日本語と英語が言語的に違いすぎる! だから習得が難しい

ヨス

執筆者

アメリカ留学で言語に興味を持ち、日本語教師の資格をとる。メディアなど掲載多数。著書は2冊。一般的には学ばない「日本語の音声」を学ぶことで英語の発音を習得し、独自の英語の発音習得メソッドを持つ。→ ヨスについてはこちら

英語の勉強は日本人にとって果てしない道です。いたるところに英会話教材や英会話コンテンツが満ちていますが、本当に思うんですよ。

なんでこんなに英語習得は難しいのか!!

ということで、今回は日本語と英語の言語的な差について紹介します。

英語と日本語は言語的に違いすぎる

日本人にとって英語を修得するのが難しいのには大きな理由があります。

それは「言語的な差」です。ええ。日本語と英語って違いすぎるんです。

日本語と英語との距離がとてつもないことを証明するために、おもしろい例を紹介しましょう。

「アメリカ合衆国国務省(United States Department of State)」の公式サイトに次のように書かれています(太字はわたしによる)。

Super-hard languages” – Languages which are exceptionally difficult for native English speakers.

Arabic
Chinese – Cantonese
Chinese – Mandarin
Japanese
Korean

Foreign Language Training - United States Department of State

これは、英語話者にとってほかの言語がどのくらい難しいのかをまとめている記事からの引用です。

そこにアラビア語、中国語、日本語、韓国語は、英語話者にとって「Super-hard languages(超激ムズ言語」と書かれています。

英語話者にとって日本語が激ムズということは、日本語話者にとって英語は激ムズだと言えます。

なぜなら、言語の特性が違いすぎるからです。

日本語と英語の違うところまとめ

日本語と英語の違いをきちんと認識することは、英語を修得するときに役に立ちます。

ということで、日本語と英語の特性の違いについてざっくりとまとめます。

英語と日本語は文法が違いすぎる

まず、日本語と英語の文法が違いすぎるということ。

いっぱいあるので少しだけ紹介しますね。

語順が違う

日本語と英語の語順が違います。日本語は「SOV」だけど英語は「SVO」なんですよ。

わたしが高校のときはしょっぱなにコレを習って英語嫌いになりました。ありがとうございます。

文法の専門用語でこういうやつです。

日本語 =「SOV型」

日本語はご存じのとおり、「SOV型」の言語です。

「ヨスが リンゴを 食べた」のように、動詞の「食べた」が最後に来ます

この「SOV型」ですが、ほかにはドイツ語、オランダ語、アイヌ語、韓国などなど、言語の約45%を占めるポピュラーな型です。

英語 =「SVO型」

英語の「SVO」というのはこういうことです。

「Yos ate apples.(ヨスがリンゴを食べた)」のように英語は日本語とは違って、主語の次に動詞が来るんですね。

ついで言うと、日本語のようなSOV型、英語のようなSVO型のほかにもあります。

アラビア語を代表する「VSO型」、マダガスカル語などの「VOS型」、そして「OVS型」や、「OSV型」というのもあります。

日本語の文法は数ある文法の中の1つにすぎないってことがよくわかります。

ちなみに、英語の5つの文型についてはこちらの記事をどうぞ。

否定疑問文の返事

否定疑問文への返答も違いますね。

否定疑問文というのはこういう質問です。

A: 疲れてない?
B: うん。大丈夫!

「ない?」というふうに聞くのですが、返事が仕方が日本語と英語では違うんですよ。

Aren't you tired?
(疲れてない?)

No, I'm OK.
(いや、大丈夫!)

ほら! こういうのこんがらがりますねー。

英語は主語を省略できない

英語を勉強していてまずぶち当たるのが「主語を省略しない」という特性です。

日本語だと「難しいです」っていうところでも、英語だと……

It's difficult.(難しいです)

ええ。この形式主語という存在をはじめて知ったとき、わたしは叫びたくなりました。

「It(それ)」って何?! なにソレ?!

こういう自分の母国語とあまりにもかけ離れている特性って、文法で習って頭で納得していても、いざ使おうとすると抵抗があるんですよ。

あまりにも日本語と違いすぎますよね?

いちいち「It」をつけたりすると、なんか間違っているんじゃないかって思ってしまい、使うのが何か恥ずかしくなりませんか?

あ、もちろん英語でも主語を省略することはあります。

「Hot!(暑っ!)」とか。特にSNSでの投稿では入力するのが面倒なので主語を省略することが多いです。

どの国でも同じですね。

英語と日本語は表記が違いすぎる

そして当たり前ですが、日本語と英語は表記が違いすぎます。

表記の違い

  • 日本語 …… 漢字・ひらがな・カタカナ(+アルファベット)
  • 英語 …… アルファベット

そもそも漢字は文字自体が意味を持つので、漢字を見れば意味が分かります。

例えばこちらの言葉を見てください。

むえいとう

意味がわかりますか? ピンときませんよね(笑)。

でも「無影灯」って漢字に直すと、見たことがなくても意味がわかるのではないでしょうか?

