日本語には「長音」という音声/表記があります。
長音の例として「アート」「スキー」の伸ばし棒がわかりやすいですよね。
本記事ではそんな長音がどういうものか、ルールや例をわかりやすく紹介しましょう。
目次
「ー(長音)」とは
「長音」とは、なんのことでしょうか?
まずはどういうものが長音なのかについて詳しく説明します。
「長音」とは?
「長音」は母音を長く伸ばして発音する音のことです。
理解しやすいように言うと、日本語の「伸ばし棒(長音符・長音記号)」で表記される発音のことです。
たとえば「おーい」「ボール」のような「ー」のことです。
日本語では「あーいーうーえーおーかーきーくーけーこー……んー」のように、どの音も伸ばすことができますよ。
日本語にある「長音」の例
では日本語にある「長音」の例を見てみましょう。
長音の例
このように、日本語にはたくさんの「長音を含む言葉」があります。
「長音」の発音の仕方
長音の発音の仕方は、母音を長く伸ばして言うだけです。
そのため、母音だけの「あ行」はもちろん、「か行」「さ行」もすべて伸ばせます。「あーかーさーたーなー」のように。
日本語は子音+母音がセットになっていますから。
なお「ん」は子音ですが、「んー」のように伸ばせますよ。
「長音」を音声学的には「長母音(長く発音する母音)」と呼びます。
ただし「促音(っ)」は伸ばせません。
長音の表記ルールについて
では、長音の表記ルールについて紹介しましょう。
長音の表記は長音符(長音記号)の「ー」だと紹介しましたが、実はそんなに単純ではありません。
たとえば「高校」は「こーこー」ではなく「こうこう」と表記しますが、れっきとした長音です。
そもそも「ちょうおん(長音)」という言葉自体が長音をふくんでいますよね。
では、長音を表記する例を紹介しましょう。
長音を表記する例
長音符を使う
まずは先述した「長音符」を使った表記です。
和製英語をふくむ「外来語」の多くは「マーカー」のように「ー」で表記します。
次の例をご覧ください。
「長音符」が使われる単語の例
考えればいくらでも出てくるはず!
ちなみに「ー」は、そのときの感情によっては「〜」を使ったり、「ーー」を使ったりできます。
「お〜い!」とか「コラーーー!」のような感じですね。
「あ・い・う・い・う」を重ねる
続いて、和語や漢語で長音を表記するときのルールを見てみましょう。
ルール | 例 | |
---|---|---|
「あ段」の場合 | 「あ」を重ねる |
|
「い段」の場合 | 「い」を重ねる |
|
「う段」の場合 | 「う」を重ねる |
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「え段」の場合 | 「い」を重ねる |
|
「お段」の場合 | 「う」を重ねる |
|
「あ段」「い段」「う段」は同じ段である「あ」「い」「う」を重ねるだけですが、「え段」と「お段」の場合は注意が必要ですね。
あ段〜お段まで「あ・い・う・い・う」というルールになっています!
「はぁ……」「ふぅ……」のように、「あ行」の仮名を小さくしてそえる場合もありますよ。
長音表記の例外
長音の表記には例外がすこしだけあるので、ご覧ください。
例外のルール | 例 | |
---|---|---|
「え段」の長音 | 「え」を重ねる |
|
「お段」の長音 | 「お」を重ねる |
|
上記のように、「え段」の長音を「え」で、「お段」の長音を「お」で書くものがあります。
ひねりだしても数はこれぐらいなので、すごくレアな例だと言えます。
長音の発音ルール
続いて、長音の発音ルールを見ていきましょう。
リズム的に1拍分
長音の発音ルールの1つ目は、1拍分の長さで発音することです(拍は1つの音の長さ)。
たとえば「ケーキ」という言葉は3拍です。
「ケーキ」と言いながら、1つの拍ごとに手をたたくと、3回手をたたくことになりますよね。
ポイントなのは「長音(ここでは『エ』の発音)」の箇所でも「ケ」や「キ」と同じだけの拍(音の長さ)があるということです。
次は「鍵」を表す日本語の「キー」と英語の「key」の拍を比較しています。
日本語の「キー」の場合、「長音」の部分も1拍分の長さがあり、全体で2拍になっていますよね。
それに対して英語の「key」は1拍です(厳密には英語は音節という単位を使う)。
このように、日本語の長音は「1拍」の長さをもつ特徴があります。
基本は「母音」だけ伸ばす
長音の発音ルール2つ目は、長音が基本的に「母音」だけを伸ばした音だということ。
たとえば「ケーキ」「おかあさん」「しょうゆ」のどれを見ても、母音を伸ばしていますよね。
ローマ字にしたほうがわかりやすいので、次の例をご覧ください。
長音は基本的に母音のうしろ
そもそも、ローマ字の上の「長音マーク」は母音の上にしかつきませんよね。
上の例はヘボン式ローマ字での例です。
語頭にはこない
長音の発音ルール3つ目は、長音が語頭にこないことです。
なぜなら、長音は「前の音声が伸びた音」だと認識されているため、前に音声がないと存在できないからです。
まぁ、あたりまえですよね。
本記事で紹介してきた例のどれを見ても、すべて2番目以降に長音がきているはずです。
子音にも長音がつくことがある
長音の発音ルール4つ目は、子音にも長音がつくこと。
【例1】撥音(ん)の場合
「基本は母音だけ伸ばす」と紹介しましたが、例外として子音の「ん」には長音がつきます。
たとえば「んー」や「んん?」のように伸ばせますよね?
