「カタカナでは表記できない音声が外国語にはある」という事実を知っておこう

ヨス

執筆者

アメリカ留学で言語に興味を持ち、日本語教師の資格をとる。メディアなど掲載多数。著書は2冊。一般的には学ばない「日本語の音声」を学ぶことで英語の発音を習得し、独自の英語の発音習得メソッドを持つ。→ ヨスについてはこちら

英語の発音をするときに、「これってどう発音すればいいの?!」というものに出合うことがありますよね。

その対策として活躍するのが「カタカナ」。こんな感じで、ふりがなを打って発音を表記します。

カタカナでふりがなを打つ例

  • light(ライト)
  • earth(アース)
  • run(ラン)

この方法は英語学習の初心者には分かりやすいし、受験のために勉強するのなら強力な助っ人になりますよね。

でもその反面、英語の発音を上手くしたいという場合には邪魔をすることがあるんです。

今回は、日本語では表記できない音声が、英語をはじめとするほかの言語にはあるんだよというお話です。

カタカナですべての発音が表記できるというカン違い

わたしが留学に向けて英語を勉強し始めた18歳ぐらいのころ、勘違いしていたことがあります。

それが「カタカナを駆使すればどんな発音も表記できる」という妄想です。

たとえば、「正しい」を英語で「right」と言いますが、カタカナでは「ライト」と書きますよね?

でも、これって本来の英語の発音からは遠くかけ離れています。

その対策として、カタカナを駆使するとこんな表記に!

カタカナを駆使した表記

right(ゥルゥアィトゥッ)

これ、英語の発音がすでにできる人なら、ある程度分かるかもしれませんが、ほとんどの方がこんな反応でしょう。

ヨス

読めねぇよ!!

そう。カタカナ表記を見て正しい発音ができるのは、世界でただ1人「そのカタカナ表記をした人」だけなんです!

カタカナでは表記できない
カタカナでは表記できない

つまり、再現性が無いということですね。

「日本語では表記できない発音がある」という事実

では、なぜカタカナでの表記では正しい発音ができないのでしょうか?

それは、日本語にない発音を無理やりカタカナで表現しようとしているからです。

これ、本当に理解しておいてほしいのですが
日本語ではどうあがいても表記できない発音が、英語をはじめとするほかの言語にはいっぱいあります。

ヨス

たとえば、英語の「 L 」や「 TH 」の発音。こんなふうにカタカナで表記されますよね?

英語→カタカナ表記の例

  • lightイト)
  • earth(アー

ところが、「TH」の発音 「 L 」の発音日本語には存在すらしない音です。

日本語にある発音の表と照らし合わせると?

上で例に出した「 L 」と「 TH 」の発音ですが、発音記号で書くとこうなります。

「L」と「TH」を発音記号で書くと?
Lの発音 [ l ]
THの発音 [ θ ]

この発音記号は国際音声記号と呼ばれる記号です。

ヨス

ちなみに国際音声記号は、1つの記号につきたった1つだけの音声が当てはめられています。

今度は日本語の発音の基本子音の音声記号一覧を見てみましょう。

日本語にある子音の表
日本語にある子音の表(※参照: 鼻濁音「か゜」ザ行には2種類ある

どうでしょうか? [ l ] も [ θ ] もありませんよね?

これが、「日本語の発音に存在しない」という意味です。

「似ている音で置き換える」という問題

[ l ] も [ θ ] も日本語の音声に無いとすれば、どうやって表現すればいいのでしょうか?

カタカナを使う場合、日本語にある音声の範囲で表現することになります。

そうなると、「近い音(似ている音)での置き換え」になってしまうわけです。

ヨス

下の表のように、両者はまったく違う発音なのに強引に置き換えられるんですよ!

  英語での発音 日本語で強引に置き換えた発音
Lの発音 [ l ] [ ɾ ]
THの発音 [ θ ] [ s ]

でも、カタカナに当てはめて表記してしまうと、あたかもカタカナの発音で読んでも伝わるかのような錯覚を生み出してしまいます。

英語→カタカナ表記の例

  • lightイト)
  • earth(アー

ほら。こんなふうに表記すると「light」は「ライト」とそのまんま読むみたいに見えませんか? ぜんぜん違うのに!

何度も書きますが、日本語にそもそも存在しない音をカタカナで表記することは不可能なのです。

ヨス

太鼓を使ってギターの音を作ろうとしているのと同じです!

「英語話者」が話す日本語の発音も同じ問題

これは、日本人の発音だけの問題ではありません。

たとえば英語しか話せない人が日本語の「ふ」を発音するとどうしても「 F 」の発音になります。

ヨス

これも同じ原理なんですよね。

日本語の「ふ」の音は音声記号で書くと [ ɸu ] と書きます。

でも英語で使われる子音の中に [ ɸ ] がないため、代用として近い音である [ f ] が使われるんですね。

英語圏の人の発音には「英語のなまり」があり、日本語圏の人の発音には「日本語のなまり」があるというのはこういうことなんですね。

ここでは「う」の発音は2種類あって日本語の「う」の発音が [ ɯ ] であることは無視しています。

正しい発音の表記には「発音記号」に頼るしかない

それでも正しい発音を身に着けたいと思いますよね。

では、この問題をどうすればいいのかというと、わたしは「発音記号(国際音声記号)」に頼るしか無いと思っています。

たとえば国際音声記号なら、日本語の「ら」の発音も、英語の「 L 」の発音も「 R 」の発音も、全部異なる表記ができるからです。

3種類の「ら」

  • 日本語の「ら」の子音の発音記号 …… [ ɾ ]
  • 英語の「 L 」の発音記号…… [ l ]
  • 英語の「 R 」の発音記号 …… [ ɹ ]

この「表記が違う」というのがポイントで、表記が違えば音声も違うだろうということが理解しやすいからです。

日本語で「light」も「right」もどちらも「ライト」としか表記できないことは、LRの発音の違いを理解する上で弁慶の泣き所になっているんですね。

ついでに書いておくと、よく見る [ r ] の文字はイタリア語などにある「巻き舌の『ラ』」の子音を表現しています。

まとめ

というわけで、カタカナではぜったいに表現できない音声が、英語をはじめとする外国語にはいっぱいあるというお話でした。

もちろん、発音するときに使うカタカナは便利です。それを使ってはいけないということではありません。

知っておいてほしいのは、カタカナはあくまで「初心者向けの苦肉の策」であって問題点が多いという事実です。

その事実を知った上で、効果的に使いましょう。

こちらも参考になるのでぜひご覧くださいね!

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アメリカ留学で言語に興味を持ち日本語教師に。その後、自分が「音声学」に猛烈に惹かれることに気づく。一般的には学ばない「日本語の音声」を学ぶことで英語の発音を習得し、独自の英語の発音習得メソッドを持つ。>>ヨスについて詳しくはこちら
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