「カタカナ語」をご存じでしょうか?
海外から入ってきた言葉を「カタカナで表記した言葉」のことですね。「apple」を「アップル」と書くような。
今回は、その「カタカナ語」を英語の発音をするときにも適応させ「カタカナ英語」でしゃべることについてです。
「カタカナ語」が日本人の英語習得の邪魔をしているというお話です。
- 日本の英語の授業
- 日本人の「国民性」
- 「カタカナ英語」の存在今ココ
- 日本語と英語が言語的に違いすぎる
- 英語の勉強を甘く見すぎている
- 日本では英語が不要
- 英語が「憧れの対象」
目次
「カタカナ語」と「カタカナ英語」とは
ちょっと言葉がややこしいので、最初に「カタカナ語」と「カタカナ英語」という言葉について定義をします。
「カタカナ語」とは
まずは「カタカナ語」という言葉について説明しましょう。
簡単に言うと、漢字圏以外の外国から入ってきて日本語になった言葉(外来語)のことです。
カタカナ語とは?
外国から入ってきて日本語に定着した言葉で、カタカナで表記される言葉のこと。
たとえばこういうものですね。
カタカナ語の例
- ペン(pen)
- アップル(apple)
- コンピューター(computer)
- バス(bus)
- ラブ(love)
- アルバイト(arbeit: ドイツ語)
- コップ(kop: オランダ語)
「カタカナ語」は英語だけでなく、元々がフランス語やポルトガル語のように、ほかの国の言葉であることもあります。
「カタカナ語」は、多くの場合「外来語」と同じ意味で使われますよ。
ちなみに「外来語」と言った場合、本来なら「漢語(中国から入った言葉)」も含まれるべきですが、通常は含まれません。
「カタカナ英語」とは
では、今度は「カタカナ英語」という言葉です。
ざっくり言うと、日本人の話す「日本語なまりの英語の発音」のことですね。
カタカナ英語とは?
日本人が英語を発音するときに日本語の発音に引きずられ、カタカナを読んでいるように発音する英語のこと
「カタカナ語」で書かれた表記をそのまんま読んでいるため、カタカナ英語の発音になってしまうわけです。
たとえばこういう発音です。
カタカナ英語の例
アイ・キャント・スピーク・イングリッシュ・ベリー・ウェル
(I can't speak English very well)
カタカナで表記される「カタカナ語」があるからこそ、カタカナ英語で発音されてしまうんですね。
「カタカナ語」が持つ問題
わたしは、この「カタカナ語」が、英語を勉強する上で最も問題だと思っています。
では、こちらにカタカナ語の持つ問題点をまとめました。
全く違う英単語が同じ表記になる
まずは、全く違う発音をする英単語が同じ表記になることです。
たとえば、TH の発音は日本語にはないため、日本語で表記することができません。
それでも無理やり日本語で表記せざるをえないので、「bath(お風呂)」なら [ θ ] に近い発音である [ s ] を使い「バス [ basu ] 」と表記します。
そうなるとこの2つの「まったく発音の違う単語」が同じ表記になってしまいます。
両方とも「バス」の発音に
- bath [ bǽθ ] = お風呂
- bus [ bʌ́s ] = バス
さらに上の例だと、英語では全く違う母音である [ ʌ ] と [ æ ] の区別もなくなっています。
もっと言うと、語尾に母音の [ u ] がくっついてしまっていますね。
もはや、別の言葉です。
有名な「LRの発音」の違いもこの問題ですね。
カタカナ語を「英語」だとカン違いする
「カタカナ語」を日本人が「英語」だと認識していること。
これが大問題です!!「アップル」とか「キング」みたいなカタカナ英語は日本語です!!
いやいやいや……「アップル」は英語でしょ??
……と言われそうですが、違うんです。
「アップル」は日本語です!
この「アップル」という言葉は、厳密にはこういう言葉です。
「アップル」とは?
「apple」という英語が日本に入ってきて定着した「外来語(カタカナ語)」という種類の日本語
つまり、定義としても「カタカナ語」は「日本語」なんです。
英語の「apple」との発音の差を聞き比べるともはや英語とは呼べないことがわかります。
つまり、アメリカ人が「アップル」という言葉を聞いても「ああ、『apple』がなまっているんだな」とすら認識されないレベル。
こちらの記事に「アップル」が日本語であることについてわかりやすく紹介していますので、ご参考に!