日本語の「ん」にはおもしろい特徴があるので、「ん(撥音)について」もぜひご覧ください。
【例2】子音(摩擦音)を言うとき
ほかにも、子音(摩擦音)を言うときも長音化します。
たとえば、静かにしてほしいときに「シー(静かにして!)」と言いますよね?
じつはこの発音、子音だけを発音しています(厳密な音声記号では[ ɕ ]と書く)。
ひらがなの表記としては「シー」と書きますが、実際には子音である[ ɕ ]を伸ばしているので、子音を長音化していると言えるのです。
ほかにも、ため息の「はあ……」も子音の[ h ]を長音化しています。
英語には長音はある?
さて、日本語では頻繁に使われている長音ですが、英語にはあるのでしょうか?
英語には長音はない
英語には日本語のような長音はありません。
でも「eat(食べる)/ iːt /」や「use(使う)/juːz/ 」のようにアクセントがくる母音は長く発音されています。
[ ː ]は長く発音するという意味の発音記号ですよ!
ですが「これは長音である」とはとらえないのがふつうです。
厳密には母音が通常より長く発音されていますが、それは母音にアクセントがきたため、発音が長くなっているだけだと解釈されています。
英語の「長母音(long vowel)」という用語は、「 a 」を /æ/ ではなく /aɪ/ と発音する場合を指します。
英語では母音を伸ばすことが「意味の分別」につながらない
「英語には長音がない」と結論づけられている大きな理由の1つが、母音を伸ばしても意味の区別につながらないことです。
たとえば「feel(感じる)」と「fill(満たす)」の発音記号を見比べてください。
スペル | 発音記号 | カタカナ |
---|---|---|
feel | /fil/ | フィール |
fill | /fɪl/ | フィル |
「feel」と「fill」はカタカナでは、長音の違いのように書かれますが、違います。
この2つの発音は「母音の種類」が違うのです。
「feel」には日本語の「い」に近い母音[ i ]が、「fill」には「い」と「え」の発音の間ぐらいにある母音[ ɪ ]が使われています。
この母音の違いが重要で、母音が伸びているかどうかは重要ではありません。
ただ「feel」をふつうに発音すると、アクセントにくる母音 /i/ は長く発音されるため、結果として /fiːl/ のような発音になるのです。
母音を伸ばすと「感情」をのせられる
英語では母音を伸ばすかどうかを単語の区別に使っていませんが、「感情」の区別を表せます。
たとえば「Go!(行け!)」の「 o 」の発音を伸ばし、「Goooooo!(行け〜〜〜!)」と言ったらどんな感情がのると思いますか?
テンションが高まっていることが伝わりますよね。これは日本語も同じです。
サッカーなどの試合を見ているときに使いますよね。
ほかにも「No!(なんてこった!)」を「Noooooo!(なんてこった〜〜!)」と言ったほうがショック度合いが増します。
なお、英語の母音を伸ばしたときの表記は、伸ばす音声を重ねて書きますよ。
伸ばしたときの表記 | |
---|---|
goal(ゴール) | goaaaaaal |
ah(あー) | ahhh |
hot(暑い) | hooot |
特にルールはないので、「ゴール」なら「Gooooal」でも「Goaaaal」でもOKです。