今回は子音の中でも特にパワーを使う破裂音について紹介します。
破裂音は、ほぼすべての言語にある音声だと思いますが、日本語では[ p ] [ b ] [ t ] [ d ] [ k ] [ g ] の6種類が使われています。
その破裂音がどういう音声なのかということから、英語にある破裂音についても紹介しますね!
破裂音って何?
まずは「破裂音(英語では『explosive』)」がどんな音声かについて紹介しますね。
「破裂音」は口の中を閉鎖して破裂させる音
「破裂音」という、じゃっかん物騒な名前ですが、「破裂」というその名の通りの動作が口の中で行われます。
たとえば「プッ」と言ってみてください。
口の中に入れたスイカの種を遠くに飛ばすようときの「プッ!」のイメージで。
「ぷ( pu )」ではなく、子音の「 p 」だけで発音するのを意識してみてください(← これに関しては後述しています♪)。
このときの「プッ!」の音が [ p ] の音なのですが、この発音するときの口に注目してください。
発音する前の準備として、上唇と下唇を合わせて、一度口の中を閉じます。
そして、口の内側から唇のほうに向かって軽く空気で押し、それがあたかも破裂する風船のようになって [ p ] の音が作られているんです。
[ p ] の音の作られ方
- 上唇と下唇で口を閉じる(口を閉鎖させる)
- 上・下唇が合わさっているところに向かって空気を送る(空気を溜める)
- 空気がたまりすぎて破裂するような [ p ] の音が出る
破裂音を出すときの基本
その「破裂音」ですが、どうすれば上手に発音できるのでしょうか?
具体的な2つの方法を紹介します。
母音をつけない
破裂音だけを練習するときに気をつけたいのは母音が入らないようにすることです。
たとえばこちらの2つを聴き比べてください。
こちらの順に発音していますが、違いはわかりましたか?
- 日本語の「プ(pu)」
- 子音の [ p ]
日本語は、基本的に「 p 」のような子音だけで終わることがない言語です(マニアックに言うと開音節という種類の言語)。
そのため「 p 」だけの発音をしようとしても「 u 」の発音を合体させてしまい [ pu ] と言ってしまいがちです。
[ p ] 以外の破裂音も同じです。 [ t ] の発音をするときも、「 トゥッ(tu)」にならないように気をつけましょう。
英語の破裂音は日本語より息を強く吹き出すイメージ
破裂音は日本語も英語も、どの言語も同じように発音されます。
でも日本人は上でも書いた内容の繰り返しになりますが、「子音だけを発音すること」に慣れていません。
そのため、もっと「音を出す」というイメージで発音するとやりやすいです。
とくに、英語の破裂音を練習するときは、少しだけ強く息が吹き出されるイメージでやってみてください。
破裂音の種類
では破裂音にはどんな音声があるのでしょうか? 具体的に紹介しますね。
実は破裂音ですが、日本語も英語も同じものしかないので、覚えやすいですよ。
両唇破裂音 [ p ] [ b ]
まずは唇を使って破裂音を作る両唇破裂音です。
こちらは [ p ] と [ b ] が存在します。
無声両唇破裂音 [ p ]
両唇破裂音で、のどの振動を伴わない音声を「無声両唇破裂音」と呼びます。
日本語の「ぱ行」の子音である [ p ] ですね。
口の中のスイカの種を遠くに飛ばすようにすると発音しやすいですよ。
有声両唇破裂音 [ b ]
両唇破裂音で、のどを振動させる音声を「有声両唇破裂音」と呼びます。
こちらは「ば行」の子音である [ b ] の発音がそうですね。
「ブッ」と言うときに、「う( u )」を発音しないように気をつけて言いましょう。
歯茎破裂音 [ t ] [ d ]
今度は、歯茎に舌先をしっかりとくっつけて、離した瞬間に「破裂するような音」を作る「歯茎破裂音」です。
