまっていてもかまいません。
言葉はコミュニケーションのためのツール
言葉はコミュニケーションのためのツールであるため、相手にこちらの言いたいことが伝わればなまっていても問題ないからです。
そもそもですが、アメリカやカナダのような英語圏の国に住む人の多くは移民であることをご存じですか?
移民の人たちの英語は母国語の影響でなまっています。
インドから来た人ならインドなまり、中国から来た人なら中国なまり……というように。
そんななまった英語を話す人たちばかりでも問題なく社会は成り立っているのです。
ある意味「方言」と同じように捉えてもいいかもしれませんね。
ただし、上で紹介した「NGのなまり」とは分けて考えましょう。
目的によって「日本語なまり」の許容が変わってくる
どの程度の「日本語なまり」が許容されるのかというと、英語を勉強する「目的」で変わってきます。
旅行レベルなら「NGな日本語なまり」があってもOK
もし、英語圏にちょっと旅行に行く程度なら、さきほど「直さないとダメ」と言った「NGな日本語なまり」があっても問題ないでしょう。
たとえば、子音の後に母音を追加するような強烈ななまりがあってもOKです。
旅行者の場合、その場でさえ伝わればいいんですよね。下手すれば文字に書いて見せたら伝わるし!
「日本語なまり」があっても文脈で伝わることも多い
ぶっちゃけですが、「日本語なまりがひどくても文脈で伝わる」ことも多いのです。
たとえば、海に行って波打つ風景に指を差しながら「ビューティフル・シー」と言ってもこんなふうに伝わるでしょう。
この人、「シー(she=彼女)」って言ってるけど、たぶん「sea(海)」と言いたいんだろうな!
話す言葉は違えど、人間同士ですからね。
「じゃあ、日本語なまりがひどくてもいいじゃん!」と言いたいところですが、すべての言葉がなまっている人と話すのって疲れませんか?
たとえば、日本語がペラペラでも次の音声のようなレベルでなまっている人がいたとしたらどうでしょうか?
この音声、わたしが言っていますがイライラしますよね。すみません(笑)。
意味が伝わったとしても、このレベルのなまりを何時間も聞き続けるとすごく疲れそうです……。
「ただ伝わればいい」から抜け出して、特定の人と何時間も話したいのであれば、「日本語なまり」は極力なくするほうが望ましいでしょうね。
「伝わればいい」より高いレベルを求められる場合もある
さらに、英語圏に留学するとか、英語圏で働くのなら、もう少し日本語なまりがないほうがいいでしょう。
そのほうがコミュニケーションがスムーズだからです。
通訳を目指しているのなら、もっともっと日本語なまりがないほうがいいですよね(笑)。
どのレベルで英語を話す必要があるかによって、日本語なまりがどの程度許されるかが変わってくることは知っておきましょう。
まとめ
今回は「日本語なまりの英語でもいいじゃん!」という意見に対する回答を書きました。
アメリカやカナダのような多民族国家ではいろいろな国のなまりがある英語を皆が話します。
基本的には「日本語なまり」を気にしなくてもいいと思いますが、「伝わればいい」より抜け出したい場合は「NGな日本語なまり」は最低でも改善していくようにしましょう。
特にLとRの発音の違いは乗り越えなければならない壁の1つなので練習をオススメします。