英語の単語には語末に「 s 」を付ける変化があります。「名詞の複数形」と「三単現の動詞」ですね。
たとえば、「book」が「books」になるような変化のことです。
今回は、単語に「 s 」が付いたときの音声変化、ルールについてまとめます。
複数形・三単現の「 s 」の発音について
名詞が複数形になったときや、動詞が三単現のときは「 s 」が付くというルールがあります。
そして、どんな単語のうしろに「 s 」が付くかによって、次のように発音が変わります。
「 s 」の発音の種類
なぜ発音が変化するの?
「そのときによって発音が変わる」と聞くと、こういう反応をしたくなるでしょう。
ええー! なんでそんなややこしいことをするの?!
でも、
実はややこしくないのです。
なぜ「 s 」の発音がそのときによって違うのかというと、そうすることで発音しやすくなるから。
たとえば我々も日本語の「ん」の発音をするときに6種類の発音を無意識に使い分けていることを知っていますか?
無意識に2種類の「ざじずぜぞ」の発音を使いこなしていることなんて知りませんよね?
わたしたち日本人が日本語を使うときも、無意識に「発音の変化」をさせているんですね!
つまり「 s 」の発音の変化も、慣れてしまえばなにも考えなくてもできるようになります。
複数形も三単現も「 s 」の発音ルールは同じ
先述しましたが、単語に「 s 」が付くのは「複数形になったときの名詞」と「三単現のときの動詞」です。
この2つの場合の「 s 」ですが、発音ルールはまったく同じになります。
「 s 」がくっつくのが名詞か動詞かは関係なく、単に発音しやすくするためのルールなので。
これは安心した!
複数形・三単現の「 s 」の発音の変化パターン
では「 s 」の発音は、どんな条件でどう変化するのでしょうか?
はじめに紹介しておくと、次の表のように変化します。
有声音の後に来る「 s 」 | [ z ] の発音になる |
---|---|
無声音の後に来る「 s 」 | [ s ] の発音になる |
[ t ] の後に来る「 s 」 | [ t͡s ] の発音になる |
[ d ] の後に来る「 s 」 | [ d͡z ] の発音になる |
「シュッ!」という発音の後に来る「 s 」 | [ ɪz ] の発音になる |
では、具体的に紹介していきましょう。
[ z ] の発音になる場合
語末に「 s 」がくっついたときの「 s 」の発音は、基本的には [ z ] の発音になります。
語末にくっついた「 s 」は基本的に [ z ] の発音
[ z ] は、次の音声データのような「ズ」の発音ですね。
たとえば、「tree(木)」の複数形「trees」なら、「tríːz」で、カタカナだと「トゥリーズ」のような発音になるのです。
語末に付く「 s 」の発音は濁るのが基本
【例】tree(木)→trees [ tríːz ]
「trees」を発音した音声データはこちらになります。
【厳密なルール】「有声音」が語末だと [ z ] の発音
語末に「 s 」がつくと基本的には [ z ] の発音になると大ざっぱに紹介しましたが、「厳密なルール」としても紹介しましょう。
語末の発音が「有声音(のどの震えがある発音)」の単語のとき、くっついた「 s 」の発音が [ z ] になります。
語末が「有声音」になる場合が多いから「基本」として紹介しています。
では、具体的にどんな語末なのかを見てみましょう。
母音 | plays(遊ぶ), trees(木) ※ playの「ay [ eɪ ]」は二重母音 |
---|---|
[ l ] の発音 | travels(旅する), manuals(マニュアル) |
[ r ] の発音 | orders(注文する), tigers (トラ) |
[ m ] の発音 | seems(~のように見える), dreams (夢) |
[ n ] の発音 | begins(始める), phones(電話) |
[ ŋ ] の発音 | sings(歌う), songs(歌) |
[ b ] の発音 | robs(奪う), jobs(仕事) |
[ g ] の発音 | digs(掘る), dogs(犬) |
[ v ] の発音 | arrives(到着する), lives(生活: life の複数形) |
[ ð ] の発音 | breathes(呼吸する) |
ちなみに、語末に来る「 L 」は「ダークL」という特殊な発音になります。
重要なのはあくまで「文字」ではなく「音」だと言うことです。
[ s ] の発音になる場合
2つ目に紹介する「 s 」の発音は濁らない「 s 」です。
次の音声のように「 [ s ] の発音」になるということですね。
先ほどの [ z ] の発音を濁らせないのが [ s ] の発音になります。
日本語の「さ(sa)行」と「ざ(za)行」に対応していますよ!