カタカナ表記が混乱させている
あと、「カタカナ」という便利すぎる文字が悪影響をおよぼしている面があります。
「カタカナ」って日本人にとって海外から来たものに使います。めちゃくちゃ雰囲気出ますよねぇ。
たとえば、こちらを読んでみてください。
アイ・ドント・ライク・イット
(I don't like it.: それ好きじゃない)
ほら! カタカナ表記しているとあたかもそれが外国語の発音になっていると勘違いしやすいんです。
平仮名と比べると、わたしの言っている意味がわかるかも。
表記から受ける印象の差
- あい・どんと・らいく・いっと
- アイ・ドント・ライク・イット
どっちが流暢そうに見えますか?
同じ音声を表記しているのに、カタカナの方が流暢に見えるッ!?!?
カタカナって巧妙な文字で、たとえば「 v 」を「ヴ」って書けますが、けっきょく日本語に [ v ] の発音はないので、読むときは「 ブ 」なんです。
カタカナは、ただ単に英語っぽい雰囲気を字面的に醸し出しているだけです!
音声は完全に日本語であることを覚えておいてください!
一つの言語として流通し日本人にしか伝わらない
そして、カタカナ語を発音して読まれる「カタカナ英語」の持つ最もひどくて問題の部分がこちらです。
カタカナ英語の最大の問題
「カタカナ英語」が完全に1つの言語として確立しきっていること!
つまり「英語」とは違った「カタカナ英語」という「新しい言語」が独立し、流通しているという意味です。
英語でも日本語でもない「新しい言語」ですね。人間でも妖怪でもない……みたいな。
ここまで聞くと「日本人らしい個性ある英語があるのでいいことやん!」って思われそうです。……が、そうでもないんです。
カタカナ英語は日本人同士にしか通じない
というのも、カタカナ英語の最も残念な特性があるんです。それがこちら。
カタカナ英語の残念な特性
日本人同士にしか通じない
日本語のなまりがあるだけで、英語圏の人にかろうじて伝わる……のなら問題ないんですよ。
でも日本人同士にしか伝わらないんです。
「カタカナ英語」は言い換えると、日本人同士でコミュニケーションを取るためにしか役に立たない言語。
それが「カタカナ英語」なんです!
いやー、それなら日本語で話した方が100倍効率がいいですよ……。
日本人同士だと逆にわかりやすい
そして、日本人同士だと逆わかりやすいのもやっかいな性質です。
たとえば、こちらをお聞きください。
英語とカタカナ英語で言っていますが、どちらがわかりやすいですか?(ちなみに「I used to like it, but I don't like it anymore」と言っています)
もし、英語が苦手な方なら、間違いなく後に言ったカタカナ英語の方が聞き取りやすかったはずですが、逆にアメリカ人には後のカタカナ英語の方は全然意味がわからないでしょうね。
ここでの大きな問題は、リンキングと呼ばれる現象です。カタカナ英語で読むときにはリンキングが起こらないんですよ。
ちなみに、日本語を勉強している英語圏の人にとって、最も難しいものの1つが「カタカナ語」なんです。
「リンキング」については、くわしくはこちらの記事をご覧くださいね。
日常生活ではカタカナ英語の方が重要
そして日本の絶望的な現状をお知らせします。
なんと、本当の英語よりも「カタカナ英語」の方が日常生活で重要なんです!
カタカナ英語が生活に密着しすぎている
恐ろしいことに「カタカナ語」はあまりにも日本語の中に自然に浸透しすぎています。
- アップル(apple)
- カード(card)
- ガール(girl)
- ウォーター(water)
- スマホ(smartphone)
- パソコン(personal computer)
日常生活で覚えていないと困る単語がいっぱい!
