英語の辞書で見かける「発音記号」の役目といえば、単語の発音を知ることです。
日本語だと「フリガナ」のようなものですよね。
その「発音記号」は全部が全部、正確な発音を表していないことをご存じでしょうか?
今回は、辞書で見かける発音記号(Jones式発音記号)とIPA(国際音声記号)の違いも踏まえてお話しします。
目次
辞書で見る「発音記号」は厳密な発音を表していない
実は、辞書で見かける「発音記号」は厳密な音声を表してはいません。
たとえば、辞書のなかでは英語の「 R 」の発音は「 r 」で表記されていますよね?
これだとまるで、日本語の「ら行」の子音と同じ発音のように見えてしまいます。
ぜんぜん発音が違うのにっ!!
そうなのです。
英語の「 R 」の発音と日本語の「ら行」の発音はまったく異なる発音なのです。
「Jones式発音記号」と「IPA」の違い
辞書で見かける発音記号を、さらに精密にしたものが国際音声記号(IPA)です。
実は、辞書で使われているものは「Jones式発音記号」と呼ばれ、「IPA(国際音声記号)」と比べるとかなり簡略化されています。
「Jones式発音記号」は初心者にとって「覚える数が少ない」というメリットがあるため、日本では一般的に使われています。
ところが、先述したように厳密な発音を表記できないというデメリットもあるのです。
それに対して「IPA」は、発音が違うものは「表記の違い」として区別されます。
以下の3つの言語で使われる「 R 」の発音なら、すべて違う表記になります。
日本語の「 R 」 | [ ɾ ](はじき音) (参考: 日本語の「ら行」の発音について) |
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英語の「 R 」 | [ ɹ ](接近音) (参考: 英語の「 R 」の発音について) |
イタリア語の「 R 」 | [ r ](ふるえ音) |
日本語と英語とイタリア語で使われる「 R 」の発音はまったく違う音なのです。
こちらに、4種類の「ら行」に近い発音で「ドラえもん」と言った音声を聞いてみてください。
4種類の内訳はこちらになっています。
4種類の「ら」
- 普通の日本語の「ら」で発音(発音記号は[ ɾa ])
- 英語の「 L 」で「ら」を発音(発音記号は[ la ])
- 英語の「 R 」で「ら」を発音(発音記号は[ ɹa ])
- 巻き舌の「ら」で発音(発音記号は[ ra ])
このようにぜんぜん違う発音なので、それぞれを違う表記にすることで、「見かけ的」にも違う発音であるということが伝わりますね!
なぜ普通の辞書では「IPA」が使われない?
では、なぜ普通の辞書ではIPAで [ ɹaɪt ] とは書かずに [ raɪt ] と書くのでしょうか?
なんで辞書では「IPA(国際音声記号)」が使われないのでしょうか?
「 r 」は「 ɹ 」に比べると圧倒的になじみのある文字だし、わかりやすいからでしょう。
たとえば、英語の勉強をはじめたばかりの人が「 ɹ 」という文字を見てもこんなふうに思いますよね。
なにこの謎文字?! 意味わかんない!
慣れてないアルファベットだけでなく、さらに「発音記号」を覚えるなんて負担なのです。
だからこそ「なるべくややこしい文字は使いたくない」という考えからJones式発音記号を採用し、「 ɹ 」の表記を避けているのでしょう。
ただし英語に「[ ɹ ](接近音)」と「[ r ](ふるえ音)」の区別があれば「 r 」の表記を避けたはずです。
発音記号として「 r 」を使っても競合する音声がないからこそ、安心して「 r 」を使えるというわけですね。
このメディアでも基本的には辞書に沿って表記します
本メディアでもその表記に合わせ、基本的には[ r ]のような辞書で馴染みのある表記を使います(アレンジはします)。
そのうえで、「本当はこういう発音なんだよ」という部分を説明するときだけ、IPAを紹介します。
もう一点、発音記号を表記するときですが、本来は次のように [ ]と / / を使い分けるのがふさわしいです。
2つの使い分け
上のように、本来「 ɹ 」で書くところを「 r 」を使っているのは簡易表記であるため、/ / を使うほうがいいのですが、本メディアではすべて [ ]で統一しています。
だって、ややこしく見えますからね……。
まとめ
さて今回は、辞書で目にする「Jones式発音記号」は、本来の発音記号「IPA」とは違うという話でした。
発音記号は覚えるのが大変なイメージですが、英語の発音をよくしたいなら少しずつ慣れることをオススメします。
発音を理解するお手伝いをしてくれるスゴイやつですから!