語末が「無声音」なら「 s 」の発音が濁らない
たとえば「park(公園)」をご覧ください。
語末の発音が「 k 」で、「無声音(のどの震えがない発音)」になります。
「無声音」+ [ s ] の例
park(公園)→ parks [ 発音: pɑ́ːrks ]
つまり、「 k 」のような無声音の子音のあとに「 s 」がくっつくと、その「 s 」の発音は濁らないというルールがあるのです。
語末が「濁らない」発音の子音の場合
→付け加える「s」の発音も濁らない
「parks」を発音した音声データはこちらになります。
無声音のあとは無声音 [ s ] のほうが発音しやすい
なぜ無声音の発音のあとの「 s 」が濁らないのかというと、そのほうが発音しやすいからです。
カタカナ英語でも「パークズ」と発音するよりも「パークス」のほうがラクに発音できませんか?
「無声音」のあとは「有声音」を発音しにくいため、[ s ] の発音もそれに合わせて「無声音」になるということです。
「 s 」の発音が無声音 [ s ] になる例を見てみましょう。
[ p ] の発音 | stops(止まる), cups(カップ) |
---|---|
[ k ] の発音 | works(働く), parks(公園) |
[ f ] の発音 | surfs(サーフィンをする), graphs(グラフ) |
[ θ ] の発音 | bad-mouths(悪口を言う), months(月) |
ちなみに、「 th [ θ ] 」のあとに「 s 」がくっつく例として「months」の発音についてはこちらもご参考に。
[ t͡s ] の発音になる場合
先ほど、語末が「無声音」の発音の場合は、「 s 」の発音も無声音の [ s ] になるというお話をしました。
ところが「例外」があるのです。
[ t ] + [ s ] = [ t͡s ]
例外というのは [ t ] の発音のあとの [ s ] です。
もちろん、 [ t ] は無声音なので、うしろにくっつく「 s 」の発音も無声音で [ s ] の発音になります。
ところが、ただ単に [ t ] [ s ] のように続けて発音するわけではありません。
[ t(破裂音)] と [ s(摩擦音)] の発音が合体(リンキング)して [ t͡s(破擦音)] の発音になります。
こちらの例を見てください。
[ t ] + [ s ] = [ t͡s ]
cat(ネコ)→ cats [ 発音: cǽt͡s ]
「cats」を発音した音声データはこちらになります。
[ t ] と [ s ] が合体する
文字の変化を見ただけだと「cat」に「 s 」が付いただけですが、発音は大きく変わるのです。
この [ t͡s ] は日本語の「つ [ t͡sɯ ] 」の子音で、「キャッツ」のような発音になります。
[ t͡s ] の発音はこちらになりますよ。
これは破擦音という種類の音で、[ t(破裂音)] と [ s(摩擦音)] を同時に発音する音です(参考: 破擦音とは?)。
ほかにも次のような単語が、この音声変化に該当しますよ。
そのほかの単語例
- cuts(切る)
- wants(欲する)
- invites(招く)
- cats(ねこ)
- rats(ネズミ)
[ d͡z ] の発音になる場合
もうひとつの例外が、 [ t͡s ] の発音が濁音になった [ d͡z ] です。
語末が「 d 」で終わる単語(例: card, god)に「 s 」が付くと、[ d(破裂音)] と [ z(摩擦音)] が合体した [ d͡z(破擦音)] になります。
「cards」を発音してみました。
このように、カタカナ英語で言うと、「cards」なら「カーズ」という感じの発音になりますよ。
これも先述した「 t 」のうしろにつく「 s 」と同じ理由ですね。
[ d ] + [ z ] = [ d͡z ]
card(カード)→ cards [ 発音: kɑ́ːrd͡z ]
[ d͡z ] だけを発音すると次のような発音になります。
ほかにもこちらのような単語がこの音声変化に該当します。
そのほかの単語例
- kids(子ども)
- gods(神)
- decides(決める)
- beds(ベッド)
日本でもよく見かける「キッズ(kids)」もこの音声変化だったんですね!
