今回は発音記号である[ l ]の発音(歯茎側面接近音)についてです。
この「L(エル)の発音」には、わたし自身が20歳でアメリカに行ったときに苦労した経験があります。
その後、完全にマスターして、どうやったらうまく発音できるかを独自に考えて記事にしました。
この記事では[ l ]の発音の仕方、[ l ]の発音のコツなどをくわしく解説します。
目次
[ l ]はどんな音声?
まずは、発音記号の[ l ]の音声を聞いてみましょう。
次のような発音になります。
おそらく、こちらのような反応をする人が多いのではないでしょうか?
いや、これは「エル」の発音じゃないだろ! 唸ってるだけだろっ!?
でも、これは本物の[ l ]発音です。詳しくは後述しています。
[ l ]の発音の仕方
では、[ l ]を発音するときの口の中の「構え」はどうなっているのでしょうか?
[ l ]は、こちらの図のような構えで発音されます。
[ l ]の発音をする手順をまとめると次のとおりです。
[ l ]の発音をする手順
- 舌先を、上前歯の歯茎にくっつける
- 舌先は歯茎から離さず、のどの奥から「ウ〜」という唸り声を出す
- 舌先を離す
「エルの発音ができない!」という人が多い理由は、日本語には存在しない発音だからです。
日本語の「ら行」に置き換えて発音してしまうのですが、それではまったく通じないんですよね(←体験談)。
[ l ]は、専門的には「歯茎側面接近音」という発音です。
さらに詳しく紹介します。
【のどの震え】[ l ]の発音は「有声音」
[ l ]の発音は有声音です。
そのため、のどの震えがあります。
声帯振動(のどの震え)についてはこちらをどうぞ。
【発音される場所】[ l ]の発音は「歯茎」で作られる
[ l ]の発音をするときは舌の「先」を使います。
舌の先を上前歯の根本あたりである「歯茎」と呼ばれる部分にくっつけます。
「歯茎」を使って発音するため、歯茎音と呼びます。
口の中の名称についてはこちらをどうぞ。
【発音する方法】[ l ]の発音は「側面接近音」
[ l ]の発音は「側面接近音」と呼ばれる音です。
上の図のように、舌先と歯茎で口の真ん中の通路をふさぎ、舌の側面から唸り声を出すイメージです。
口の内側と舌の両サイド(側面)を接近させ、その間から声を出すので、側面接近音と呼びます。
声の流れは次の「矢印」のようなイメージになりますよ。
こんな音が出せましたか?
【ポイント】[ l ]を発音するときのコツ
では、[ l ]を発音するときのコツを紹介します。
まずは[ n ]の発音からはじめる
日本語にない発音である[ l ]を突然やろうとしても難しいので、まずは[ n ]の発音からはじめましょう。
いや、[ l ]の発音をしたいのに、なんで[ n ]なの?
こんなふうに思ったかもしれませんが、実は[ l ]と[ n ]の発音は口のなかの構えがほぼ同じなのです。
唯一の違いが息の出し方です。次のような違いがあります。
- [ n ]の発音
- 舌先を歯茎にくっつけたまま、声を鼻から出す
- [ l ]の発音
- 舌先を歯茎にくっつけたまま、声を口から出す
2つの発音をしているときの口のなかの図を比較してみてください。
口のなかの構えはまったく同じで、声を鼻から出すか、口から出すかの違いだけです。
[ n ]の発音から[ l ]の発音に移行する
では、[ n ]の発音をするために「ンー」という声を鼻から出してください。
この際に注意したいのは、日本語の「ん」の発音にならないこと。
舌先を必ず歯茎(上の前歯の根本あたり)にくっつけたまま「ンー」と言ってください。
そして、「ンー」と言っている途中から、口から声を出すように「切り替え」てみましょう。
舌先を歯茎にくっつけたまま、「ンー」から「ウー」に声が変わるイメージで。
次の音声はわたしがやってみた例です。
[ n ]の発音が、途中から[ l ]の発音になっていることに気づきました?
舌先を歯茎から離した瞬間「ラッ」のような発音になる
先述しましたが、本当の[ l ]の発音は次のような「ウー」のような音です。
でも、ほとんどの人が聞いたことのある[ l ]の音は、次のような音ではないでしょうか?
そうそう、これがエルの発音だよね!
実は、先ほどの唸り声のような[ l ]の発音とまったく同じ発音です。
なにが違うのかと言うと、
「歯茎」に押し付けていた舌を離しただけ!