こういう外来語は、日本で生活していれば普通に覚えます。
……が、覚えたカタカナ式の読み方が英語を勉強するときに邪魔になるんですよ。
本当の発音の方が間違っているような錯覚
例えば「apple(アップル)」の発音。
カタカナ式で「アップル」という発音で覚えると、本来の「apple」の発音をしようとするときに抵抗があるんです。
でも何度「アップル」と言っても、英語圏の人には絶対に伝わらないほど音声がかけ離れています。
でも、カタカナ語の「アップル」に馴染みすぎていると、まるで「カタカナの発音」が本来の英語の発音だと錯覚するんです。
「apple」と発音するのが恥ずかしいような、おかしな感覚になってしまうんです(わたしはそうでした)。
たぶん、ずっと「アップル」って発音しないといけない!……という風にメディアや周りの大人に思い込まされて育ったのが弊害になっているのでしょうね。
本物っぽく発音すると馬鹿にされる
そして「カタカナ語」だけでなく、日本語発音になった英語である「カタカナ英語」に市民権がありすぎることでとんでもない問題があります。
それが、英語の授業でも「カタカナ英語」を話さないといけない……という風潮。
こんな経験ってありませんか? 英語っぽく発音すると「なにカッコつけてんの?」的に言われるような。
カタカナ英語に矯正させられる?
そういえば、英語の好きな友達から冗談のような話を聞きました。
その友達は、中学生のときから発音の練習をしていて、上手な発音ができていたそうなんですね。
ところがですよ……。
なんと!! 英語の授業中に、英語っぽい発音を先生にカタカナ英語に矯正させられたらしいんですね!
いや、ソレおかしいやろっ!!
……と全力でツッコまずにはいられませんが、そんな現実があるそうです。
そんな現状をユニークなコントにしている動画を発見です。
古い動画ですが、志村けんさん、面白いですよねー。
まさに日本の英語の授業です!(最近は先生はマシになっているかもしれませんが……)
日本人のほとんどは英語の発音ができないので、きれいな発音をひがむのか?
本物の英語の発音に対するアレルギーがあって、それをカッコ良く話す日本人が許せない……という妙なジェラシーが「出る杭を打つ状態」を作り出しているのかもしれません。
特に中学校、高校時代に。恐ろしいー!
英語の授業なのに「English」を話すな!
そういえばわたしもそういう経験があります。
中学校の英語の時間に「Hello」を思わず「ヘロー」って読んでしまったんです。
本来は「カタカナ英語」で「ハロー」と読まなければならないのに、英語っぽく「ヘロー」と。
するとクラス全員が大笑いですよ。
で「いや、ハローやん!」ってツッコミを入れてくる始末。
そうです。「『英語』の授業なのにオマエはなんで『English』を話してんの!?」って言われたようでした。
でもそういうことなんでしょうね。
「和製英語」を英語だと思いこむ
日本人は海外のものをうまく自文化に取り入れる天才とよく聞きますが、英語に関しても上手に取り入れています。
というか、上手に取り入れすぎて困っているんですよ(笑)。
和製英語の例
- ガソリンスタンド
- マイカー
- イメージアップ
- ドクターストップ
- サラリーマン
- ナイター
- デパート
- スマホ
- パソコン
ええ。頻繁に聞くような単語って和製英語なんですねー。
日本人が作った英語 =「和製英語」
たとえば「ガソリンスタンド」は英語では「gas station(ガスステーション)」で、全く異なる単語です。
「マイカー」に至っては「Do you have MY CAR?(私の車持っている?)」なんて質問すれば泥棒扱いしてしまいますよ。
さらに言うと、意味が大幅に変わる例もあります。
「マンション」だと英語では「大邸宅」みたいな意味になるので使うとびっくりされますよ(笑)。日本のマンションだと英語では「condo」って言います。
和製英語に関してはこちらをどうぞ。
和製英語ならぬ「和製の英語文法」
さらにすごい事実があります。
なんと! 和製英語は単語にとどまらず、文法すら作ってしまっています。
和製英文法の例
- レッツ・シンキング!(レッツ・ミッション!、レッツ・ウェディング!とか)
- ハウ・トゥー・アート
この「レッツ~」は最近、日本語ですごく見かけます。キャッチーなので使いやすいんでしょうね。
「レッツ(Let's)」のあとは、動詞の原形ですので「Let's think!」になります。
「ハウ・トゥー(How to)」も同じで、「to」の後ろは「動詞の原形」です。
こういう間違った文法が、中学で英語を学ぶときに邪魔するんでしょうね。
まとめ
さて、今回のカタカナ英語ですが、実はわたしが英語の勉強をするときに最も厄介な問題だと思っていることです。
ダントツの一番です。
これがあるから日本人の英語が上達しないと確信しているほど。
最低限でも英語の授業ではカタカナ英語ではなく、ちゃんと「English」を教えてほしいものです。
国際音声記号を勉強するのもオススメです!