漢字の瞬間認識率は、言語の中でも最強だと思います。

文字なんですが、絵に近いですよね。

逆に英語はアルファベットを並べて単語を形成します。

「 A 」というアルファベット自体には音を表すということしかなく、「意味」は全くありませんね。

表記が違うので、アルファベット一面の文章があると「うっ……」となるんです。

たぶん漢字という共通文字を使う中国語(中国の漢字の方が簡略化されていますが)の方が拒絶反応は薄いと思いますよ。

英語と日本語は発音が違いすぎる

そして、日本語と英語が語られるときに忘れてはならない「発音」の違いです。

これが、上で見た「表記」にも負けないほどの違いがあるんです。

日本語は母音の数が少ない

まず、日本語と英語では母音の数にすさまじいほどの差があります。日本語の方がかなり少ないんです。

これが英語ネイティブの人に「日本人の発音がわからない!」と言われるゆえんですね。

母音の数だけでも英語は日本語の3倍以上もあるんですね。

母音の数

  • 日本語の母音の数 …… 約5個
  • 英語の母音の数 …… 約16個(イギリス英語は約20個)

母音だけでこんなに違うんです。ちなみに「約」って書いているのは、数え方によって数は変わるから。

ここまで音声の数が少ないということは「普通の日本語話者では発音できない音」がたくさんあるということなります。

日本語は子音の音声も少ない

お次は子音の数ですが、これも日本語の方が少ないです。

カタカナ英語を思い浮かべるとわかりやすいですかね。

ライト

この「ライト」という言葉ですが、2つの英語を表現できますよね?

  • right
  • light

この2つは英語では、聞き間違えないほどの違いがある「 L 」と「 R 」の発音です。

でもわたし達日本人には同じにしか聞こえません。

日本語には「ら」っぽく聞こえる音は1つなのに英語だと「 la 」と「 ra 」の2つに分けられるということ。

カタカナで書くときには、どちらも「ライト」になってしまうんですねー。厄介です。

  • バス …… 「bus」なのか「bath」なのか?
  • ファースト …… 「fast」なのか「first」なのか?
  • シー …… 「she」なのか「sea」なのか?

などなど、いろいろありますねー。

日本語は「開音節」・英語は「閉音節」

マニアックになりますが、開音節・閉音節という違いもあります。

開音節・閉音節

  • 日本語 …… 開音節(母音で終わる)
  • 英語 …… 閉音節(子音で終わる)

この違いのせいで、「school [skúːl]」の発音が「スクール [sukuːru]」のように英語にはない母音をはさむ状況を作ります。

ちょっと説明がややこしいので興味のある方はこちらを!

英語は「抑揚」・日本語は「ピッチ」

そして、もう一つ音声的な側面です。

日本語「音の高低」

日本語で、音が同じ単語のときって、どうやって違いを出しますか?

それは音の高さ(ピッチ)です。「橋」と「箸」や、「雨」と「飴」の違いですね。

英語「音の強弱」

それに対して、英語は音の強さ(アクセント=ストレス)を使うことで意味に差が現れます。

「suspect」を例に出すと、こんな2つの違いがあります(わたしが言っている音声ですが)。

最初に言った「suspect」は後ろにストレスがあるので「動詞」ですね。2回目の「suspect」は前の方にストレスがあるので「名詞」です(音声ではこれを2回繰り返してます)。

このように日本語と英語では「音の強弱(=英語)」「音の高低(=日本語)」という大きな違いがあるということです。

文化が違いすぎることによる影響

最後は「文化的な差」と言ったほうがいいんですが、文化があまりにも違いすぎるために起こる言語の差です。

文化と言語は濃密な繋がりがあって、切っても切れない関係なので、ここで紹介します。

感謝の意味を表す「すみません」

たとえば、日本語では本来「ありがとう」というところを「すみません」と言うことが多いです。

ハンカチを拾ってくれた人に「わぁ! すみません」みたいに言いますが、多くの国では「ありがとう」を使います。

相手の呼び方の文化差

ほかにも友達のお父さんを呼び捨てで呼ぶとか、日本ではほぼありえません。

日本だと、1つ年上のきょうだいでも「お兄ちゃん」のように呼びますから。

目の前の人に向かって日本語で「あなた(二人称)」という言葉を使うことが失礼な場合が多いのも特殊な性質ですよね。

二人称としても三人称としても、代名詞や名前で呼ぶより、その人のポジション(課長、部長、先生など)で呼ぶことが多いです。

英語の授業で「彼女は大きなバッグを持っていた」のように訳すときの「彼女」が妙に引っかかってた記憶がありますよね(笑)。

断定を避ける表現

ほかにも、日本語で話すときって何事も曖昧にしておきたいですよね。

「何が好き?」って聞かれて「ピザとか好きです」って答えるように。なので「and so on」を使いまくってたなぁ(笑)。

まとめてみると、どれも「断定を避ける」という性質が根底にありますね。

その根源にあるのは相手を敬うということかとは思いますが、ここまで選択する言葉が違うのは言語習得の上で苦労するのも仕方ないです。

まとめ

さて、今回は言語的に日本語と英語がこんなに違うんだよ!という一例を紹介しました。

細かく見ていくと1冊の本が書けそうなレベルです。

こういう差を知っていると英語を話すときにきっと役に立つと思っていますので、このブログを通していろいろ新しいことを知っていただけるとうれしいです!。

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アメリカ留学で言語に興味を持ち日本語教師に。その後、自分が「音声学」に猛烈に惹かれることに気づく。一般的には学ばない「日本語の音声」を学ぶことで英語の発音を習得し、独自の英語の発音習得メソッドを持つ。>>ヨスについて詳しくはこちら
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