よく聞く「ラ」のような音は、舌を離した勢いで作られていたのです。
舌先を「歯茎」にくっつけたまま側面から声を逃がすイメージ
[ l ]を発音するポイントは、舌先を「歯茎」にしっかりとくっつけることです。
重要なのでもう一度言います。
舌先を歯茎に
くっつけたまま声を出しましょう。
舌先をくっつけたまま、舌の「両サイド」から声を「流す(逃がす)」イメージです。
舌先をくっつけるというより、「強く押し付ける」というぐらいでやってもOKです。
上の図のように、舌を使って「声がまっすぐ出る」のをふさぎ、舌の両サイドから声を流すように出します。
舌の位置はもう少し適当でもOK
[ l ]の発音は、上の前歯の歯茎(根本あたり)に舌先を押し当てるというふうに説明しましたが、その位置はもっと適当でかまいません。
実は、次の図のように上前歯の後ろに舌を押し当てていてもオッケーです。
次の画像はもはや「TH」の発音みたいに、舌を歯と歯のスキマから押し出していますが、これでもほぼ同じ発音になります。
発音する場所が変わっても、発音の仕方は先ほど説明したやり方と同じですよ。
どの位置に舌が来るのかは、[ l ]の前後の発音によって変わります。
【確認】[ l ]の発音の注意点
[ l ]の発音をするときの注意点を紹介します。
発音するときに口を丸めない
[ l ]の発音をするときに、口を丸めないようにしましょう。
上下の歯はくっつけないように、つまり口を閉じず、開いたまま発音しますよ。
日本語の「ら」よりも舌先を長くくっつける
[ l ]の発音をするときに、どうしても日本語の「ら行」の発音になる人がいます。
そんなときに意識してほしいのが、発音の長さです。
[ l ]は、舌で声の通路をふさぎ、舌の両サイドから声を流す音であるため、日本語の「ら」よりも音がじゃっかん長くなります。
次の音声では日本語の「らりるれろ」と[ l ]の発音を使った「la・li・lu・le・lo」を発音しています。
「ら行」「 L 」の発音の順番で2回どおり言っています。
日本語の「ら行」よりも[ l ]の音声のほうが「タメ」があるような印象ではないでしょうか?
なぜ日本語の「ら行」のほうが時間的に短く聞こえるのかというと、「ら行」子音である[ ɾ ]の特徴にあります。
この図のように、「ら行」の子音[ ɾ ]は、一瞬だけチョンっと舌を上あごに「はじく」ような音声なのです。
「ら行」の子音[ ɾ ]は専門的には「歯茎はじき音」と呼びます。
「声を出す」のではなく「吐き出す」イメージ
[ l ]の発音で声を出すときですが、「アー」のような声ではないです。
のどの奥から「声を吐き出す」ぐらいのイメージで「ウー」と言ってみましょう。
舌は、歯茎に強く押しつけたまま。
「アー」ではなく、「ウー」と言いながら口を丸くしないようにすると、上手く発音できますよ。
日本語で[ l ]が使われる例
[ l ] の発音は日本語では使われません。
英語の[ l ]を発音するときに日本語の「ら行」に置き換えても、通じることはありえないほど異質な音声だと覚えておきましょう。
ら行 | la行(日本語にはない) |
---|---|
ら[ ɾa ] | *[ la ] |
り[ ɾi ] | *[ li ] |
る[ ɾɯ ] | *[ lɯ ] |
れ[ ɾe ] | *[ le ] |
ろ[ ɾo ] | *[ lo ] |
日本人でも人によっては、「ん」の後に続く「ら」を[ l ]で発音する人もいます。たとえば「観覧車」の「ら」が[ la ]になるみたいに。
「う段」を[ u ]ではなく、[ ɯ ]と書いているのは、こちらのほうが日本語の「う」の発音に近いからです(参考: 日本語にある2種類の「う」について)。
ちなみに、[ l ]に「あ・い・う・え・お」をつけた「la行」を音声にしてみたのでご参考に。
日本語の「ら行」についての記事もご参考に。
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まとめ
今回は日本語にはない発音である[ l ]について紹介しました。
最後に[ l ]の発音の仕方をおさらいしましょう。
「L」の発音まとめ
- [ n ]の発音をするときの舌の位置
上前歯の根本あたりに舌先をくっつける - その舌の位置で口を丸めたりせず、舌を強く押し付ける
- 喉の奥から「うめき声」を出すように声を出す(舌の両側から声を流すイメージで)
日本語にはありませんがほとんどの言語にある発音で、慣れるとかんたんです。
あと、「子音だけ発音する」ということにも注意してくださいね。