「歯茎」というのは、上の前歯の根本あたりですね(下の図を参照)。
上の前歯と歯ぐきの境目で、「歯ぐき側」を舌先を当てるようなポジションです。
この場所に舌を当て、空気を破裂させるように発音する音声を「歯茎破裂音」と呼びます。
無声歯茎破裂音 [ t ]
歯茎破裂音で、のどの振動をともなわないものを「無声歯茎破裂音」と呼びます。
これは日本語の「た行」の子音 [ t ] の発音です(厳密には「ち」と「つ」は別の子音)。
発音するときには「トゥッ」のように「ウ」の発音が入らないようにしましょう。
ちなみに、条件によっては「フラップT」と呼ばれる発音になります。
有声歯茎破裂音 [ d ]
歯茎破裂音で、のどを振動させる音声を「有声歯茎破裂音」と呼びます。
こちらは日本語の「だ行」の子音で [ d ] の発音ですね(厳密には「ぢ」と「づ」はべつの子音)。
軟口蓋破裂音 [ k ] [ g ]
今度は、「軟口蓋」と呼ばれる、口内の奥の方を使う音です。
「軟口蓋」というのは、下図のように、口の中の上あごの奥の方の部分の名前です。
ほかの部分と比べ、柔らかいので「軟」口蓋と呼ばれています。
ここの部位に、舌の根本のほうを持ち上げてくっつけ、破裂させるようにして出す音を「軟口蓋破裂音」と呼びます。
無声軟口蓋破裂音 [ k ]
軟口蓋破裂音で、のどの振動をともなわないものを「無声軟口蓋破裂音」と呼びます。
これは「か行」の子音である [ k ] の発音です。
「か行」が舌の根本あたりで発音されているなんて、なかなか気づかないですよね。
わたしも音声学を本格的に学び始めてやっと気づきました(笑)。
有声軟口蓋破裂音 [ g ]
軟口蓋破裂音で、のどを振動させる音声を「有声軟口蓋破裂音」と呼びます。
こちらは「が行」の子音である [ g ] の発音ですね。
興味のある方は「日本語には二種類の『が』がある」という記事もオススメ。
「英語の破裂音」に生じる音声変化について
上で紹介した「破裂音」ですが、英語の破裂音に関しては特別なルールがあります。
2つのルールを紹介しますね。
うしろにストレスのある母音がつづく「無声破裂音」は「有気音」になる
まずは無声破裂音が有気音になるという音声変化が英語にはあります。
無声破裂音というのはこちらの3つですね。
3つの無声破裂音
- [ p ]
- [ t ]
- [ k ]
実は、この3種類の無声破裂音ですが、うしろにストレス(アクセント)がくる母音がつづくとき、有気音になります。
有気音とは、こちらの図のように強い息をともなう音のことです。
上の図のように、ティッシュを顔の前に置いて確かめてほしいのですが、有気音になると、息の量が大きくなりますよ。
たとえばこちらの3つの例ではどれも語頭の子音が有気化し、息を強く吐きながら発音します。
有気化する語頭の音
- pea(えんどう豆)
- tea(お茶)
- key(カギ)
実際の発音はこちらです。
有気音ふつうの読み有気音の順番に読んでいますよ。
有気音について、くわしくはこちらをどうぞ。
「文末」に来る破裂音は無音化される(アメリカ英語)
そして、もう1つ大きなルールとして「無音化」があります。
文の最後に破裂音が来た場合、音声が無音化するんです。
たとえば「Hurry up(急いで)」の発音で説明しますね。
語尾にくる破裂音の例
ハリーアップ
発音は、「ハリーアップ」ではなく、「ハリーアッ」のようになります。
「up」の「 p 」は破裂音なので、無音化され、発音されなくなるんです。
ただしこれはアメリカ英語の特徴で、イギリス英語ではそのまま発音されますよ!
まとめ
さて今回は破裂音という子音について紹介しました。
英語の破裂音を発音するときも、日本語の破裂音と同じなのでそこまで困らないと思います。
ただし、語頭に来る時の[ p ] [ t ] [ k ] は、息を強く出す発音になるのでお気をつけを!