実はですが、日本人は [ z ] と [ d͡z ] の区別をせずに使っています。
こちらの記事を見ると「へぇー!」と思うかも。
[ ɪz ] の発音になる場合
最後に紹介するのは [ ɪz ] と発音するパターンです(カタカナ発音で「イズ」)。
こちらのような発音になります。
たとえば名詞「bus(バス)」に複数形の「 s 」が付いた「buses」なら、[ bʌ́sɪz(バスィズ)] と発音します。
発音が[ ɪz ] になる例
bus(バス)→ buses [ 発音: bʌ́sɪz ]
「buses」を音声データにしてみました。
なぜ [ ɪz ] の発音になる?
なぜ、「母音」である [ i ] を挟み込み、 [ ɪz ] と発音するのでしょうか?
それは [ s ] の発音が重なり、発音しにくいからです。
もし「buses」を [ bʌ́ss(バスス)] と発音すると、非常に発音しにくいですよね。
複数形の「 s 」がついているのかもわかりづらいですし!
該当するのは「シュッ!」という音が出る発音
この音声変化を起こす発音は [ s ] [ z ] [ ʃ ] [ ʒ ] [ t͡ʃ ] [ d͡ʒ ] になります。
いや、覚えられないだろ!
大丈夫です。簡単に言うと、「シュッ!」という音が出る発音が語末に来る場合、「 s 」がくっつくと [ ɪz ] の発音になります。
ほかの例をご覧ください。
[ s ] | passes(渡す), boxes(箱) ※「 x 」は [ ks ] と発音し、発音としては [ s ] で終わる |
---|---|
[ z ] | buzzes(ブンブン飛ぶ), quizzes(クイズ) |
[ ʃ ] | finishes(終える), dishes(お皿) |
[ ʒ ] | mirages(蜃気楼) |
[ tʃ ] | catches(捕まえる), watches(腕時計) |
[ dʒ ] | changes(変える), judges(裁判官) |
「歯」を閉じて発音する「摩擦音」
これらの [ s ] [ z ] [ ʃ ] [ ʒ ] [ t͡ʃ ] [ d͡ʒ ] の発音の共通点は、歯を閉じて発音する摩擦音ということです。
たとえば [ s ] の発音をするところを前から見ると、こちらのように歯を閉じているはず。
発音するときに、「舌」と「上あご」との間で摩擦音を出し、さらに閉じた歯の間で摩擦音を出している音ですね。
無声音 | 有声音 |
---|---|
[ s ] | [ z ] |
[ ʃ ] | [ ʒ ] |
[ t͡ʃ ] | [ d͡ʒ ] |
例外として、「house [ háʊs ] 」の複数形の「houses」の発音は [ háʊzɪz: ハウズィズ] 」になります。
これはレアなケースです!
まとめ
さて、今回は英語の単語の語末に「 s 」がついたときの発音パターンを紹介しました。
ただし、発音を間違ったからと言って「伝わらない!」ということはあまりないはず。
法則を法則として覚えるよりは、慣れるものなのでルールとして知っておくぐらいで大丈夫だと思います。
発音が変わる法則は、結局のところ、「発音しやすさ」が根源にあります。おそらく「気がつけばできるようになっていた」になると思いますよ。